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発作性上室性頻拍
コラム
頻脈性心房細動は、心臓の上側にある「心房」で無秩序な電気信号が多数発生して心房が痙攣し、心拍数が1分間に100回以上に増加する不整脈です。心房細動は本来、脈が速くなる方向に作用しやすい不整脈であり、頻脈性心房細動は心房細動の中で最も一般的なパターンです。心房がしっかりと収縮できなくなるため、心房内の血液の流れがよどみ、血栓(血の塊)が形成されやすくなります。この血栓が脳の血管を塞ぐと、特に重症化しやすい「心原性脳梗塞」を引き起こすリスクがあり、適切な治療の継続が欠かせません。
「薬を処方されたけれど、自覚症状があまりないし、通院が面倒」と感じている方もいるかもしれません。しかし、頻脈性心房細動は、しっかりと治療を続けなければ脳梗塞や心不全といった重大な合併症を引き起こしうる疾患です。治療の大切さをご理解いただき、継続的な通院にお役立てください。
頻脈性心房細動が起こると、脈が速くなるだけでなく、リズムも不規則になります。以下のような症状が現れることがあります。
しかし、自覚症状が軽い方やほとんど感じない方も少なくありません。症状がなくても脳梗塞や心不全のリスクは存在するため、治療を中断しないことが非常に重要です。
心房細動は60歳代から発症率が上昇し、加齢とともに患者数が増加します。疫学調査では80歳代男性の約4%前後が罹患しているとされ、男性は女性よりもリスクが高い傾向があります。
心不全、心筋梗塞、僧帽弁狭窄症などの心臓弁膜症があると、心房への負担が増大し心房細動を起こしやすくなります。
習慣的な飲酒は心房細動のリスクを上昇させることが知られており、特に飲酒量が多い場合にはリスクが高まると報告されています。
また、喫煙も心房細動のリスク上昇と関連しており、さらに高血圧や心不全のリスクを高めるため、心臓への総合的な負担を増やします。飲酒量を減らすこと、禁煙に取り組むことは心房細動の予防に有効です。
心房細動には遺伝的な素因も関与しています。両親のどちらか一方が心房細動をもつ場合は発症リスクが1.8倍、両方がもつ場合は3.2倍になるとの報告があります。(Framingham Heart Study など)
貧血、脱水、発熱、過労、睡眠不足、強い精神的ストレス、甲状腺疾患なども、頻脈性心房細動を引き起こす原因となりえます。基礎疾患が隠れていないかを調べることも大切です。
頻脈性心房細動の診断には、以下の検査を組み合わせて行います。
| 検査名 | 目的・内容 |
| 心電図検査 | 心房細動の有無と心拍数を確認。発作中に記録できれば確定診断が可能 |
| ホルター心電図 | 数日間にわたり心電図を連続記録し、発作の頻度や脈拍数の変動を評価 |
| 心エコー検査 | 心臓の構造・機能を超音波で評価。血栓の有無も確認 |
| 血液検査 | 甲状腺異常、心不全マーカー(BNP)、電解質バランスなどを評価 |
| 胸部レントゲン | 心臓の大きさ(心拡大の有無)、肺うっ血(肺に水がたまっていないか)を確認 |
※心エコー検査や胸部レントゲンは、一部の医療機関では受けられない場合があります。詳しくは各院のお問い合わせよりご相談ください。
頻脈性心房細動には、特に注意すべき2つの重大な合併症があります。
心房が痙攣することで心房内の血液がよどみ、血栓が形成されます。この血栓が血流に乗って脳の血管を塞ぐと脳梗塞を発症します。心臓でできる血栓は比較的大きいため、脳内の太い血管を詰まらせやすく、広い範囲で脳の血流が途絶えて重篤な症状を引き起こします。後遺症として半身麻痺や言語障害が残る可能性があり、他の原因による脳梗塞と比べても重症化しやすいのが特徴です。心房細動のある方では、ない方と比較して脳梗塞のリスクが約5倍に上昇するとされています。
心臓は規則正しく収縮と拡張を繰り返すことで全身に血液を送り出す「ポンプ」の役割を果たしています。頻脈性心房細動では、心房がうまく収縮できないうえに脈が速すぎるため、心臓のポンプ機能が低下します。収縮した後に十分に拡張する時間がなく、心臓から送り出せる血液の量が減少します。この状態が続くと心臓に過大な負担がかかり、うっ血性心不全に至ります。心不全は息切れやむくみが現れ、徐々に悪化する進行性の病気です。心房細動と心不全は互いに悪化させ合う関係にあるため、悪循環を断ち切るためにも早期の治療が重要です。
治療の柱は脳梗塞予防のための抗凝固薬です。新規経口抗凝固薬(DOAC)が主流となっており、食事制限が少なく服用しやすいのが特長です。脈拍数をコントロールするためのβ遮断薬やカルシウム拮抗薬、心房細動を停止させるための抗不整脈薬も状態に応じて使い分けられます。高血圧、糖尿病、心不全などの併存疾患の管理も治療の重要な柱です。
カテーテルアブレーションは、心房細動に対する根治を目指す治療法です。足の付け根の血管からカテーテルを挿入し、心房細動の主な原因となる異常な電気信号の発生部位(多くは肺静脈の付け根)を、高周波やバルーンを用いて焼灼・隔離します。
発作性心房細動では、1回の治療で約70〜80%程度の有効性が報告されており、複数回の治療を行うことで約80〜90%前後の良好な治療成績が得られます。慢性例でも効果が期待されますが、早い段階で治療を開始するほど治療成績が良好です。カテーテル治療が適応と判断された場合は、治療実績の豊富な病院をご紹介します。
頻脈性心房細動の発症や再発を予防するためには、日常生活における自己管理も大切です。高血圧がある方は塩分の摂取を控え、定期的に血圧を測定して適切にコントロールしましょう。肥満は心房細動のリスク因子であるため、適正体重の維持にも努めてください。適度な有酸素運動は心臓の健康維持に有益ですが、過度な運動はかえって不整脈を誘発する場合がありますので、運動量については担当医と相談するとよいでしょう。アルコールの摂取量を控えること、禁煙すること、十分な睡眠をとること、ストレスを溜めないことも予防に効果的です。
頻脈性心房細動は、適切に治療を続けることで脳梗塞や心不全といった重大な合併症を防ぐことができます。自覚症状が軽い場合でも通院を中断しないことが、健康を守るうえで非常に大切です。治療に不安がある方や通院の負担を感じている方は、ぜひ一度ご相談ください。
クリニックプラスの循環器専門外来では循環器内科の専門医が、一人ひとりの状態に合わせた治療方針を丁寧にご説明します。事前LINE問診や事前クレジットカード決済のシステムを導入しており、待ち時間の短縮にも取り組んでいます。24時間LINEでご予約が可能で、平日は夜20時まで、土日祝日も診察しておりますので、お忙しい方でもライフスタイルに合わせて通院を続けていただけます。