コラム

WPW症候群

  • 循環器専門外来
  • 不整脈

WPW症候群(ウォルフ・パーキンソン・ホワイト症候群)は、生まれつき、心臓に正常な電気の通り道(刺激伝導系)に加えて、もう1本の余分な通り道(副伝導路)が存在することが原因で起きる不整脈の一種です。この副伝導路は「ケント束」とも呼ばれ、通常の電気の流れとは異なるルートで心房と心室を直接つないでいます。副伝導路に電気信号が流れ込むことで不整脈の発作が引き起こされ、突然始まる激しい動悸の原因となることがあります。

WPW症候群(WPW症候群)は、約0.1〜0.3%程度にみられる比較的まれな不整脈です。

先天的に副伝導路(ケント束)を有することにより発症しますが、そのすべてが臨床的な頻拍を起こすわけではなく、無症状のまま経過する方も多くみられます。

実際に治療や対応が必要となるのは、その一部に限られます。

多くの方は健康診断の心電図検査で初めて指摘され、生涯にわたって不整脈の発作が起きない方も少なくありません。

WPW症候群の原因

WPW症候群の最大の原因は先天的なものです。胎児の心臓が発育する過程で、心房と心室の間に本来消失すべき筋肉の「橋」(副伝導路)が残ってしまうことで発生します。ほとんどのケースは生まれつきのもので、成長後に新たに発症するということは通常ありません。

まれに、肥大型心筋症や心臓の炎症性疾患に合併してWPW症候群のパターンが出現することもありますが、頻度としてはごく少数です。WPW症候群自体が遺伝性であることは一般的ではありませんが、家族内で複数の方にWPW症候群が見つかるケースもまれに報告されています。

WPW症候群の症状

無症状のケース

WPW症候群と診断されても、副伝導路に電気信号が流れ込まなければ不整脈の発作は起こりません。心電図では「デルタ波」や「PR間隔の短縮」といった特徴的な異常所見が認められるものの、日常生活にまったく支障がないという方も多くいらっしゃいます。このような場合は、積極的な治療を行わず経過観察のみとなることがほとんどです。

動悸発作がある場合

副伝導路に電気信号が流れ込み、正常な伝導路と副伝導路の間を電気信号が旋回(リエントリー)すると、不整脈が発生して以下のような症状が現れます。

  • 突然始まり突然終わる激しい動悸
  • 胸の不快感・圧迫感
  • 息切れ
  • めまい・ふらつき
  • 失神(まれ)

動悸発作は特にきっかけなく突然起こるのが特徴で、前触れなしに脈が急激に速くなります。発作がおさまった後はケロッと元に戻ることが多いですが、発作のたびに大きな不安やストレスを感じる方も少なくありません。

WPW症候群の診断・検査

心電図検査

WPW症候群の診断において最も基本的かつ重要な検査です。安静時の心電図で「デルタ波」(QRS波の立ち上がりが緩やかになる特徴的な所見)と「PR間隔の短縮」が確認されれば、WPW症候群と診断されます。副伝導路のおおよその位置も心電図の波形から推定できることがあります。健診で心電図異常を指摘された方は、健診結果を持参のうえ循環器内科を受診してください。

ホルター心電図

動悸発作が頻繁に出ている場合は、数日間心電図を装着して日常生活中の不整脈の頻度やパターンを評価します。発作がいつ、どのくらいの頻度で起きているのかを正確に把握するために有用です。

心臓超音波検査(心エコー)

心臓に構造的な異常がないかを確認する目的で行います。WPW症候群自体は心臓の構造に異常をきたす疾患ではありませんが、まれに心筋症などを合併していることがあるため、スクリーニングとして実施されます。(※心エコー検査は、医療機関によって受けられない場合があります。詳しくは各院のお問い合わせよりご相談ください。)

WPW症候群の治療法

経過観察

心電図で異常は見られるものの、不整脈の発作がまったくない方や、発作があっても頻度が少なく日常生活に支障がない方は、積極的な治療を行わずに経過観察とすることが多いです。定期的な心電図検査で状態をモニタリングしていきます。

バルサルバ手技(迷走神経刺激法)

動悸の発作が起きた際に、ご自身で試せる応急処置です。深く息を吸ったあと強くいきむ「バルサルバ手技」、冷たい水を飲む、氷水に顔をつけるなどの方法で迷走神経を刺激すると、発作がおさまることがあります。発作が始まってすぐに行うほど効果的です。

薬物療法

バルサルバ手技で発作がおさまらない場合は、ATP製剤(アデホスコーワ)の急速静注で不整脈を停止させます。これは一瞬だけ心臓の電気の流れを止めてリセットする方法で、即効性があります。全身が一瞬カッと熱くなるような感覚がありますが、効果は高いです。定期内服としてはシベノールやサンリズムなどの抗不整脈薬が用いられることもあります。

なお、WPW症候群に心房細動が合併した場合には、ワソラン(ベラパミル)やジギタリスの使用は禁忌です。これらの薬は副伝導路を介した電気信号の伝導を促進させてしまい、致死的な不整脈(心室細動)を引き起こす恐れがあるため、自己判断での薬の使用は避けてください。

電気的除細動(カルディオバージョン)

薬を使っても不整脈が止まらず、血圧が低下するなど全身の状態が不安定な場合には、外部から電流を流して心臓の電気信号をリセットする「電気ショック」が行われます。

カテーテルアブレーション(根治治療)

WPW症候群の根本的な治療法がカテーテルアブレーションです。足の付け根の血管からカテーテルを挿入し、電気生理学的検査で副伝導路の正確な位置を特定したうえで、高周波で焼灼します。副伝導路を焼き切ることができれば、不整脈の発作が起こらなくなり、再発の可能性も低いとされています。発作を繰り返している方や、日常生活に支障が出ている方には積極的に推奨される治療法です。クリニックプラスでは、カテーテル治療において実績のある専門医療機関と連携体制を構築しております。高度な治療が必要な場合には、適切な医療機関へ迅速にご紹介いたします。

WPW症候群と心房細動の合併リスク

WPW症候群で最も注意すべき合併症が、心房細動との合併です。通常の心房細動では、房室結節がフィルターとなって心房からの異常な電気信号をある程度ブロックしますが、WPW症候群では副伝導路を介して大量の電気信号がフィルターを経由せずに心室に伝わってしまう可能性があります。この状態は心室の拍動が極端に速くなり、最悪の場合は心室細動という致死的な不整脈に至ることもあります。WPW症候群と診断されている方は、心房細動の合併に備えた管理が必要です。定期的な循環器専門医の受診が大切であり、新たな動悸や脈の異常を感じた場合にはすぐに医療機関を受診してください。

WPW症候群が気になる方へ

WPW症候群は多くの場合、命に関わることのない疾患ですが、動悸発作を繰り返す方にとっては大きなストレスの原因となります。また、ごくまれに心房細動が合併した場合は致死的な不整脈に至る危険性もゼロではありません。健診で心電図異常を指摘された方、突然始まる動悸にお悩みの方は、循環器内科で一度きちんと評価を受けておくことをおすすめします。

クリニックプラスの循環器専門外来では、循環器内科の専門医が丁寧に問診・検査を行い、お一人おひとりの状態に合わせた治療方針をご提案します。カテーテルアブレーション治療が必要と判断された場合は、治療実績の豊富な大学病院や総合病院へ速やかにご紹介いたします。LINEで24時間ご予約が可能で、平日は夜20時まで、土日祝日も診察しておりますので、安心してご相談ください。

一覧へ戻る