診療内容 循環器内科

感染性心内膜炎

感染性心内膜炎とは

感染性心内膜炎(かんせんせいしんないまくえん)は、心臓の内側を覆う膜(心内膜)に細菌が付着・増殖して炎症を引き起こす感染症です。細菌は特に心臓の「弁」やその周辺に集まりやすく、菌塊(きんかい)や疣贅(ゆうぜい)と呼ばれる細菌の塊を形成します。この菌塊が弁を破壊したり、血流に乗って全身に飛んで臓器を傷つけたりすることで、多彩で重篤な症状を引き起こします。

年間の発症率は10万人あたり3〜7人とまれな病気ですが、放置すると弁膜症・心不全・脳梗塞などの致命的な合併症を招くため、早期診断と迅速な治療が極めて重要です。免疫機能の低下が発症のリスクを高めるため、高齢者や免疫抑制状態にある方はとくに注意が必要です。

感染性心内膜炎の原因

感染性心内膜炎は、血液中に侵入した細菌(まれに真菌)が心臓の弁や心内膜に付着して感染を引き起こすことで発症します。通常、血中に一時的に細菌が入り込んでも免疫機能で排除されますが、弁に傷があったり免疫が低下していたりすると、細菌が弁に定着して増殖してしまいます。

細菌が血中に入り込むきっかけとしては、以下のようなものがあります。

  • 歯科治療(歯周病の処置、抜歯、歯石除去など):口腔内には多くの細菌が常在しており、歯科処置に伴い血中に入りやすい
  • 皮膚の感染症や外傷:皮膚のバリアが破れることで細菌が侵入する
  • 内視鏡検査や泌尿器科的処置:粘膜に傷がつくことで細菌が血中に入る
  • 心臓カテーテル治療・開心術・人工弁置換術:心臓に直接的な侵襲が加わる処置
  • 長期にわたる点滴治療や血液透析:血管に頻繁に針を刺す機会があるため感染リスクが上がる

細菌は特に僧帽弁や大動脈弁に付着しやすく、正常な弁よりも人工弁や損傷のある弁の方が感染リスクが高いことが知られています。

感染性心内膜炎にかかりやすい方

以下に該当する方は、感染性心内膜炎のリスクが高いとされています。

  • 心臓弁膜症(僧帽弁逆流症、大動脈弁狭窄症など)を持つ方
  • 人工弁を装着している方
  • 先天性心疾患をお持ちの方
  • 糖尿病やHIV感染症などで免疫機能が低下している方
  • がんやリウマチなどの治療で免疫抑制薬を使用している方
  • 長期にわたり透析や注射治療を受けている方
  • 口腔内の衛生状態が不十分な方

リスクの高い方は、歯科治療や侵襲的な処置を受ける前に、予防的に抗菌薬を内服することが推奨されています。また、日頃からの丁寧な口腔ケア(歯磨きや定期的な歯科検診)が感染性心内膜炎の予防において非常に重要です。

感染性心内膜炎の症状

感染性心内膜炎の症状は多彩で、大きく3つのカテゴリーに分類されます。

感染に伴う全身症状

最も多い症状は発熱です。原因不明の熱が数週間以上にわたって続くことで受診し、検査の結果、感染性心内膜炎が判明するケースがよく見られます。全身倦怠感、食欲不振、体重減少、寝汗なども伴うことがあります。微熱が続くだけの場合もあり、「風邪がなかなか治らない」と感じている段階で見つかることも少なくありません。

心臓の症状

菌塊によって心臓の弁が破壊されると、弁の逆流(弁膜症)が生じて心臓に大きな負担がかかります。息切れ、呼吸困難、足のむくみなどの心不全症状が現れます。聴診では80〜85%の患者さんで心雑音が聴取されるため、聴診は感染性心内膜炎を疑う重要なきっかけとなります。

塞栓症状

菌塊の一部が心臓から剥がれて血流に乗ると、全身のさまざまな臓器の血管を詰まらせ、以下のような症状を引き起こします。塞栓症状は体のどの臓器にも起こり得ます。

  • 脳梗塞:半身麻痺、言語障害、意識障害など。若い方が原因不明の脳梗塞を起こした場合は、感染性心内膜炎が原因であることがあります
  • 腎梗塞:血尿、腰背部の痛み
  • 腸管膜動脈塞栓:突然の激しい腹痛
  • オスラー結節:手足の指先にできる痛みを伴う赤い結節(感染性心内膜炎に特徴的な所見)
  • 爪下線状出血:爪の下に生じる線状の出血
  • Janeway(ジェーンウェイ)病変:手のひらや足の裏にできる痛みのない紅斑

