唇や性器の周辺に、痛みやかゆみのある小さなブツブツができたことはありますか?
もしかすると、「ヘルペスウイルス」が原因の感染症かもしれません。口唇ヘルペスや性器ヘルペスについて、原因を解説するとともに、再発予防のために気をつけたいことをご紹介します。
ヘルペスウイルスとは
まずは、ヘルペスウイルスについて特徴を解説します。
口唇ヘルペス・性器ヘルペスは単純ヘルペスウイルスが原因
口唇ヘルペスや性器ヘルペスは、単純ヘルペスウイルス(HSV)が原因の感染症です。HSV-1が主に唇の周辺、HSV-2が主に性器周辺に感染することが多いですが、性器ヘルペスの7割ほどはHSV-1が原因ともいわれており、この2つを区別する意味はあまりありません。
実際には、感染する部位は唇と性器以外にもさまざまです。目の周りなど顔のあらゆる部位、指先、お尻など全身のどこにでも感染する可能性があります。
HSVに一度感染すると、生涯にわたってウイルスが体内に潜伏し続けます。「水痘帯状疱疹(たいじょうほうしん)ウイルス」もヘルペスウイルスの仲間ですが、口唇ヘルペスや性器ヘルペスとは無関係です。
感染経路は「接触感染」
HSVは、主に接触感染します。水疱(水ぶくれ)などの病変部位、ウイルスに汚染された指や器具、唾液などに直接触れることで人から人へと感染が広がるのです。水疱の中にはウイルスがたくさん詰まっていますので、水疱には触れないようにし、触れてしまったら手を洗いましょう。
飛沫感染することもあります。唾液中にヘルペスウイルスが含まれていた場合、くしゃみや咳などを介してウイルスが広がり、皮膚や粘膜に付着すると感染が起こるかもしれません。
口唇ヘルペス
口唇ヘルペスの症状や治療法についてご紹介します。
口唇ヘルペスの症状
口唇ヘルペスは、唇や小鼻の周辺、頬などによく症状が現れます。大人の約30%の方で口唇ヘルペス発症経験があるといわれるほど、よくある皮膚疾患です。
ヒリヒリ・ムズムズとした違和感から始まり、赤みが出て、水疱がいくつもでき、徐々にカサブタのようになります。たいていは1週間ほどで自然に治癒しますが、治療をおこなうことで治癒を早めることが可能です。
口唇ヘルペスの治療法
口唇ヘルペスは、抗ウイルス薬の外用薬か内服薬での治療が基本です。
軽症であれば、外用薬だけで対処することもできます。内服薬はなるべく早くから飲み始めた方が効果的です。症状が途中でよくなったとしても、きちんと処方された日数分を飲み切ってください。
市販薬は「口唇ヘルペスの再発」のみ
口唇ヘルペスは、何度も繰り返し再発する方が多いです。皮膚科に行きたいけど時間がない、というときには、市販の外用薬を使ってみてもよいでしょう。
ただし、初発の方は市販薬を購入せず、皮膚科にかかってください。口唇ヘルペス以外の疾患の可能性がないか、確認する必要があるためです。
性器ヘルペス
性器ヘルペスの症状や治療法についてご紹介します。
性器ヘルペスの症状
性器ヘルペスは、性器や肛門の周辺を中心に症状が現れます。
かゆみや不快感から始まり、赤みや腫れを伴うようになります。その後小さな水ぶくれが多数でき、水ぶくれが破れるとひどい痛みが生じて、排尿や歩行も難しくなることが少なくありません。頭痛や高熱が生じることもあります。
一般的に、男性よりも女性の方が痛みや不快感などの症状が悪化しやすいです。再発の場合は初発のときよりも症状が軽い傾向にあります。
性器ヘルペスの治療法
性器ヘルペスは、抗ウイルス作用のある外用薬か内服薬で治療をおこないます。症状がひどい場合には、入院して点滴治療をする場合もあります。
再発抑制療法(PIT;Patient Initiated Therapy)
何度もヘルペスが再発する方や、再発時の症状が重い方には、あらかじめお薬を渡しておき、症状が出たときに内服を開始してもらう「PIT(Patient Initiated Therapy)」をおこなうこともあります。なるべく早く薬を飲み始めた方が、治療の効果が十分に得られるためです。
年に6回以上再発する場合には、「再発抑制療法」を検討します。1日1回、1錠を毎日内服する治療です。
再発抑制療法をおこなうことで、約60〜70%の方は再発を抑えることが可能です。しかし、1年間の再発抑制療法のあとさらに再発した場合は、患者さまと相談の上、「再発抑制療法」を繰り返すこともあります。
ヘルペスによる感染症を起こす原因と対策
ヘルペスによる感染症を繰り返さないために、原因と対策についてお伝えします。
心身のストレス
寝不足や疲れ、風邪、精神的なストレスなどによって口唇ヘルペスや性器ヘルペスを起こすことがあります。再発も、心身のストレスが関与することが多いです。
なるべく体に負担のかかる生活をしないよう、休息を意識しましょう。
また、過度の日焼けや、歯科治療などの普段受けない刺激が再発のきっかけとなることもあります。こうしたきっかけのあとに皮膚の違和感が出てきた場合は、早めに皮膚科を受診しましょう。
キスや性交渉でうつる
ヘルペスウイルスは、接触感染でうつるとお伝えしました。患部(水ぶくれ)に直接触れての感染には注意が必要です。
口唇ヘルペスの症状がある場合はキスやコップの使い回しを控えましょう。
性器ヘルペスの場合、コンドームをしていても、100%感染を避けることはできません。性器ヘルペスの症状があるときは、性交渉を避けましょう。
ヘルペスは症状がなくても感染する可能性があります。
物を介した接触
ヘルペスウイルスは、患部に直接触れること以外に、物を介した感染の可能性もあります。家族に感染が広がらないよう、注意してください。
患部が触れたタオルや便座を介して感染することがあります。タオルはその都度洗濯し、共有しないようにしましょう。ヘルペスウイルスはアルコール消毒で感染力を失いますので、便座は使用後にアルコール消毒をすると安心です。箸や食器などは、洗剤で洗えば問題ありません。
同じ湯船を使うことで感染する可能性は低いです。バスチェアを使っているご家庭は、バスチェアの消毒をしましょう。
クリニックプラスでのヘルペスの診療の流れ
①問診
いつごろから、どこに、どういうタイミングで、どのような症状がでているのかを聞いていきます。LINEの事前問診にお答えいただくと、診療がスムーズに行われます。
②診察
患部の診察を行います。皮膚疾患の診断は視診が非常に重要です。医師が丁寧に診察を行っていきます。
③治療
外用薬や内服薬を用いて治療をしながら、日々の生活での注意点や、予防として行うべきことなどについて指導を行っていきます。
ヘルペスはありふれた疾患ですが、見た目や神経症状が不快に感じることが多いと思います。症状でお困りの方は早めに医療機関を受診するようにしましょう。クリニックプラスは、平日は夜の8時まで、土日祝日も毎日営業しております。是非一度ご相談にいらしてください。