診療内容 内科(発熱 / 感染症外来)

急性肝炎

急性肝炎は、肝臓に急激な炎症が起こり、肝機能が一時的に障害される病気です。初期にはかぜのような症状が現れることが多く、発熱や倦怠感だけでは急性肝炎と気づきにくいのが特徴です。症状が進むにつれて、眼の白い部分や皮膚が黄色くなる「黄疸(おうだん)」が現れ、そこで初めて肝臓の異常に気づくケースも少なくありません。多くの場合は適切な安静と治療で回復しますが、まれに重症化して劇症肝炎に至ることもあるため、早めの検査・診断が重要です。ここでは、急性肝炎の原因、症状、検査、治療について詳しく解説します。

急性肝炎とは

肝炎とは、肝臓に炎症が起きている状態の総称です。肝炎には「急性肝炎」と「慢性肝炎」の2種類があります。急性肝炎は肝機能の障害が6か月以内に改善するものを指し、慢性肝炎は6か月以上にわたって肝機能の異常が持続するものを指します。

急性肝炎の原因としては肝炎ウイルスへの感染が最も多いですが、薬の副作用によって起こる薬剤性肝障害や、自分の免疫が誤って肝臓の細胞を攻撃する自己免疫性肝炎が原因となることもあります。

急性肝炎の経過はほとんどの場合良好で、安静にしていれば自然に回復に向かいます。しかし、まれに炎症が急激に悪化して「劇症肝炎(げきしょうかんえん)」と呼ばれる致命的な状態に進行することがあります。劇症肝炎は肝臓の広範な壊死を伴い、意識障害や出血傾向など命に関わる症状が現れるため、早期発見・早期治療が不可欠です。

ストレスは急性肝炎に関係がある?

ストレスそのものが直接的に急性肝炎を引き起こすことはないと考えられています。ただし、過度なストレスからアルコールの摂取量が増えたり、食生活が乱れたりすることで、肝臓に負担がかかり、肝機能が低下する可能性はあります。日頃からストレスを適切にケアし、肝臓をいたわる生活習慣を心がけることが大切です。

急性肝炎の原因

急性肝炎の原因として最も多いのは、肝炎ウイルスへの感染です。肝炎ウイルスにはA型・B型・C型・D型・E型の5種類が確認されており、それぞれ感染経路や特徴が異なります。

肝炎ウイルスの種類と感染経路

肝炎ウイルスの型主な感染経路特徴
A型経口感染(汚染された飲食物)慢性化しない。衛生状態の悪い地域への渡航で感染リスクが高まる
B型血液・体液を介した感染成人の急性感染はほとんど治癒するが、まれに劇症化する。母子感染や乳幼児期の感染では慢性化しやすい
C型血液を介した感染慢性化しやすい(約70%)。肝硬変や肝がんに進行するリスクがある
D型血液を介した感染(B型と同時または重複感染)B型肝炎ウイルスが存在する場合のみ感染する。日本での報告は少ない
E型経口感染(加熱不十分な肉類など)豚・猪・鹿の生肉や加熱不十分な肉が原因になることがある。妊婦は重症化リスクが高い

A型・E型肝炎は、ウイルスに汚染された食べ物や飲み物を口にすることで感染します(経口感染)。A型は衛生環境の整っていない国や地域への渡航時に注意が必要です。E型は、豚・猪・鹿などの肉を十分に加熱せずに食べることで感染するケースが国内でも報告されています。

B型・C型・D型肝炎は、血液や体液を介して感染します。カミソリや歯ブラシの共有、滅菌が不十分なピアスの穴開け、針や注射器の使い回しなどが感染のリスクとなります。また、コンドームを使用しない性行為を通じた感染にも注意が必要です。

ウイルス以外の原因

  • 薬剤性肝障害:処方薬やサプリメント、漢方薬などが肝臓に負担をかけ、炎症を引き起こすことがある。新しい薬を飲み始めてから体調の変化を感じた場合は、早めに医師に相談する
  • 自己免疫性肝炎:本来は体を守るはずの免疫機能が、誤って自分自身の肝臓の細胞を攻撃してしまうことで炎症が起こる。中年の女性に多いとされている
  • アルコール:大量の飲酒が長期間にわたって続くと肝臓にダメージが蓄積する。急性のアルコール性肝炎は、短期間での大量飲酒でも起こり得る

急性肝炎の症状

急性肝炎の初期症状はかぜとよく似ており、自分では気づきにくいのが大きな特徴です。

初期症状(かぜに似た症状)

  • 発熱(37〜38℃程度のことが多い)
  • 頭痛・関節痛
  • のどの痛み
  • 全身のだるさ・倦怠感
  • 食欲不振・吐き気

これらの症状は数日から1週間程度続くことがあり、「なかなかかぜが治らない」と感じて受診するケースが多くみられます。

進行した場合の症状(黄疸)

