皮膚に痛みがあると、何かの病気なのか、様子を見て大丈夫なのか‥と心配になりますよね。皮膚に痛みを生じる疾患はさまざまあり、早期に治療を行わないと悪化したり治りにくくなったりしてしまう場合も少なくありません。皮膚の痛みの症状をメインとする疾患にはどのようなものがあるのか、その特徴や治療、受診の目安について解説します。
皮膚の痛みを生じる疾患
皮膚の痛みの症状をメインとする疾患には以下のようなものがあります。
- 帯状疱疹(たいじょうほうしん)
- 切り傷/刺し傷
- ひょうそ(化膿性爪囲炎)
- 粉瘤(ふんりゅう)
- 日焼け
- やけど(熱傷)
- 口唇ヘルペス/性器ヘルペス
- 皮脂欠乏性湿疹
- しもやけ(凍瘡)
- 蜂窩織炎(ほうかしきえん)
- 皮下膿瘍
帯状疱疹(たいじょうほうしん)
帯状疱疹は、水ぼうそうの原因と同じ水痘(すいとう)・帯状疱疹ウイルスによって発症します。水ぼうそうにかかったことのある人なら、誰でも発症する可能性があります。
体の左右どちらかに、ピリピリとした神経痛のような痛みが生じ、その後、水ぶくれを伴う赤い発疹が神経の流れに沿って帯状に現れるのが特徴です。痛みは、かゆみやしびれのように感じられることもあれば、針で刺したようにピリピリ、チクチクとした痛みに感じたり、焼けるような痛みに感じたりと、人によって程度はさまざまです。症状は全身のどこにでも出ることがありますが、左右片側だけである点が特徴です。治療には抗ウイルス薬や痛み止めを使います。抗ウイルス薬は発症後72時間以内に飲み始めるのが望ましいとされています。放置すると重症化したり合併症を引き起こしたりすることもあるため、早めに医療機関を受診するようにしましょう。
切り傷/刺し傷
何かで皮膚を切ったり刺したりしてしまったとき、出血とともに痛みを生じます。傷口を流水でしっかり洗い、清潔なガーゼやハンカチを当てて手で圧迫する応急処置で止血できる場合もありますが、次のような場合、感染症を起こしたり血管が傷ついたりしている可能性があるため、速やかに医療機関を受診するようにしましょう。
- 痛みが悪化する、傷口が熱を持つ、腫れる
- クギやガラスなどの異物が深く刺さったとき
ひょうそ(化膿性爪囲炎)
爪の周りの小さな傷から細菌などが侵入し、爪の根元や横に膿がたまったり腫れたりすることで痛みを生じます。深爪や巻き爪の人、マニキュアやジェルネイルを頻繁にする人、指しゃぶりや爪を噛む、ささくれを引っぱるといった癖がある人は特に発症しやすいため注意が必要です。
治療には原因となっている病原体に合わせた薬を使用します。膿がたまっている場合、自分で膿を出そうとするとさらに状態が悪化する可能性があります。必ず医療機関を受診し、必要な処置や治療を受けるようにしてください。
粉瘤(ふんりゅう)
粉瘤は、皮膚の下にできた袋のような嚢腫(のうしゅ)です。角質や皮膚など、通常であれば皮膚から自然と剥がれ落ちるはずのものが、袋の中に留まることで発症します。半球状に硬く盛り上がり、頂上に袋の入り口である穴があるのが特徴です。粉瘤は体のあらゆる場所に生じます。
多くの場合痛みはありませんが、炎症が起こると膿がたまったり痛みを生じたりします。
粉瘤の根治的治療では、皮膚の下の嚢腫ごと手術によって取り除きます。対症的に膿を取り除く処置をすることもあります。痛みが無い場合は放っておいてもそれほど問題ありませんが、大きくなってきたり、痛みや腫れを伴ったりする場合には自己処理はせず、医療機関を受診しましょう。粉瘤ではなく別の病気である可能性もありますので、できものが生じた際には一度診察を受けておくことをおすすめします。
日焼け
紫外線を浴びすぎたとき、日焼けが生じます。日焼けが起きると、皮膚が赤くなってヒリヒリと痛み、ひどい場合には水ぶくれが現れたり、発熱や悪寒、脱力などの症状が出たりします。日焼けして数日経つと、日焼けした部分の皮膚がむけて、その部分がかゆくなることもあります。皮膚がむけた部分は感染を起こすリスクがあるため、注意が必要です。
