診療内容 頭痛外来

脳卒中

脳卒中は、脳の血管が詰まる「脳梗塞」と、脳の血管が破れる「脳出血」に大別される、命に関わる深刻な病気です。医療技術の進歩により死亡率は低下傾向にありますが、後遺症として運動麻痺や言語障害が残るケースは依然として多く、介護が必要な状態になる主な原因の一つとなっています。脳卒中は発症してからの時間が経過するほど脳へのダメージが大きくなるため、初期症状を見逃さず、できるだけ早く治療を開始することが極めて重要です。ここでは、脳卒中の種類や症状、原因、治療法について詳しく解説します。

脳卒中とはどんな病気?

脳卒中とは、脳の血管が詰まったり破れたりすることで、脳の機能に障害が生じる病気の総称です。「卒中」とは「突然倒れる」という意味であり、その名のとおり前触れなく突然発症するのが大きな特徴です。

血管が詰まると脳への血流が途絶え、酸素や栄養が届かなくなります。また、血管が破れると出血した血液が脳組織を圧迫し、損傷を与えます。いずれの場合も、障害を受けた部位に対応する身体機能——手足の動き、言語、視覚など——に影響が出るため、後遺症として残ることが少なくありません。

厚生労働省の統計によると、脳卒中は日本人の死因の上位に位置しており、また要介護状態になる原因としても大きな割合を占めています。発症から治療開始までの時間が短いほど回復の見込みが高まるため、初期症状への正しい理解と迅速な対応が求められます。

脳卒中の種類と症状

脳卒中は大きく分けて、血管が詰まる「脳梗塞」と血管が破れる「脳出血」に分類されます。それぞれの特徴と主な症状を見ていきましょう。

脳梗塞

脳梗塞は、脳の血管が血栓(血の塊)などによって詰まり、その先の脳細胞に酸素や栄養が届かなくなることで組織が壊死する病気です。脳卒中全体の約7割を占めるとされ、最も発症数が多いタイプです。脳梗塞はさらに「ラクナ梗塞」「アテローム血栓性脳梗塞」「心原性脳塞栓症」などに分類されます。

脳梗塞の主な症状

  • 手足のしびれや動かしづらさ(麻痺)←片側に出ることが多い
  • 視野が欠ける、ものが二重に見える
  • ろれつが回らない、言葉が出てこない、会話がかみ合わない
  • 食べ物や飲み物がうまく飲み込めない
  • 片側の口角が下がる、片側からよだれが垂れる、片眼を閉じられない

また、脳の血流が一時的に低下して脳梗塞と同様の症状が短時間(通常は数分~1時間程度)で消失する「一過性脳虚血発作(TIA)」にも注意が必要です。TIAは脳梗塞の前兆ともいわれており、発作後48時間以内に脳梗塞を発症するリスクが高いため、症状が治まったとしても速やかに医療機関を受診しましょう。

脳出血

脳出血は、脳の血管が破れて血液が脳組織に漏れ出す病気です。脳の内部に出血が起こる「脳実質内出血」と、脳の表面にあるクモ膜の内側に出血が起こる「クモ膜下出血」に分けられます。クモ膜下出血は脳動脈瘤の破裂が主な原因で、脳卒中の中でも特に死亡率が高い疾患として知られています。

脳出血の主な症状

  • 突然の激しい頭痛(特にクモ膜下出血で顕著)
  • 手足のしびれや麻痺
  • 意識障害(意識が朦朧とする、反応がなくなる)
  • けいれん
  • 突然の嘔吐やめまい、眼のちかつき(羞明)
  • 両眼が同じ方向を向いたまま治らない(共同偏視)

脳出血の最大の危険因子は高血圧です。長期間にわたって血圧が高い状態が続くと、脳の細い血管がもろくなり、破れやすくなります。

初期症状のチェック方法「FAST(ファスト)」

脳卒中が疑われるときは、「FAST(ファスト)」と呼ばれるチェック法が広く推奨されています。FASTは以下の頭文字をとったもので、脳卒中の早期発見に役立ちます。

項目意味チェック内容
F(Face)「イー」と言ったとき、口角が片側だけ下がっていないか
A(Arm)両腕を前に上げたまま維持できるか、片方だけ下がらないか
S(Speech)言葉短い文をはっきり言えるか、ろれつが回っているか
T(Time)時間上記1つでも該当したら発症時刻を確認し、すぐに救急車を呼ぶ

1つでも当てはまる症状がある場合は、迷わず119番に電話しましょう。脳梗塞の治療で用いられるt-PA(血栓溶解療法)は発症から4.5時間以内に投与する必要があり、1分でも早い対応が回復の可能性を高めます。