肝臓の炎症がさらに進行すると、黄疸が現れます。黄疸は、肝臓で処理しきれなくなったビリルビンという黄色い色素が血液中に増加することで起こります。

  • 眼球の白い部分(眼球結膜)が黄色くなる:最も気づきやすいサイン
  • 皮膚が黄色みを帯びる:全身の皮膚が黄色くなる
  • 尿の色が濃くなる:褐色からさらに暗い色へと変化する
  • 便の色が薄くなる:灰白色に近くなることがある

黄疸は自分では気づきにくいことがあるため、鏡で眼の白い部分の色を確認したり、トイレで尿の色をチェックしたりする習慣をもつとよいでしょう。かぜ症状が長引いている方で、これらの症状に心当たりがある場合は、早めに医療機関を受診することをおすすめします。

急性肝炎の検査

急性肝炎の診断には、血液検査が中心的な役割を果たします。

血液検査で確認する主な項目:

  • AST(GOT)・ALT(GPT):肝臓の細胞が破壊されると血液中に放出される酵素。急性肝炎ではこれらの値が顕著に上昇する
  • γ(ガンマ)-GTP:肝臓や胆道の障害を反映する酵素
  • ビリルビン:黄疸の程度を示す指標。肝機能が低下すると処理しきれないビリルビンが血中に増加する
  • PT(プロトロンビン時間):血液の凝固機能を評価する。肝機能が著しく低下すると凝固因子の産生が減少し、出血傾向がみられる
  • 各種肝炎ウイルスマーカー:A型〜E型の各ウイルスに対する抗体や抗原を調べ、原因ウイルスの種類を特定する

これらの検査はすべて採血で実施できます。症状や検査結果に応じて、腹部超音波検査(エコー)やCT検査で肝臓の状態を画像で確認することもあります。気になる症状がある場合は、早めに検査を受けるようにしましょう。

急性肝炎の治療

急性肝炎の治療は、安静と食事療法が基本です。特効薬で治すというよりも、肝臓に負担をかけない環境を整え、自然回復を待つことが治療の中心になります。

  • 安静:横になって安静にすることで肝臓への血流が増加し、回復が促進される
  • 食事療法:肝臓の負担を軽減するため、タンパク質の摂取を適度に制限し、糖質を中心にエネルギーを確保する
  • 禁酒:アルコールは肝臓に直接的な負担をかけるため、治療中は完全に禁酒する
  • 点滴:食欲不振で十分な経口摂取ができない場合は、点滴でブドウ糖やビタミンなどの栄養を補給する

多くのケースでは薬による治療は必要ありませんが、B型肝炎で重症化の傾向がみられる場合などは、医師の判断で抗ウイルス薬が使用されることがあります。

入院期間の目安

急性肝炎の程度によっては入院が必要になることがあります。肝機能が回復するまでには時間がかかるため、入院期間は症状や障害の程度によりますが、おおむね2週間〜1か月程度が目安です。退院後も、肝機能の数値が完全に正常化するまでは定期的な通院と経過観察が必要です。

急性肝炎の予防

急性肝炎を予防するためには、原因に応じた対策が重要です。

  • A型・E型(経口感染):海外渡航時は生水・生ものを避ける。肉類は中心部まで十分に加熱してから食べる。A型肝炎にはワクチンがあり、渡航前の接種が推奨される
  • B型・C型・D型(血液・体液感染):カミソリや歯ブラシの共有を避ける。ピアスやタトゥーは衛生管理の行き届いた施設で行う。性行為の際はコンドームを正しく使用する。B型肝炎にはワクチンがあり、予防接種が有効
  • 薬剤性・アルコール性:新しい薬やサプリメントを開始した際は体調の変化に注意する。アルコールは適量を守り、休肝日を設ける

まとめ

急性肝炎は、初期にはかぜと似た症状で始まるため気づきにくい病気ですが、黄疸や尿の色の変化がみられた場合は、速やかに医療機関を受診しましょう。血液検査で肝機能の状態や原因ウイルスの種類を確認することができます。多くの場合は安静と食事療法で回復しますが、重症化のリスクもあるため、自己判断で放置せず早めに診断を受けることが大切です。

クリニックプラスでは、発熱やかぜ症状の診療はもちろん、血液検査による肝機能の評価にも対応しています。重症例や入院が必要な場合は、連携する大学病院・総合病院へ速やかにご紹介します。24時間LINEで予約が可能で、平日は夜20時まで、土日祝日も毎日診察しています。かぜが長引いている方や、体のだるさが気になる方は、お気軽にご相談ください。

一覧へ戻る