水泡ができたり感染が起きたり、痛みが強い場合には、医療機関で治療を行う必要があります。
やけど(熱傷)
皮膚や粘膜が熱によってダメージを受けることをやけど(熱傷)といいます。高熱のものに触れることで起きるやけどの他、使い捨てカイロや電気毛布などに長時間接触することで起こる低温やけども増えています。
皮膚が赤くなり、ヒリヒリとした痛みや熱感を生じる程度のものから、水ぶくれができて強い痛みを生じるものまで、程度はさまざまです。
流水での冷却を行う応急処置は大切ですが、一見軽いやけどでも実は深い場合もあり、自己判断は禁物です。感染を起こしたり痕が残ったりすることもあるため、応急処置をした後は速やかに医療機関を受診するようにしてください。
口唇ヘルペス/性器ヘルペス
単純ヘルペスウイルス(HSV)が原因の感染症です。くしゃみや咳、キスや性交渉などでうつり、口唇ヘルペスでは唇や小鼻の周辺、頬に、性器ヘルペスでは性器や肛門の周辺に症状が出ます。ヒリヒリとした痛みやムズムズした違和感から始まり、赤みが出て水ぶくれを伴う発疹がいくつもできます。軽症例では、発疹が徐々にカサブタとなり、1週間ほどで自然に治ることが多いですが、重症例では、水ぶくれが破れることで強い痛みを生じることがあります。
治療には外用薬や内服薬を使います。症状がある場合には、皮膚科を受診するようにしましょう。
皮脂欠乏性湿疹
皮膚が乾燥しているところに何らかの刺激が加わり、炎症を起こすことでできる湿疹です。好発部位は足のスネ、太もも、腰回り、わき腹などです。湿疹は痒みを伴いますが、掻くと悪化して広がり、湿疹が盛り上がったり水疱を形成したりして痛みが出るようになってしまうこともあります。
治療には保湿剤やステロイドなどを使う必要があります。悪化させないためにも、一度医療機関を受診するようにしてください。
しもやけ(凍瘡)
しもやけ(凍瘡)は、寒暖差の激しい環境で血流障害を起こすことにより発症します。好発部位は手や足先、耳たぶなどです。皮膚が赤色や赤紫色に腫れあがり、痛痒さを伴います。ひどい場合には水疱ができたり、水疱が破れてただれてしまったりします。
1~3週間で治ることが多いですが、症状がひどく日常生活に支障を来すような場合は医療機関を受診して治療を受けましょう。また、季節に関係なくしもやけの症状が出たり、治りにくかったりする場合には別の病気が隠れている可能性もあります。そのような場合も一度受診することをおすすめします。
蜂窩織炎(ほうかしきえん)
蜂窩織炎は、小さな傷から細菌が侵入し、皮下の深い部分で繁殖することで発症する感染症です。全身のあらゆる部位で発症する可能性がありますが、比較的多いのは足の蜂窩織炎です。皮膚が赤く腫れたり、熱を持って痛みが出たりします。膿をもつこともあり、発熱やだるさといった症状が出ることも少なくありません。アトピーのある方や、免疫力が低下している方で発症しやすくなります。
蜂窩織炎は抗菌剤による治療が必要になります。悪化する前に受診し、適切な処置を受けるようにしてください。
皮下膿瘍
細菌感染による炎症が原因で皮膚の下に膿がたまり、しこりやこぶのようなものができた状態です。疼痛や圧痛、腫れや熱感を伴います。
小さな膿瘍であれば無治療でも治ることがありますが、強い痛みや腫れを伴う場合には、皮膚を切開して膿を出す手術が適応になります。
気になる症状があればまず受診を
皮膚の痛みを伴う病気は、自然に治るものもありますが、放置することで悪化したり治りにくくなったりするものも少なくありません。また、別の病気が隠れている可能性もあります。気になる症状がある場合には、一度受診することをおすすめします。