診療内容 腎臓内科

高血圧性腎障害

健康診断や病院で「血圧が高い状態が続くと、腎臓にも負担がかかりますよ」と言われたことはありませんか。血圧の話だと思って聞き流してしまいがちですが、実は高血圧は腎臓病の代表的な原因のひとつです。この記事では、高血圧が腎臓を傷つける「高血圧性腎障害(こうけつあつせいじんしょうがい)」、医学的には「腎硬化症(じんこうかしょう)」と呼ばれる病気について、原因から症状、検査、治療法まで詳しく解説します。

高血圧性腎障害(腎硬化症)とは

高血圧性腎障害(腎硬化症)とは、長期間にわたる高血圧によって腎臓内の細い血管(細動脈)が硬く狭くなり、腎臓への血流が低下することで腎機能が徐々に低下していく病気です。進行がゆるやかな「良性腎硬化症」と、急激な血圧上昇に伴い数週間〜数か月単位で腎機能が悪化する「悪性腎硬化症」に分けられます。

腎硬化症は、透析導入の原因疾患として糖尿病性腎症、慢性糸球体腎炎に次いで上位(全体の1割以上)を占めており、高齢化が進む日本では徐々に増加傾向で、今後も増加が見込まれています。加齢とともに血圧が上がりやすくなることを考えると、決して珍しい病気ではありません。なお、当院には血圧そのものを管理する「高血圧外来」もございますので、血圧の数値自体が気になる方はそちらもあわせてご参照ください。

高血圧性腎障害の原因・仕組み

腎臓には、血液をろ過するために毛細血管が集まった「糸球体(しきゅうたい)」という組織が無数にあります。高血圧の状態が何年も続くと、糸球体につながる細動脈の壁が厚く硬くなり(動脈硬化)、内腔が狭くなります。その結果、腎臓に届く血流量が減少し、糸球体が徐々に萎縮・硬化して機能を失っていきます。

さらに厄介なのは、腎臓と血圧が相互に悪影響を及ぼし合う悪循環があることです。腎機能が低下すると、体内の余分な塩分や水分を排出しにくくなり、血圧を調整するホルモン(レニン・アンジオテンシン系)のバランスも崩れるため、血圧がさらに上がりやすくなります。つまり「高血圧が腎臓を傷める」だけでなく「腎臓が悪くなることで血圧がさらに上がる」という負の連鎖が起こりやすいのです。糖尿病、脂質異常症、喫煙、加齢、肥満なども動脈硬化を進める要因として関与します。

高血圧性腎障害の症状

腎硬化症の最も注意すべき特徴は、初期にはほとんど自覚症状がないことです。腎臓は機能の半分以上が失われても症状が出にくい「沈黙の臓器」と呼ばれており、健康診断の尿検査や血液検査で指摘されて初めて気づくケースが少なくありません。

病状がある程度進行すると、以下のような症状が現れてきます。

症状内容
夜間頻尿夜中に何度もトイレに起きる(尿を濃縮する力が落ちるため)
むくみ(浮腫)まぶたや下肢に水分が溜まりやすくなる
倦怠感疲れやすい、だるさが続く
食欲不振老廃物の蓄積により食欲が落ちる
貧血腎臓で作られる造血ホルモンの低下による息切れ・めまい

これらは腎機能がかなり低下してから出る症状であり、「症状がないから大丈夫」とは言い切れない点が、この病気の怖さでもあります。

高血圧性腎障害の診断・検査

腎硬化症は、以下の検査を組み合わせて総合的に診断します。特定の症状から一発で診断できる病気ではなく、経過を追いながら判断していくのが特徴です。

  • 血圧測定:診察室血圧に加え、自宅での家庭血圧の記録が重要です。
  • 尿検査:軽度〜中等度の蛋白尿(たんぱくにょう)がみられることがありますが、他の腎疾患に比べると尿の異常は目立ちにくい傾向があります。
  • 血液検査:血清クレアチニン値からeGFR(推算糸球体濾過量)を算出し、腎機能の低下度を評価します。
  • 画像検査:超音波検査やCT検査で腎臓の萎縮の有無を確認します。
  • 眼底検査:高血圧による血管の変化を目で確認できる部位として、進行度の参考にします。

