コラム

心房粗動

  • 循環器専門外来
  • 不整脈

心房粗動(しんぼうそどう)は、心臓の上側にある心房に原因がある不整脈の一つです。心房の中に異常な電気の回路(主に三尖弁の周り)が形成され、電気信号がその回路をぐるぐると旋回することで発生します。心房粗動の状態では心房は1分間に約300回という非常に速いペースで興奮していますが、房室結節がフィルターの役割を果たすため、多くの場合はその半分の電気信号が心室に伝わり、脈拍は1分間に約150回程度となります。動悸は突然始まり突然おさまるのが特徴で、心電図では「鋸歯状波(きょしじょうは)」と呼ばれるノコギリの刃のような特徴的な波形が確認できます。

心房粗動と心房細動の違い

心房粗動と心房細動は名前が似ており混同されやすいですが、いくつかの重要な違いがあります。

比較項目心房粗動心房細動
脈のリズム規則的(一定間隔で拍動)不規則(バラバラのリズム)
心房の興奮回数約300回/分300〜600回/分以上(無秩序)
心電図の特徴鋸歯状波(ノコギリ波形)基線の細かい揺れ(f波)
カテーテル治療の成功率約95%(高い成功率・再発少)1回で80〜90%(複数回で向上)

心房細動と心房粗動の両方の不整脈をもっている方もおり、心房細動を薬で治療する過程で心房粗動が出現するケースもあります。両者は密接に関連した不整脈であり、合わせて評価・治療を行うことが重要です。

心房粗動の原因

心房内の異常な電気回路

心房粗動の本態は、心房内(主に右心房の三尖弁の周囲)に形成された異常な電気回路を電気信号が旋回することです。この回路を電気信号が1分間に約300回の速さでぐるぐると回り、心房を異常に速く興奮させます。

基礎疾患と加齢

加齢に伴い心房粗動の発症リスクは高まります。心筋梗塞などの虚血性心疾患、心臓弁膜症、心臓手術の既往がある方は心房粗動を起こしやすいとされます。また、甲状腺機能亢進症などの全身的な疾患が背景にあることもあり、原因の精査が必要です。

生活習慣

高血圧をはじめとする生活習慣病は、心房粗動発症のリスク因子です。過度のアルコール摂取、睡眠不足、脱水、精神的なストレスなどが発作の引き金になることもあるため、日常生活における自己管理も重要です。

心房粗動の症状

心房粗動の発作が起きたときの主な自覚症状は「動悸」です。安静時の脈拍は通常60〜80回/分程度ですが、心房粗動では約150回/分まで上昇するため、非常に強い動悸を感じます。動悸は突然始まり突然おさまるのが特徴です。そのほか以下の症状が見られることがあります。

  • 息切れ
  • 胸の不快感・圧迫感
  • 倦怠感・だるさ
  • 胸痛(まれ)

一方で、まったく自覚症状なく経過する方もいます。無症状であっても、心房粗動が持続すると心臓内に血栓が形成されるリスクがあるため、定期的な検査は欠かせません。

心房粗動の診断・検査

心房粗動の診断には以下の検査を組み合わせて行います。

心電図検査

心房粗動の発作中に心電図を記録できれば、鋸歯状波の確認により診断がつきます。動悸の症状で受診した際にまず行われる基本的な検査です。

ホルター心電図

発作がいつ起きるかわからない場合や、発作の頻度・持続時間を評価する際に使用します。数日間心電計を装着して心電図を連続記録し、日常生活の中での不整脈の出方を把握します。

心臓超音波検査(心エコー)

心房粗動の背景に心疾患が隠れていないか、また心臓内に血栓ができていないかを確認します。血栓の評価が必要な場合には、食道側から心臓を観察する経食道心エコー検査を実施することもあります。
※心エコー検査は、医療機関によって受けられない場合があります。詳しくは各院のお問い合わせよりご相談ください。

※経食道心エコー検査は当院では行っておりません。必要時には、専門機関をご紹介致します。

血液検査

甲状腺機能の異常など全身的な原因の有無を調べます。

心房粗動の治療法

薬物療法

心房粗動では心房内に血栓が形成されるリスクがあるため、脳梗塞予防のために血液をサラサラにする抗凝固薬が処方されます。抗不整脈薬で発作を抑制する試みも行われますが、薬だけで心房粗動を十分にコントロールすることは難しい場合が少なくありません。

電気ショック(体外式除細動)

心臓内に血栓がないことを事前に確認したうえで、外部から電流を流し心臓の電気信号をリセットする治療法です。速やかに正常な脈に戻すことが可能ですが、薬物治療を併用しないと再発することがあります。

カテーテルアブレーション

典型的な心房粗動に対するカテーテルアブレーションは、治療成績が非常に良好で、長期的な再発も少ない治療です。一般的に高い有効性が報告されており、安定した治療成績が期待できます。

カテーテルを用いて、三尖弁輪と下大静脈間の異常な電気回路(峡部)を焼灼し、電気信号の旋回を遮断します。

治療時間は1〜2時間程度で、数日の入院で行われます。

クリニックプラスでは、カテーテル治療において実績のある専門医療機関と連携体制を構築しております。高度な治療が必要な場合には、適切な医療機関へ迅速にご紹介いたします。

心房粗動を放置するとどうなる?

心房粗動の発作自体が直接命に関わることはまれです。しかし、心房内で血栓が形成され、それが脳の血管を塞ぐと脳梗塞を引き起こす恐れがあります。手足に力が入らなくなる、言葉が出にくくなるなどの重い後遺症が残る可能性もあるため、動悸症状を自覚したら速やかに医療機関を受診しましょう。また、頻脈の状態が長期間続くと心臓に負担がかかり、心不全を招く可能性もあります。特にもともと心臓に病気を抱えている方は注意が必要です。

心房粗動のメカニズム(典型的と非典型的)

心房粗動には「典型的心房粗動」と「非典型的心房粗動」の2つのタイプがあります。典型的心房粗動は、右心房の三尖弁と下大静脈の間にある「峡部」と呼ばれる領域を電気信号が旋回することで発生します。このタイプはカテーテルアブレーションによる根治率が約95%と非常に高く、治療の第一選択として推奨されています。非典型的心房粗動は、心臓手術の既往や心房の線維化などによって通常とは異なる場所に電気回路が形成されるタイプです。典型的心房粗動と比べると治療の難易度がやや高くなりますが、電気生理学的検査で回路を正確に特定することで、カテーテルアブレーションによる治療が可能です。

心房粗動は適切な治療を受ければコントロールが可能な不整脈です。特にカテーテルアブレーションは高い根治率が報告されており、治療後の再発も少ないことから、多くの患者さんに選択されています。

心房粗動が気になる方へ

突然始まる動悸に不安を感じている方は、心房粗動の可能性を考えて一度検査を受けることをおすすめします。クリニックプラスの循環器専門外来では、循環器内科の専門医が丁寧に問診・検査を行い、正確な診断と適切な治療方針のご説明をいたします。カテーテルアブレーションが必要と判断された場合は、治療実績の豊富な大学病院や総合病院へ速やかにご紹介します。24時間LINEでご予約が可能で、平日は夜20時まで、土日祝日も診察を行っておりますので、お仕事帰りや休日のご受診も可能です。動悸が気になる方は、ぜひ一度ご相談ください。

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