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バセドウ病
コラム
「眠い」「疲れがとれない」「なんとなくだるい」——。こうした体の不調が長く続く場合、橋本病が隠れている可能性があります。橋本病は甲状腺に慢性的な炎症が起きることで甲状腺ホルモンが不足し、全身にさまざまな影響を及ぼす自己免疫疾患です。成人女性に多い病気ですが、症状がうつ病や更年期障害と似ているため、見過ごされやすいのが特徴です。放置すると動脈硬化を進行させたり妊娠に悪影響を及ぼしたりすることもあります。ここでは橋本病の原因・症状・検査・治療について詳しく解説します。
橋本病は、のどぼとけの下にある甲状腺に慢性的な炎症が起きる病気で、慢性甲状腺炎とも呼ばれます。甲状腺は蝶のような形をした小さな臓器で、心拍数や体温の調整、エネルギー代謝をコントロールする甲状腺ホルモンを分泌しています。炎症そのものだけでは症状が出ないこともありますが、炎症が進んで甲状腺の機能が低下し、体に必要な量のホルモンを作れなくなると、さまざまな症状が現れはじめます。日本では1912年に橋本策博士が世界で初めて報告した疾患であり、「橋本病」という名前は日本人医師に由来しています。
橋本病は自己免疫疾患のひとつです。本来は外敵から体を守る免疫システムに異常が生じ、自分自身の甲状腺を攻撃する自己抗体(抗サイログロブリン抗体・抗TPO抗体)がつくられることで慢性的な炎症が引き起こされます。なぜ免疫異常が起こるのかは完全には解明されていませんが、遺伝的素因に加え、ストレスや感染症、ヨウ素の過剰摂取などの環境因子が関与していると考えられています。
30〜40歳代の女性に特に多く、男女比は約1:20〜30と、甲状腺疾患の中でも女性の割合が際立って高い病気です。家族に甲状腺疾患がある方は発症リスクが高くなるため、定期的な検査を受けておくと安心です。
甲状腺ホルモンが不足すると、体の代謝が低下し次のような症状が現れます。
| カテゴリ | 主な症状 |
| 全身症状 | 倦怠感、眠気、体の冷え、体重増加、筋力低下 |
| 消化器 | 便秘 |
| 循環器 | 脈が遅くなる(徐脈) |
| 皮膚・外見 | 皮膚の乾燥、むくみ、脱毛(頭髪・眉毛)、首の腫れ |
| 精神・神経 | うつ状態、無気力、物忘れ、かすれ声 |
| 女性特有 | 月経過多(生理の出血量が増える) |
これらの症状はうつ病や更年期障害、高齢者では認知症とも間違われやすく、原因がわからないまま過ごしている方も少なくありません。「なんとなく体調が悪い」状態が続いている場合には、一度検査を受けてみることが大切です。
橋本病が疑われる場合、以下の検査を行います。
血液検査は甲状腺疾患の診断で最も基本的かつ重要な検査です。採血だけで行えるため体への負担が少なく、まずはこの検査から始めるのが一般的です。
橋本病と診断されても、甲状腺ホルモンの値が正常範囲内であれば、すぐに治療を開始せず定期的な血液検査で経過を観察します。甲状腺機能が低下してホルモンが不足している場合に治療を開始します。甲状腺に炎症があっても約60〜70%の方は甲状腺機能が正常に保たれているとされており、その場合は半年〜1年ごとの検査で経過をみていきます。
治療にはレボチロキシン(チラージン)という内服薬を使用します。この薬は体内で作られる甲状腺ホルモンと同じ成分であるため、適切な用量を守っていれば副作用の心配はほとんどありません。少量から開始して少しずつ増量し、血液検査の結果を見ながら最適な用量を決めていきます。服用開始から1〜4か月ほどで症状の改善が実感できることが多いです。
橋本病の炎症自体を完全になくすことは現時点では難しいとされていますが、レボチロキシンで甲状腺ホルモンを適切に補うことで、症状をコントロールしながら日常生活を問題なく送ることができます。定期的な通院と血液検査を続けることが大切です。
橋本病の方が日常生活で意識しておきたいポイントをいくつかご紹介します。
甲状腺ホルモンは胎児の発育に欠かせないホルモンです。ホルモンが不足した状態のままだと、不妊や流産、早産、赤ちゃんの発育不良につながる可能性があります。妊娠を希望される方は、妊娠前から甲状腺の機能をチェックし、必要があれば治療を開始しておきましょう。妊娠中はホルモンの必要量が変化するため、こまめに血液検査を行いながら薬の用量を調整します。妊娠中・妊娠前の管理は甲状腺専門の医療機関での対応がより安心です。
橋本病は適切な診断と治療で十分にコントロールできる病気です。原因不明の倦怠感や冷え、むくみなどが続いている方は、血液検査で甲状腺の状態を調べてみてください。
クリニックプラスでは血液検査、甲状腺エコー、心電図検査に対応しており、橋本病の診断から投薬治療まで一貫してサポートしています。平日は夜20時まで、土日祝も毎日診察を行っていますので、お忙しい方でも無理なく通院いただけます。ご予約はLINEから24時間受け付けています。少しでも気になる症状がありましたら、まずはお気軽にご相談ください。