コラム

慢性心不全

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少し動いただけで息が上がる、体がむくむ、だるさが抜けない。こうした症状は慢性心不全のサインかもしれません。慢性心不全はゆっくり進行するため初期には気付きにくく、自覚症状が出た時点でかなり悪化していることも珍しくありません。予後を改善するためには早期発見と適切な治療の開始が何よりも大切です。ここでは慢性心不全の特徴、原因、ステージ分類、検査、最新の治療法まで詳しくお伝えします。

慢性心不全とは

心不全のおさらい

心臓は全身に血液を送り出すポンプの役割を担っています。何らかの理由でこのポンプ機能が低下し、体が必要とする血液を十分に送り出せなくなった状態が心不全です。心不全は病名ではなく、さまざまな心臓の病気の結果として起こる症候群と考えると理解しやすいでしょう。

慢性心不全の特徴と急性心不全との違い

心不全は発症の速さから急性心不全と慢性心不全に分けられます。急性心不全が数時間から数日という短期間で急激に発症するのに対し、慢性心不全は数週間から数か月、場合によっては数年かけてゆっくりと症状が進行します。心臓に持続的な負担がかかり続けることで心筋が徐々に疲弊していくのが特徴です。なお、慢性心不全が急激に悪化することがあり(急性増悪)、入院治療が必要になるケースも少なくありません。慢性心不全の安定した管理こそが急性増悪を防ぐ鍵となります。

慢性心不全の原因

慢性心不全を引き起こす主な心臓の病気には以下のものがあります。

  • 心筋梗塞:心臓の冠動脈が詰まり心筋が壊死する病気で、心不全の原因として最も頻度の高い疾患の一つです。
  • 心臓弁膜症:弁の閉鎖不全や狭窄により心臓に慢性的な負担がかかります。
  • 心筋炎・心筋症:心筋そのものの炎症や変性がポンプ機能を低下させます。
  • 高血圧:持続的に心臓に高い圧力がかかることで心筋が肥大し、やがて疲弊します。
  • 不整脈:心拍リズムの乱れが心機能を徐々に低下させます。
  • 先天性心疾患・肺高血圧症:先天的な構造異常や肺血管の圧力上昇が心臓に負担をかけます。

慢性心不全を悪化させるリスク因子

明らかな心臓の病気がなくても以下の要因が心不全の発症や悪化に関わります。日常生活でこれらのリスク因子を管理することが予防と悪化防止に直結します。

  • 塩分の過剰摂取(体液貯留を促進する)
  • 肥満(心臓への物理的な負担を増やす)
  • 喫煙(血管を傷つけ、動脈硬化を促進する)
  • 加齢(心筋の柔軟性が低下する)
  • 脂質異常症・糖尿病(動脈硬化のリスクを高める)
  • 過度の飲酒(アルコール性心筋症の原因となることがある)

慢性心不全の症状

慢性心不全では左心と右心それぞれの機能低下に応じて異なる症状が現れます。左心室の機能が低下すると肺に血液がたまりやすくなり、右心室の機能が低下すると全身に水分が貯留しやすくなります。代表的な症状は以下のとおりです。

  • 労作時の息切れ(階段や坂道の昇降で顕著になる)
  • 足や顔のむくみ(特に夕方に悪化しやすい)
  • 急な体重増加(数日で2kg以上増えることがある)
  • 動悸・不整脈
  • 咳込み(夜間に多い)
  • 全身の倦怠感・だるさ
  • 食欲の低下

初期には軽い息切れ程度のことが多く、特に高齢の方は「年齢のせいだろう」と見過ごしがちです。以前は楽にできていた動作がつらくなった、息切れが強くなったなどの変化を感じたら早めに受診してください。

