診療内容 内科(発熱 / 感染症外来)

伝染性単核球症

伝染性単核球症(でんせんせい たんかくきゅうしょう)は、主にEBウイルス(エプスタイン・バールウイルス)への感染によって発症する感染症です。キスなどの唾液を介した接触でうつることが多いため、俗に「キス病」と呼ばれることもあります。発熱やのどの痛み、リンパ節の腫れ、強い疲労感が特徴で、風邪と症状がよく似ているため見過ごされやすい病気です。10代〜20代の若い世代に多くみられますが、適切に対処すれば数週間で回復するケースがほとんどです。ここでは、伝染性単核球症の原因、症状、検査・診断、治療法について詳しく解説します。

伝染性単核球症とは

伝染性単核球症は、ヘルペスウイルスの一種であるEBウイルスに感染することで引き起こされる感染症です。感染すると、血液中に「単核球」と呼ばれる種類の白血球が顕著に増加することから、この病名がつけられました。

EBウイルスは非常にありふれたウイルスで、成人までにほとんどの人が一度は感染するといわれています。乳幼児期に感染した場合は目立った症状が出ないことが多いのですが、思春期以降に初めて感染すると、伝染性単核球症として発症しやすくなります。予後は良好な疾患で、ほとんどの場合は数週間から数か月で自然に治癒します。

なお、まれにサイトメガロウイルスやHIVウイルスが原因で類似の症状を呈することもありますが、大半のケースはEBウイルスによるものです。

伝染性単核球症の原因と感染経路

EBウイルスは主に唾液を介して人から人へ感染します。代表的な感染経路はキスですが、それ以外にもさまざまな経路で感染する可能性があります。

  • キスによる直接的な唾液の接触
  • 咳やくしゃみ、会話の際に飛び散る唾液(飛沫感染)
  • 飲み物の回し飲みや食べ物の口移し
  • 箸・スプーン・コップなどの食器の共用
  • まれに輸血を介した感染

EBウイルスの潜伏期間は約4〜6週間と、一般的な風邪のウイルスと比べて長いのが特徴です。感染してから症状が出るまでにかなりの時間がかかるため、いつ・どこで感染したかを特定できないことも少なくありません。また、一度感染するとウイルスは体内に生涯潜伏し、免疫が低下した際に再活性化することがあります。

伝染性単核球症の症状

伝染性単核球症の代表的な症状は以下の4つです。

  • 長引く強い疲労感:日常生活に支障をきたすほどの倦怠感が続き、ベッドから起き上がるのもつらいと感じることがある
  • 38℃以上の発熱:1〜2週間以上にわたって高熱が持続することもある
  • のどの痛み:扁桃腺が赤く腫れ上がり、白い膿のようなものが付着することもある。飲み込むときに強い痛みを感じる
  • リンパ節の腫れ:特に首の後ろや側面のリンパ節が腫れて触れるようになる。左右ともに腫れることが多い

これら以外にも、脾臓(ひぞう)や肝臓が腫れたり、体に発疹が出たりすることがあります。肝機能の数値が一時的に上昇するケースもみられます。風邪だと思って市販薬で様子を見ていたが、何日経っても熱が下がらず不安になって受診される方が多い病気です。

伝染性単核球症の検査と診断

伝染性単核球症の症状は風邪や扁桃炎など、他の病気とよく似ているため、症状だけで確定診断することは困難です。確定診断には血液検査が不可欠です。

血液検査で確認する主な項目:

  • 白血球(特に単核球)の増加の有無と程度
  • 異型リンパ球の出現の有無
  • EBウイルスに対する各種抗体価(VCA-IgM、VCA-IgG、EBNA抗体など)の測定
  • 肝機能(AST、ALT)の異常がないかの確認

首のリンパ節が大きく腫れている場合は、伝染性単核球症を特に強く疑います。なお、抗体検査の結果が出るまでには1週間程度かかることがあるため、初回受診時には暫定的な診断のもとで対症療法を開始し、検査結果を待つという流れが一般的です。

伝染性単核球症の治療

EBウイルスに対する特効薬(抗ウイルス薬)は現時点では存在しません。治療は十分な安静と対症療法が基本です。

治療に使われる主な薬剤:

  • 解熱鎮痛薬(アセトアミノフェンなど):発熱や頭痛、関節痛の緩和
  • 抗炎症薬・トローチ剤:のどの痛みや腫れの軽減
  • 必要に応じて点滴による水分・栄養補給

発症後1〜2週間は疲労感がとりわけ強く出るため、無理をせず安静に過ごすことが最も大切です。のどの痛みが強い場合は固形物が食べにくくなるため、ゼリーやスープなど喉ごしのよい食事を工夫しましょう。水分摂取が難しいほどのどの痛みがひどい場合は、早めに医療機関を受診してください。

なお、伝染性単核球症に対して抗菌薬(特にアンピシリンやアモキシシリン)を使用すると、高い確率で薬疹(やくしん)が出現することが知られています。風邪や扁桃炎と誤診されて抗菌薬を処方されるケースもあるため、薬を服用した後に発疹が出た場合はすぐに医師に相談してください。

回復の目安と注意点

多くの場合、安静と対症療法により2〜4週間で症状は改善します。ただし、疲労感だけは数週間から数か月にわたって続くこともあります。解熱して倦怠感が和らいできたら、少しずつ日常の活動量を増やしていきましょう。

脾臓が腫れている場合は特に注意が必要です。脾臓は外部からの衝撃に弱く、腫れた状態で強い力が加わると破裂するリスクがあります。医師から脾臓の腫れを指摘された場合は、腫れが完全に引くまで激しい運動やコンタクトスポーツは控えてください。

また、まれにのどの腫れが悪化して気道が狭くなり、呼吸困難に陥ることがあります。息苦しさを感じた場合は、速やかに救急外来を受診してください。

こんなときは受診を

風邪だと思って市販薬で様子を見ていたが、発熱やのどの痛み・疲労感が1週間以上続いている、首のリンパ節が腫れて気になる、いつもの風邪と何か違う気がする、という場合は伝染性単核球症の可能性があります。血液検査で診断が可能ですので、気になる症状がある方は早めに医療機関を受診しましょう。クリニックプラスでは、発熱やのどの症状をはじめとする感染症の診療に対応しています。24時間LINEで予約が可能で、平日は夜20時まで、土日祝日も毎日診察しています。長引く風邪のような症状でお困りの方は、どうぞお気軽にご相談ください。

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