診療内容 腎臓内科

糖尿病性腎症

健康診断で「尿蛋白」や「尿アルブミン」の項目に注意マークがついていたり、糖尿病で通院中に医師から「腎臓の数値」を気にするよう言われたりして、この記事にたどり着いた方も多いのではないでしょうか。糖尿病性腎症(とうにょうびょうせいじんしょう)は、初期にはほとんど自覚症状がないまま進行する病気です。だからこそ、どのような検査で見つかり、どう付き合っていけばよいのかを知っておくことが、将来の腎臓の働きを守る第一歩になります。

糖尿病性腎症とは

糖尿病性腎症とは、長年にわたる高血糖の影響で腎臓の糸球体(しきゅうたい)という毛細血管の塊が傷つき、老廃物をろ過する機能が徐々に低下していく病気です。糖尿病網膜症(とうにょうびょうもうまくしょう)、糖尿病神経障害と並んで糖尿病の三大合併症の一つに数えられ、発症には糖尿病の罹患後10〜15以上かかることが一般的です。

日本透析医学会の統計(2022年末)によれば、透析導入患者の原疾患として糖尿病性腎症は39.5%と第1位を占め、慢性糸球体腎炎(24.0%)を大きく上回っています。透析が必要になるかどうかは糖尿病の治療徹底と早期発見で大きく変わるため、「症状がないから」と検査を後回しにしないことが重要です。

糖尿病性腎症の原因・進行の仕組み

糖尿病性腎症の根本的な原因は、長期間続く高血糖です。血液中のブドウ糖が多い状態が続くと、糸球体内の毛細血管の壁が徐々に厚く硬くなり(糸球体硬化)、本来ろ過されないはずのアルブミン(蛋白質の一種)が尿中に漏れ出すようになります。これが後述する「微量アルブミン尿(びりょうあるぶみんにょう)」で、腎症の最も早いサインです。

進行に関わる主なリスク因子は次のとおりです。

  • 血糖コントロール不良(HbA1cが高い状態が続く)
  • 高血圧の合併(糸球体内の圧力がさらに高まり、障害が加速する)
  • 罹病期間の長さ(糖尿病歴が長いほどリスクが上昇)
  • 脂質異常症、喫煙、肥満
  • 家族に腎臓病や糖尿病性腎症の方がいる(遺伝的な影響)

特に高血圧の合併は進行速度を大きく左右するため、血糖だけでなく血圧の管理も欠かせません。

糖尿病性腎症の病期分類と症状

糖尿病性腎症は、尿中アルブミン(または尿蛋白)の量と、腎臓のろ過能力を示すeGFR(推算糸球体濾過量)の2つの指標をもとに、日本糖尿病学会・日本腎臓学会などによる合同委員会が定めた病期分類で評価します。

病期尿アルブミン値・尿蛋白eGFRの目安主な症状
第1期(腎症前期)正常(30mg/gCr未満)30以上自覚症状なし
第2期(早期腎症期)微量アルブミン尿(30〜299mg/gCr)30以上ほぼ自覚症状なし
第3期(顕性腎症期)顕性アルブミン尿(300mg/gCr以上)30以上むくみが出ることがある
第4期(腎不全期)問わない30未満倦怠感・むくみ・食欲低下など
第5期(腎代替療法期)透析療法中透析または移植が必要な状態

第1期・第2期はほとんど無症状で、健康診断の尿検査で偶然見つかることが多い段階です。第3期以降になると、まぶたや足の浮腫(ふしゅ)、だるさ(倦怠感)、夜間の頻尿、血圧上昇など、慢性腎臓病(CKD)と共通する症状が徐々に現れます。第4期まで進むと貧血や食欲不振、息切れなど全身への影響も出やすくなり、症状が出てから受診した時にはかなり進行しているケースも少なくありません。

糖尿病性腎症の診断・検査

糖尿病性腎症は、以下の検査を組み合わせて診断・評価します。

  • 尿中微量アルブミン検査:早期腎症を見つけるための最も重要な検査です。通常の尿蛋白検査では検出できないごく微量の漏れを数値化できます。糖尿病と診断されたら、年に1回以上のペースで検査することが推奨されています。
  • 尿蛋白定量検査:顕性腎症期以降の評価に用います。
  • 血清クレアチニン・eGFR:血液検査から腎臓のろ過機能を推算します。
  • 血圧測定:家庭血圧を含めた継続的な管理が重要です。
  • 眼底検査:糖尿病性腎症と糖尿病網膜症は同じ細小血管の障害が背景にあるため、しばしば合併します。悪化すると失明に至ることもあります。眼科での定期的な眼底検査は、腎症の進行度を推測する手がかりにもなります。