慢性心不全のステージ分類

米国心臓協会(AHA)では心不全の進行度をA〜Dの4つのステージに分類しています。早い段階で介入するほど予後が良くなるため、この分類を知っておくことは重要です。

ステージ状態
A高血圧・肥満・糖尿病など心不全のリスク因子がある段階。心臓の構造や機能には異常がない
B心肥大・弁膜症・心筋梗塞の既往など心臓に異常はあるが、心不全の症状はまだ出ていない段階
C心臓に異常があり、息切れやむくみなどの心不全症状が現れている段階
D適切な治療を行っても安静時に症状が出る末期心不全の段階。治療が非常に困難になる

ステージDは末期心不全にあたり、この段階に進行させないための早期の治療介入が予後改善の鍵です。理想的にはステージA・Bの段階で管理を開始することが望まれます。

慢性心不全の検査・診断

慢性心不全の診断には以下の検査を組み合わせて行います。

  • 心エコー検査:心臓の収縮力や弁の状態を超音波でリアルタイムに評価します。弁膜症の有無やポンプ機能を総合的に確認でき、心不全診断において最も重要な検査です。検査時間は約5分で、その場で結果をお伝えできます。
  • 血液検査(BNP/NT-proBNP):心臓に負担がかかると上昇するホルモン値を測定し、心不全の有無や重症度を推測します。早期発見にも有用です。
  • 胸部レントゲン検査:心臓の拡大、うっ血や胸水の有無を画像で確認します。
  • 心電図検査:不整脈や心筋虚血の有無をチェックします。

※心エコー検査や胸部レントゲン検査は、医療機関によって受けられない場合があります。詳しくは各院のお問い合わせよりご相談ください。

慢性心不全の治療

原因疾患の治療

慢性心不全の原因となっている疾患(高血圧、弁膜症、心筋梗塞など)がある場合はまずその治療を行います。原因疾患のコントロールなしに心不全だけを治療しても根本的な改善にはつながりません。

薬物療法

慢性心不全の薬物治療はここ数年で大きく進歩しました。主な薬剤は以下のとおりです。

  • 利尿薬:むくみやうっ血を改善する基本的な薬です。
  • β遮断薬:心臓の負担を軽減し、生命予後の改善が証明されている重要な薬です。
  • ACE阻害薬/ARB:心筋のリモデリングを抑制し、心機能の悪化を遅らせます。
  • ARNI(エンレスト):2020年に登場した治療薬で、心臓を保護するホルモンの働きを強化しながら負担をかけるホルモンを抑えます。従来薬を上回る心保護効果が期待されています。
  • SGLT2阻害薬:もともと糖尿病治療薬でしたが、心不全の予後改善効果が確認され、糖尿病の有無にかかわらず広く使用されるようになりました。

生活習慣の見直し

薬による治療と並行して、日常生活の中で心臓への負担を軽減する取り組みが不可欠です。

  • 塩分制限:1日6g未満を目標にしましょう。塩分の摂りすぎは体液貯留を促進し、むくみや心臓への負担を悪化させます。
  • 体重管理:毎日の体重測定で増減をチェックしてください。1週間で2kg以上増えた場合は早めに受診しましょう。
  • 禁煙:喫煙は心血管系への悪影響が大きく、必ず禁煙しましょう。
  • 適度な運動:心臓に過度の負担がかからない範囲で体を動かすことは心不全の管理に有効です。運動量は主治医と相談して決めましょう。
  • 水分管理:摂りすぎは心臓の負担になりますので、適切な量を主治医にご相談ください。

慢性心不全で気になる症状があるときは

息切れやむくみが軽度であっても放置すると知らないうちに心不全が進行してしまいます。わずかでも気になる症状がある場合はできるだけ早く医療機関を受診し検査を受けることが大切です。

クリニックプラスの循環器専門外来では循環器内科の専門医が心エコー検査を含めた各種検査をスピーディに実施しています。お忙しい方でも通院しやすいようLINEからの24時間予約に対応し、平日は20時まで、土日祝も毎日診察を行っています。慢性心不全の管理には定期的な通院が欠かせません。必要に応じて大学病院や総合病院への紹介も迅速に対応いたします。通いやすい環境の中で一緒に心不全と向き合っていきましょう。

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