風邪だと思って経過を見ていたところ、脳梗塞の発症をきっかけに感染性心内膜炎が判明するというケースもあるため、原因不明の発熱が長引く場合や、風邪では説明がつかない症状が出現した場合は、必ず医療機関を受診しましょう。

感染性心内膜炎の検査・診断

感染性心内膜炎は初期に典型的な症状が出にくく、診断が困難な病気です。複数の検査を組み合わせて総合的に判断します。診断基準としてはDuke(デューク)基準が広く用いられています。

血液検査

白血球やCRP(C反応性蛋白)などの炎症マーカーの上昇を確認し、体内の感染・炎症の有無を評価します。貧血や腎機能障害の有無など、全身への影響を把握するためにも不可欠な検査です。

血液培養検査

原因菌を特定するための最も重要な検査です。血液中の生きた細菌を培養し、菌の種類を同定します。原因菌が判明すれば最も効果的な抗菌薬を選択でき、治療方針の決定に直結します。検査精度を高めるため、異なるタイミング・異なる部位から複数回(通常3セット以上)の採血が行われます。

心エコー検査

弁に付着した菌塊(疣贅)や弁の損傷、逆流の有無を観察します。胸から超音波をあてる「経胸壁心エコー検査」で十分に観察できない場合は、食道からプローブを挿入して心臓をより近くから観察する「経食道心エコー検査」を実施します。経食道心エコーは肺や骨の影響を受けにくいため、弁の状態を非常にクリアに描出できます。(※クリニックプラスでは経食道心エコー検査は行っておりません。必要時には、検査が受けられる連携医療機関をご紹介させていただいております。)

血液培養で細菌が検出され、心エコーで弁に菌塊が確認された場合に、感染性心内膜炎の確定診断となります。塞栓症状が疑われる場合は、頭部CTや腹部造影CTで塞栓の部位と範囲を確認することもあります。

感染性心内膜炎の治療

抗菌薬による治療(基本治療)

治療の柱は、原因菌に対して最も効果のある抗菌薬を静脈内に投与して細菌を完全に死滅させることです。抗菌薬の投与期間は一般的に6〜8週間と長期にわたり、基本的に入院しての治療となります。心不全症状を合併している場合には、酸素投与や利尿薬の投与で心臓の負担を同時に軽減していきます。

外科手術

抗菌薬の治療だけでは十分な効果が得られない場合や、以下のような状況では手術が検討されます。

  • 菌塊が大きく、全身に塞栓を飛ばすリスクが高い場合
  • 弁の破壊が進行し、重度の弁逆流や心不全を引き起こしている場合
  • 人工弁の感染で抗菌薬のみでは制御が困難な場合

手術では菌塊を除去し、必要に応じて弁の修復(弁形成術)または人工弁への置換(弁置換術)が行われます。

予後(治療後の見通し)

適切な抗菌薬治療と必要に応じた手術を行えば、多くの場合は治癒が見込めます。しかし、高齢者や複数の合併症を持つ方、人工弁感染のケースでは治療が難しくなることもあります。早期発見・早期治療が予後を大きく左右するため、疑わしい症状があれば速やかに受診することが重要です。

長引く発熱には早めの受診を

感染性心内膜炎は、初期には特徴的な症状が出にくく見逃されやすい病気です。しかし、診断が遅れると菌塊が全身に飛び、脳梗塞や腎梗塞など取り返しのつかない合併症を招くおそれがあります。「風邪にしては熱が長引いている」「原因のわからない倦怠感や微熱が続く」「風邪では説明がつかない症状がある」といった場合は、早めに医療機関を受診しましょう。

クリニックプラスでは、血液検査や心エコー検査を外来で実施し、感染性心内膜炎が疑われた場合には速やかに連携する大学病院や総合病院をご紹介いたします。24時間LINEでの予約が可能で、平日は夜20時まで、土日祝日も毎日診療しておりますので、お気軽にご相談ください。

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