コラム

心房頻拍

  • 循環器専門外来
  • 不整脈

心房頻拍(しんぼうひんぱく)は、心臓の上側にある「心房」から異常な電気信号が発せられることで脈が速くなる不整脈の一種です。健康な方の安静時の脈拍は1分間に60〜100回程度ですが、心房頻拍が起こると1分間に140〜200回もの速さで脈を打つようになります。通常、心臓の拍動は「洞結節(どうけっせつ)」という部分が規則的に電気信号を作り出すことでコントロールされていますが、心房頻拍では洞結節以外の場所に異常な「発電源」ができたり、異常な電気回路が形成されたりすることで頻脈が発生します。

心房頻拍の大きな特徴は、脈が一定の間隔で規則的に速くなる点です。この点は脈のリズムがバラバラになる「心房細動」とは異なります。また、心房の興奮頻度が1分間に約300回に達する「心房粗動」とも区別されます。心房頻拍は1分間に240回よりも少ない頻度で心房が興奮するケースが多く、心電図の波形によってこれらの不整脈は鑑別されます。

心房頻拍の原因

洞結節以外の異常な発電源

心臓を動かす電気信号を通常発しているのは洞結節ですが、何らかの原因で心房の別の部位に発電源(異所性焦点)ができてしまったり、心房内に電気信号が旋回する異常な回路が形成されたりすることがあります。これらの異常部位から通常より速い頻度で電気信号が送り出されるため、心拍が速くなります。

基礎疾患や薬剤の影響

甲状腺機能亢進症は心拍数を上げる代表的な基礎疾患で、心房頻拍の原因にもなりえます。また、ジギタリスをはじめとする一部の薬剤の副作用として心房頻拍が出現することもあります。心臓の手術歴がある方に見られるケースもあり、既往歴を含めた総合的な評価が求められます。

生活習慣の乱れ

睡眠不足や過労、強い精神的ストレス、脱水、過度のアルコール摂取などが心房頻拍の発作を引き起こす引き金になることがあります。日頃の体調管理や規則正しい生活を心がけることは、発作の予防にもつながります。

心房頻拍の症状

心房頻拍で最も多く訴えられる症状は「動悸」です。突然始まる胸のドキドキは強い不安を感じさせることも少なくありません。そのほかにも以下のような症状が現れることがあります。

  • 息切れ
  • 胸の不快感・圧迫感
  • 倦怠感・だるさ
  • 胸痛(まれ)

一方で、まったく症状に気づかずに無症状で経過する方もいます。心房頻拍そのものが直接命に関わることはまれですが、頻脈の状態が長期間にわたって続くと心臓に過大な負担がかかり、心不全を起こす可能性があります。特にもともと心臓に病気を抱えている方は注意が必要ですので、動悸を感じたら早めに循環器内科を受診しましょう。

心房頻拍の診断・検査

心電図検査

動悸の症状で受診した際にまず行われるのが心電図検査です。心房頻拍の発作が起きている最中に心電図を記録することができれば、波形の特徴から診断がつきます。心房頻拍では洞調律(正常な脈)とは異なるP波(心房の電気活動を示す波形)が規則的に出現するのが特徴です。

ホルター心電図

発作中に心電図が取れず診断に至らない場合や、1日の中でどの程度の頻度で不整脈が出ているかを評価する際に使用します。小型の記録装置を数日間装着し、普段通りの生活を送りながら心電図を記録します。

心臓超音波検査(心エコー)

不整脈がある場合、心臓に何らかの構造的な異常(弁膜症や心筋症など)が隠れている可能性を考慮して心エコー検査を行います。また、心房頻拍が長時間持続している場合は、心臓内に血栓が形成されていないかを確認するために経食道心エコー検査を実施することもあります。※心エコー検査は、医療機関によって受けられない場合があります。詳しくは各院のお問い合わせよりご相談ください。

血液検査

甲状腺機能の異常や電解質バランスの乱れなど、心房頻拍の背景にある全身的な原因を調べます。

心房頻拍の治療法

基礎疾患の治療

甲状腺機能亢進症などの基礎疾患が見つかった場合は、まずその疾患の治療を優先します。原因を取り除くことで、心房頻拍の発作が起こりにくくなるケースがあります。

薬物療法

発作が起きている最中には、ATP製剤の急速静注(注射)により速やかに不整脈を停止させることが期待できます。発作の再発予防には、β遮断薬やベラパミルなどの内服薬を定期的に服用する方法が選択されます。薬の種類は患者さんの状態に合わせて担当医が選択します。

電気ショック(体外式除細動)

心房頻拍の発作を止める手段の一つに電気ショック(カルディオバージョン)があります。発症から72時間以内であることが条件ですが、外部から電流を加えることで心臓の電気信号をリセットし、正常な脈に戻すことが可能です。

カテーテルアブレーション

心房頻拍の根治を目指す治療法です。カテーテルを使って心臓内の異常な発電源や電気回路を焼灼もしくは冷凍凝固させます。薬で十分に発作がコントロールできない方や、根治を希望される方に適した治療です。カテーテルの検査(電気生理学的検査)で心臓内のどの部位が原因となっているかを精密に特定したうえで治療を行います。

クリニックプラスでは、カテーテル治療において実績のある専門医療機関と連携体制を構築しております。高度な治療が必要な場合には、適切な医療機関へ迅速にご紹介いたします。

心房頻拍を放置するとどうなる?

心房頻拍自体が直接死亡につながることはありませんので、過度に恐れる必要はありません。ただし、頻脈が長期間にわたって持続すると心臓に負担がかかり、心不全を引き起こす可能性があります。また、動悸の原因が心房頻拍ではなく、より注意すべき不整脈である可能性もゼロではないため、動悸を自覚された場合は早めに循環器内科を受診して正確な診断を受けることが大切です。

心房頻拍と他の上室性不整脈の違い

動悸を引き起こす上室性の不整脈にはいくつかの種類があり、それぞれメカニズムや治療方針が異なります。心房頻拍は脈が規則的に速くなるのが特徴で、心房の興奮頻度は1分間に約140〜240回です。一方、心房細動は脈が不規則(バラバラ)になり、心房の興奮頻度は300〜600回/分以上と無秩序です。心房粗動は心房頻拍と同じく脈が規則的ですが、心房の興奮頻度が約300回/分とより速いのが特徴です。これらの不整脈は心電図検査の波形によって鑑別され、正確な診断が適切な治療方針の選択につながります。動悸が繰り返す場合は、どのタイプの不整脈なのかを特定するためにも循環器専門医の診察を受けることが重要です。

なお、心房頻拍には薬剤が原因となる場合もあるため、現在服用中の薬がある方は必ず医師にお伝えください。原因を特定したうえで最適な治療法を選択することが、発作の再発予防と生活の質の向上につながります。

心房頻拍が気になる方へ

突然の動悸は不安を感じるものですが、適切な検査と治療によりコントロールが可能です。クリニックプラスの循環器専門外来では循環器内科の専門医が心電図やホルター心電図、心エコーなどの検査にスピーディに対応しています。発作中にそのまま来院いただければ、心電図で不整脈を記録して正確な診断につなげることが可能です。カテーテル治療が必要な場合は、提携の大学病院や総合病院へ速やかにご紹介いたします。24時間LINEからご予約いただけるほか、平日は夜20時まで、土日祝日も診察を行っておりますので、お忙しい方でも通院しやすい環境です。動悸が気になる方は、お気軽にご相談ください。

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