蛋白尿が多量に出ている場合や血尿を伴う場合は、IgA腎症や糸球体腎炎など他の腎疾患の可能性も考えられるため、必要に応じて追加の検査や専門医療機関での腎生検が検討されます。

高血圧性腎障害の治療法

治療の基本は、血圧を目標値までしっかりとコントロールし、腎臓への負担をこれ以上増やさないことです。日本高血圧学会のガイドラインでは、診察室血圧130/80mmHg未満、家庭血圧125/75mmHg未満を基本の降圧目標としています(高齢の方などでは個別に調整されます)。

ただし、過度な血圧低下は腎臓への血流を低下させ、腎機能低下の要因となることもあります。血圧は季節の気温変化により変動するため、血圧の変動に合わせて適宜薬剤調整を行う必要があります。そのためには、家庭血圧の継続的な測定が重要となります。

薬物療法

腎臓を保護する作用が期待できるARB(アンジオテンシンII受容体拮抗薬)ACE阻害薬が第一選択薬としてよく用いられます。これらは糸球体内の圧力を下げ、蛋白尿を減らす効果も報告されています。降圧が不十分な場合はカルシウム拮抗薬利尿薬を組み合わせる多剤併用療法が行われることも多く、腎機能や血液中のカリウム値を確認しながら薬剤を調整していきます。最近では腎機能障害に進行を抑制する目的に、腎保護薬を併用することもあります。

生活習慣の改善

薬物療法と並行して、生活習慣の見直しも欠かせません。

  • 減塩:1日6g未満を目安に(味噌汁は1日1杯まで、加工食品を控えるなど)
  • 適正体重の維持:肥満は血圧・腎機能双方に悪影響
  • 禁煙:喫煙は腎血流をさらに悪化させる
  • 適度な運動:ウォーキングなど有酸素運動を無理のない範囲で
  • 節酒:過度の飲酒は血圧上昇の一因

すでに腎機能が低下している場合は、たんぱく質やカリウムの摂取量について医師・管理栄養士と相談しながら調整することが望ましいです。

こんなときはすぐ受診してください

まれではありますが、血圧が急激に180/120mmHg以上まで上昇し、頭痛・吐き気・視覚異常・むくみの急な悪化などを伴う場合は、「悪性高血圧」と呼ばれる緊急性の高い状態が疑われます。この場合、数週間〜数か月という短期間で腎機能が急速に悪化することがあり、放置すると透析が必要な状態にまで進行するリスクもあります。

  • 強い頭痛やめまいを伴う血圧上昇
  • 急に息苦しさやむくみが悪化した
  • 尿量が急に減った
  • 意識がぼんやりする、けいれんを伴う

このような症状がある場合は、当院の診療時間を待たず、速やかに救急外来を受診してください。日頃から自覚症状に乏しい病気だからこそ、「いつもと違う」変化に気づいたときの早めの受診が重要です。

クリニックプラスでの高血圧性腎障害の診療

クリニックプラスの腎臓内科では、血圧の管理と腎機能の評価を組み合わせた診療を行っています。診察では家庭血圧の記録を確認しながら降圧薬の種類や量を調整するとともに、尿検査による蛋白尿の有無やeGFRの推移を定期的にチェックし、腎機能の低下スピードを把握していきます。生活習慣の改善についても、無理のない範囲での減塩方法や体重管理など、患者さん一人ひとりの生活に合わせた具体的なアドバイスを行っています。腎生検など、より専門的な精査が必要と判断した場合には、連携する高次医療機関へ速やかにご紹介する体制も整えています。

高血圧性腎障害は自覚症状に乏しく、治療を継続していても「本当に効果があるのか実感しづらい」と感じる方も少なくありません。だからこそ通院のハードルを下げることを大切にしており、初診・再診とも24時間LINEから予約可能で、事前のLINE問診にも対応しています。平日は夜20時まで診療しているため仕事帰りにも通いやすく、土日祝日も診察していますので、定期的な血圧・腎機能のチェックを無理なく続けていただけます。血圧や健康診断の結果が気になる方は、ひとりで抱え込まず、お気軽にご相談ください。

一覧へ戻る