脳卒中の原因とリスク要因

脳卒中の発症には、さまざまな生活習慣病や生活習慣が深く関わっています。リスク要因を把握し、日常生活の中で予防に取り組むことが大切です。

リスク要因脳卒中との関係
高血圧最大の危険因子。血管に過度な圧力がかかり、詰まりや破裂のリスクが高まる
糖尿病高血糖が血管を傷つけ、動脈硬化を促進する
脂質異常症LDLコレステロールが高いと血管内にプラークが蓄積し、血管を狭めたり詰まらせたりする
心房細動(不整脈)心臓内で血栓ができやすくなり、それが脳に運ばれて血管を詰まらせる
喫煙血管を収縮させ、血液の粘度を高めることで血栓ができやすくなる
肥満・運動不足高血圧・糖尿病・脂質異常症など複数のリスク因子を同時に抱えやすくなる

これらのリスク要因は、食事・運動・禁煙などの生活習慣の改善や、適切な薬物療法によってコントロールすることが可能です。健康診断で指摘を受けた方は、早めに医療機関を受診して管理を始めましょう。

脳卒中の診断と検査

脳卒中が疑われる場合、医療機関ではまず神経学的な診察(手足の動き、反射、感覚、言語機能などの評価)を行い、続いて画像検査で脳の状態を確認します。主に用いられる検査は以下のとおりです。

  • 頭部CT検査:出血の有無を迅速に判断できるため、救急の現場で最初に行われることが多い検査です
  • 頭部MRI検査:脳梗塞の部位や範囲を詳細に把握できます。発症早期の小さな梗塞もCTより高い精度で検出可能です
  • MRA(MR血管撮影):脳の血管の状態を画像化し、狭窄や閉塞、動脈瘤の有無などを調べます
  • 頸動脈エコー検査:首の血管の動脈硬化の程度や血栓の有無を超音波で評価します
  • 心電図・心エコー検査:心房細動など、心臓が原因で起こる脳梗塞(心原性脳塞栓症)の評価に用いられます
  • 血液検査:血糖値、コレステロール値、凝固機能などを調べ、リスク要因を評価します

脳卒中の治療法

脳卒中の治療は、急性期の救命・脳保護を目的とした治療と、回復期のリハビリテーション・再発予防に分けられます。脳梗塞と脳出血では急性期の治療方針が異なります。

脳梗塞の急性期治療

  • t-PA静注療法(血栓溶解療法):発症4.5時間以内であれば、血栓を溶かす薬(t-PA)を点滴で投与します。早期に行うほど効果が高い治療法です
  • 血管内治療(血栓回収療法):カテーテルを血管内に挿入し、血栓を直接取り除く方法です。太い血管が詰まった場合に有効で、発症から最大24時間以内まで適応となる場合があります
  • 抗血栓療法:血液をサラサラにする薬(抗血小板薬や抗凝固薬)を投与し、血栓の拡大や新たな血栓の形成を防ぎます

脳出血の急性期治療

  • 血圧管理:出血を拡大させないために、点滴などで速やかに血圧を下げます
  • 外科手術:出血量が多い場合や脳ヘルニア(脳が圧迫されて移動する状態)の危険がある場合は、開頭手術や内視鏡手術で血腫を除去します
  • クモ膜下出血の治療:破裂した動脈瘤に対して、クリッピング術(開頭して動脈瘤をクリップで挟む)やコイル塞栓術(カテーテルで動脈瘤内にコイルを詰める)を行います

回復期の治療とリハビリテーション

急性期の治療が落ち着いた後は、できるだけ早くリハビリテーションを開始します。理学療法(歩行訓練など)、作業療法(日常動作の訓練)、言語聴覚療法(言葉や嚥下の訓練)を組み合わせて、失われた機能の回復を目指します。

また、再発予防のためには、血圧・血糖・コレステロールなどの管理を継続し、必要に応じて抗血栓薬を服用していくことが重要です。定期的な通院による経過観察を続けましょう。

脳卒中の予防のために

脳卒中は予防できる病気です。以下のポイントを日常生活に取り入れることで、発症リスクを大きく下げることができます。

  • 減塩を意識したバランスの良い食事を心がける、過食や間食を控える、水分摂取をこまめに心掛ける
  • ウォーキングなどの有酸素運動を習慣にする
  • 禁煙する(受動喫煙もリスクを高めます)
  • 過度の飲酒を控える
  • 高血圧・糖尿病・脂質異常症・不整脈がある方は、定期的に受診して適切に管理する
  • 定期的な健康診断を受けて、リスク要因を早期に発見する

脳卒中のリスク要因である高血圧や糖尿病、脂質異常症は、自覚症状がないまま進行することがほとんどです。「自分は大丈夫」と過信せず、気になることがあれば早めにかかりつけ医に相談しましょう。

クリニックプラスでは、脳卒中の予防に欠かせない高血圧・糖尿病・脂質異常症などの生活習慣病の管理に力を入れています。24時間LINEから予約が可能で、平日は20時まで、土日祝日も毎日診療しておりますので、お忙しい方でも無理なく通院を続けていただけます。「健康診断で血圧やコレステロールの値を指摘された」「脳卒中が心配」という方は、お気軽にご相談ください。

※クリニックプラスでは、CT検査、MRI検査、頸動脈エコー検査、急性期治療を行っておらず、高次医療機関や画像検査機関への受診が必要となります。

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