不整脈
- 循環器内科
診療内容 循環器内科
起立性調節障害(OD:Orthostatic Dysregulation)は、自律神経の調節機能がうまく働かなくなることで起きる病態です。人間が立ち上がると、通常は自律神経が瞬時に血管を収縮させ、足に溜まった血液を上半身に戻して脳への血流を維持します。起立性調節障害では、この自律神経の反応が鈍くなるため、立ち上がった際に脳への血液供給が不足し、立ちくらみやめまい、頭痛、全身倦怠感などの多彩な症状が出現します。
小学校高学年から高校生くらいの思春期に発症することが多く、中学生の約10人に1人が起立性調節障害にかかっているとも報告されています。思春期を過ぎると自然に改善する方も多いですが、改善までに数カ月から数年かかることもあります。大人になっても症状に悩んでいる方は決して珍しくありません。
起立性調節障害の根本的な原因は、自律神経系の機能不全です。自律神経は「交感神経」と「副交感神経」のバランスによって体の機能をコントロールしていますが、このバランスが崩れることで血管の収縮・拡張の調節がうまくいかなくなります。
自律神経の乱れを引き起こす要因としては、以下のようなものが考えられています。
起立性調節障害の方は、午前中に調子が悪く、午後になると徐々に体調が回復してくるというパターンが典型的です。このため周囲から「怠けている」「やる気がない」と誤解されやすいのですが、自律神経の機能異常に基づく明確な病態です。
起立性調節障害では、以下のようなさまざまな症状がみられます。症状の現れ方には個人差があり、1つだけの方もいれば複数の症状が同時に出る方もいます。
長時間の起立も症状悪化の原因となります。朝礼で倒れてしまう、満員電車で具合が悪くなるといったエピソードは、起立性調節障害が関係していることがあります。
起立性調節障害は、起立後の血圧や心拍数の変動パターンから6つのサブタイプに分類されます。
| サブタイプ | 主な特徴 |
| ①起立直後性低血圧 | 最多。起立直後に著しい血圧低下が起き、強い立ちくらみと全身倦怠感を訴える。血圧回復に25秒以上かかる |
| ②体位性頻脈症候群 | 2番目に多い。起立時に血圧は低下しないが、心拍数が115以上に上昇し、ふらつき・だるさ・頭痛が生じる |
| ③血管迷走性失神 | 起立中に突然血圧が低下し、意識を失うことがある。脈が遅くなる(徐脈)を伴う場合もある |
| ④遷延性起立性低血圧 | 起立直後は正常だが、数分後に徐々に血圧が下がっていく |
| ⑤起立性脳循環不全型 | 血圧・心拍は正常範囲だが、脳への血流のみが低下する。診断には特殊な機器が必要 |
| ⑥高反応型 | 起立直後に著しい血圧上昇を示す。診断には特殊な装置が必要 |
⑤と⑥は特殊な計測装置が必要なため、一般のクリニックでは診断が難しいサブタイプです。
起立性調節障害の診断は「除外診断」が基本です。まず血液検査、心電図検査、超音波検査などで症状の原因となる他の病気(貧血、甲状腺疾患、心臓の病気など)がないかを調べます。器質的な疾患が否定された上で、以下のような問診チェックリスト(全11項目)を用いて評価します。
上記11項目のうち3つ以上に該当する場合、起立性調節障害が疑われます。サブタイプの詳細な分類には「新起立試験」や「ヘッドアップティルト試験」が用いられますが、これらは早朝や午前中に実施する必要があるため、入院施設での検査が一般的です。(※クリニックプラスでは、検査は行っておりません)
起立性調節障害の治療で最も基本となるのが生活習慣の見直しです。規則正しい生活リズムを整え、無理のない範囲から少しずつ改善していきましょう。毎日15〜30分程度の散歩やウォーキングなどの軽い運動は、自律神経のバランス改善と睡眠の質向上に効果的です。心理的・身体的ストレスの原因が明らかな場合は、可能な範囲でそれを取り除く工夫も重要です。
生活習慣の改善に加えて、以下のような工夫で症状の出現をある程度抑えることが可能です。
症状が重い場合には、非薬物療法に加えて薬物療法を併用します。血圧を上げる薬(ミドドリンなど)や交感神経の働きを調整する薬が処方されることがあります。漢方薬(半夏白朮天麻湯、苓桂朮甘湯など)が奏効するケースもあります。
起立性調節障害は一度改善しても再発する可能性があり、症状の波があるのが特徴です。定期的に医師と相談しながら治療を続け、症状に対する不安やストレスを軽減していくことが回復への近道です。
起立性調節障害は、周囲に理解されにくく、本人も「自分が悪いのでは」と感じてしまいがちな病気です。しかし、自律神経の機能異常に基づく明確な病態であり、適切な治療とケアで多くの方が症状の改善を実感されています。つらい症状が続いている方は、我慢せずに医療機関を受診しましょう。
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