なお、急激な腎機能悪化や、罹病期間が短いのに腎機能障害が強い場合などは、糖尿病以外の腎臓病(IgA腎症など)が隠れている可能性もあり、必要に応じて腎生検などの精査が検討されます。

糖尿病性腎症の治療法

血糖・血圧管理

治療の土台となるのが、血糖と血圧のコントロールです。HbA1cは個々の年齢や合併症の状態に応じた目標値(多くの場合7.0%未満)を目指し、血圧は診察室で130/80mmHg未満を目標にすることが多く、家庭血圧ではさらに低めの数値が目安になります。血糖・血圧のいずれも、下げすぎによる低血糖やふらつきにも注意しながら、主治医と相談して個別に目標を設定します。

薬物療法

腎症の進行抑制に有効性が確認されている薬剤には、次のようなものがあります。

  • RAS阻害薬(ACE阻害薬・ARB):糸球体内の圧力を下げ、尿蛋白・尿アルブミンを減らす効果があり、血圧が高くない場合でも腎保護目的で使用されることがあります。
  • SGLT2阻害薬:もともと血糖降下薬として開発されましたが、近年の大規模臨床試験で腎機能低下や末期腎不全への進行を抑える効果が示され、糖尿病性腎症の治療に広く用いられるようになりました。
  • そのほか、必要に応じてMRA(ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬)などが併用されることもあります。

これらの薬剤は効果に個人差があり、腎機能や血中カリウム値を確認しながら慎重に調整します。

食事療法

病期に応じた食事管理も重要な柱です。第3期(顕性腎症期)以降では、蛋白質の摂取を適度に制限することが腎臓への負担軽減につながるとされ、塩分は1日6g未満が目安です。蛋白質はカロリー源であり、カロリー不足は体の蛋白質分解を招き逆効果となる可能性があります。蛋白質制限はエネルギー量を確保しつつ管理栄養士と相談して進めます。第4期以降ではカリウムやリンの制限が必要になることもあります。

糖尿病性腎症を進行させないために

糖尿病性腎症は、早期の第1期・第2期であれば血糖・血圧のコントロールによって進行を抑えられる可能性がある一方、顕性アルブミン尿の段階まで進んでしまうと、完全に元の状態に戻すことは難しくなります。だからこそ「早期発見」が何より重要です。

具体的には、以下を習慣にすることをおすすめします。

  • 糖尿病治療中の方は、尿中微量アルブミン検査を年1回以上受ける
  • 家庭血圧を毎日記録し、変化を主治医と共有する
  • HbA1cの推移を定期的に確認する
  • 減塩・適正エネルギー量を意識した食事を続ける
  • 禁煙し、適度な運動を継続する(ただし腎機能低下時は運動強度について医師に相談する)
  • 眼科での眼底検査も定期的に受ける

「まだ数値に少し引っかかっただけ」という段階こそ、生活習慣の見直しと治療介入の効果が出やすい時期です。数値の意味が分からず放置してしまう前に、一度きちんと評価を受けることをおすすめします。

クリニックプラスでの糖尿病性腎症の診療

クリニックプラスの腎臓内科では、糖尿病をお持ちの方の腎臓の状態を早期から継続的にフォローする体制を整えています。尿中微量アルブミン検査や尿蛋白定量、血清クレアチニンからのeGFR算出といった基本的な検査により腎症の病期を評価し、必要に応じて血圧管理薬やSGLT2阻害薬をはじめとした薬物療法、食事指導をご提案します。現在糖尿病外来に通院中の方は、同じ院内で腎臓の状態も併せて確認できるため、血糖と腎機能を切り離さずに管理しやすくなります。腎生検など、より専門的な検査や治療が必要と判断した場合には、連携する高次医療機関への紹介にも対応します。

通院のしやすさにも配慮しており、24時間LINEから予約が可能なほか、事前のLINE問診にも対応しているため受診時の待ち時間を短縮できます。平日は夜20時まで診察を行っているため仕事帰りにも通いやすく、土日祝日も診察していますので、平日忙しい方でもご自身のペースで通院を続けやすい環境です。長期にわたる付き合いが必要になることが多い病気だからこそ、無理なく通い続けられるクリニックとして、お気軽にご相談ください。

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