IgA腎症/慢性糸球体腎炎
- 内科(一般/非感染症外来)
- 腎臓内科
診療内容 腎臓内科
健康診断の超音波検査で「腎臓に水ぶくれのようなものがある」と言われた、あるいはご家族に人工透析を受けている方がいて、自分も同じ病気ではないかと不安に感じている—。多発性嚢胞腎(たはつせいのうほうじん)は、そうした形で気づかれることが多い病気です。自覚症状がないまま何年もかけてゆっくり進行するため、指摘されてもどう受け止めればよいか分からない方も少なくありません。この記事では、多発性嚢胞腎の原因や症状、診断・治療の流れ、そして家族への影響について、現時点で分かっていることを整理してお伝えします。
多発性嚢胞腎は、腎臓の中に「嚢胞(のうほう)」と呼ばれる水分を含んだ袋状の構造が左右の腎臓に多数でき、年月をかけて腎臓が徐々に大きくなりながら機能が低下していく遺伝性の病気です。嚢胞は片方の腎臓に数個程度であれば健康な方にも見られますが、多発性嚢胞腎では両方の腎臓に無数の嚢胞が広がっていく点が特徴です。大きく分けて、成人になってから見つかることが多い「常染色体優性多発性嚢胞腎(ADPKD)」と、乳幼児期に発症するまれな重症型「常染色体劣性多発性嚢胞腎(ARPKD)」の2つのタイプがあり、患者さんの大多数はADPKDです。国の指定難病(指定難病67)にも登録されており、一定の重症度を満たす場合は医療費助成の対象になります(詳細は難病情報センター https://www.nanbyou.or.jp/entry/295 をご参照ください)。
ADPKDは、PKD1またはPKD2という遺伝子の変化(変異)が原因で起こります。患者さんの約85%はPKD1、約15%はPKD2の変異によるとされ、一般にPKD1変異のほうが腎機能の低下が早く進む傾向があります。遺伝形式は常染色体優性遺伝で、親のどちらかがADPKDである場合、お子さんに同じ遺伝子変異が受け継がれる確率は男女を問わず1/2(50%)です。ただし、約1割の方は家族に患者がいない「突然変異」によって発症するとされており、家族歴がないからといって完全に否定できるわけではありません。発症時期や進行の速さには個人差が大きく、一律の経過をたどるわけではありません。血縁者に同じ病気の方がいる場合、ご自身の発症や将来のお子さんへの影響について不安を感じるのは自然なことです。ご不安な点や気になることがありましたら、診察時にご相談ください。
ADPKDは初期にはほとんど自覚症状がなく、健康診断や人間ドックの腹部超音波検査で偶然発見されるケースが多い病気です。嚢胞が大きくなるにつれて、次のような症状が現れてきます。
進行すると腎機能が徐々に低下し、将来的に透析療法が必要になることもあります。また、ADPKDでは脳動脈瘤(のうどうみゃくりゅう)を合併する頻度が一般の方より高いことが知られており、全体では約1割、脳動脈瘤やくも膜下出血の家族歴がある方ではさらに高い頻度(約2割強)で見つかるという報告があります。破裂すると命に関わることがあるため、家族歴のある方は医師と相談のうえで脳の画像検査を検討することがあります。
ADPKDの診断は、腹部超音波検査で両側の腎臓に多数の嚢胞があるかを確認することが基本になります。家族歴がある場合、年齢によって診断の目安となる嚢胞の数が定められており、15〜39歳では左右合わせて3個以上、40〜59歳では左右それぞれ2個以上の嚢胞が確認されると診断的価値が高いとされています。より詳しく評価する際は、CTやMRIで腎臓の大きさや嚢胞の数を測定し、進行度の指標として腎臓の容積(総腎容積)を算出することもあります。加えて、ご家族に同じ病気の方がいるかどうかを確認する問診(家族歴の聴取)も診断のうえで重要な情報になります。近年は血液検査でPKD1・PKD2などの遺伝子変異を調べる遺伝学的検査も可能になっていますが、実施にあたっては事前の説明・カウンセリングを含めた慎重な対応が必要とされています。
現時点でADPKDを根本的に治す治療法は確立されていませんが、進行を遅らせ、症状を和らげるための治療は複数あります。
| 治療 | 内容 |
|---|---|
| 血圧管理 | 高血圧を合併しやすく、ARBやACE阻害薬などでしっかりコントロールすることが腎機能を守るうえで重要です |
| 水分摂取の指導 | こまめな水分摂取が望ましいとされますが、適切な量は心臓・腎臓の状態により異なるため医師の指導のもとで行います |
| 進行抑制薬 | バソプレシンV2受容体拮抗薬のトルバプタンは腎容積の増大と腎機能低下を抑える効果が確認され、2014年から保険適用です。ただし定期的な血液検査(肝機能など)が必要で、進行リスクが高いと判断された方が対象です |
| 対症療法 | 尿路感染症・嚢胞感染には抗菌薬、痛みには鎮痛薬で対応します |
腎機能の低下が進んだ場合は、他の腎臓病と同様に透析療法や腎移植が選択肢となります。
ADPKDと診断されても、多くの場合すぐに透析が必要になるわけではありません。定期的な通院で腎機能・血圧・嚢胞の状態を経過観察しながら、できるだけ長く腎臓の働きを保つことを目指していく病気です。日常生活では、塩分を控えめにする、禁煙する、カフェインの摂りすぎに注意する、脱水を避けてこまめに水分を摂るといった工夫が、進行を穏やかにする助けになるとされています。また、遺伝性の病気であることから、ご自身やお子さんへの影響を考えて悩まれる方も少なくありませんが、発症時期や進行の速さには個人差が大きく、「診断されたら将来が一様に決まってしまう」というものではありません。気になることがあれば、遺伝カウンセリングも含めて医師に相談しながら、一つずつ整理していくことをおすすめします。
クリニックプラスでは、新たに開設する腎臓内科において、健診で指摘された腎嚢胞の評価や、多発性嚢胞腎が疑われる方への腹部超音波検査、血液・尿検査による腎機能のチェック、血圧管理を中心とした診療を行ってまいります。家族歴の聴取をもとに経過観察の必要性を判断し、より詳しい画像検査(CT・MRI)や遺伝学的検査、トルバプタンなど専門的な治療薬の導入が必要と判断した場合には、専門施設・高次医療機関と連携してご紹介する体制を整えてまいります。
遺伝性の病気と向き合いながら長く付き合っていく治療だからこそ、通院のしやすさも大切にしたいと考えています。クリニックプラスでは24時間LINEから予約が可能で、事前のLINE問診やクレジットカード決済にも対応しているため、待ち時間の負担を抑えて受診いただけます。平日は夜20時まで、土日祝日も診察を行っているため、お仕事や育児で忙しい方、定期的な通院を無理なく続けたい方も、ご自身のペースで受診いただけます。健診で嚢胞を指摘された方も、ご家族に同じ病気の方がいて心配な方も、まずはお気軽にご相談ください。