多くの人が日常生活に支障が出るようなアレルギー症状に悩まされています。
自分のアレルギーの原因物質(アレルゲン)を知ることで、アレルゲンを回避し、症状の緩和を得ることができるようになるかもしれません。
アレルゲンを調べる検査として、負担が少なく、わずか30分で結果がわかる「ドロップスクリーン」という検査があります。
ここでは、そのドロップスクリーンという検査について解説します。
アレルギーを引き起こすアレルゲンとは
アレルギーを引き起こす原因物質のことを「アレルゲン」と呼び、主に3種類に分けられます。
- 吸入性アレルゲン
- 食物性アレルゲン
- 接触性アレルゲン
体の中に取り込まれる方法によって分類されています。
人によっては複数のアレルゲンに対してアレルギー反応を示すこともあります。
吸入性アレルゲン
吸入性アレルゲンは、鼻や口から吸入して粘膜に付着することで、体内に取り込まれるアレルゲンのことです。
ほこり・ペットの毛・ダニ・カビ・花粉などが挙げられます。
食物性アレルゲン
食物性アレルゲンは、アレルギーを引き起こしやすい食べ物のことです。
代表的なものは、そば・小麦・乳製品・甲殻類(エビ・カニ)などです。
食べた時だけアレルギー反応が出る場合もあれば、アレルゲンが皮膚に触れただけでアレルギー反応が出る場合もあります。
接触性アレルゲン
皮膚に触れることで、皮膚の内側に取り込まれ、アレルギー反応を引き起こすものを接触性アレルゲンといいます。
金属や化粧品、洗剤などが挙げられます。
ドロップスクリーン検査の3つの特徴
41項目のアレルギー検査
ドロップスクリーン検査では、代表的な22項目の食物性アレルゲンと19項目の吸入性・接触性アレルゲンの合計41項目を、同時に調べることができます。
(引用:日本ケミファ株式会社「ドロップスクリーンA-1」)
指先から少量の採血で検査ができる
ドロップスクリーン検査では注射器を使わずに、指先にスタンプのような小さな針を刺し、出てきた少量の血液で検査をすることができます。
ドロップスクリーン検査での採血量はわずか20μLと非常に少なく、患者さんの負担が非常に少ないのが特徴です。
ドロップスクリーン検査であれば、注射が嫌いなこどもでも、怖がらずに検査を受けることができるかもしれません。
検査時間は最短30分
ドロップスクリーンの検査時間は最短30分です。
同時に複数の検査が発生すると、結果が出るまで30分以上時間がかかる場合もありますが、遅くても翌日には検査結果をお伝えすることが可能です。
ドロップスクリーン検査の流れ
- 医師の診察を受けます。
- 指先から少量の血液を採取します。
- 採血した血液をドロップスクリーン測定装置にセットし、検査を開始します。
- 検査開始から約30分後には終了し、当日もしくは後日検査結果が伝えられます。
ドロップスクリーン検査の費用
ドロップスクリーン検査は保険適用のため、3割負担の場合は約5,000円になります。
これとは別に、診察料や処置料などがかかります。
ドロップスクリーン検査はアレルゲンを推測する手段
ドロップスクリーン検査は、多くの物質の中から、アレルゲンとなる可能性のあるものを見つけるスクリーニング検査といわれる検査です。
特に食物アレルゲンについては、偽陽性が出ることも多く、食物アレルギーの診断や治療経過の評価などに用いることは推奨されておりません。
食物アレルギーを診断するためには、専門の医療機関で実際に少量の食物を食べてアレルギーが出るかどうかを確認する「食物経口負荷試験(しょくもつけいこうふかしけん)」が必要になってきます。
当院では食物経口負荷試験は行っておりません。症状や検査の結果から食物アレルギーが疑わしいと判断された場合には、速やかに連携している専門の医療機関へ紹介いたします。
疑わしいアレルゲンを見つけたら
ドロップスクリーン検査でアレルゲンが推測されたら、どのように検査結果を活用したらよいのかを解説します。
アレルゲンを避ける工夫
まずは、アレルゲンを避ける工夫をしましょう。
花粉の場合は、アレルゲンがよく飛散する時期を把握し、花粉症対策のメガネやマスクを使って、早くから予防しましょう。
食物の場合は、食べないように心がけましょう。
ただし、アレルゲンの数値が高いからといって、必ずしも食事を制限する必要があるという訳ではありません。
数値が高くても無症状の場合もありますし、少量だったらアレルギーが出ないという場合もあります。
特に小さいこどもの場合は、安易な食事制限によって、食べられる食品の種類が減ってしまったり、栄養バランスが崩れて発育に影響が出てしまう場合もあります。
食物アレルギーが疑われた際には、食物経口負荷試験を行うことで、どのくらいの量だったらアレルギーが出ないかも知ることができるため、気になる方はまず医師に相談してみましょう。
薬による治療
アレルゲンを避けていても、アレルゲンの量が多すぎたり、気づいていない別のアレルゲンが原因だったりして、アレルギーが出てしまうことがあります。
薬による治療では、”症状を緩和する” と ”炎症を抑える” という2つの目的があります。
まずは鼻水・目のかゆみといった症状を緩和するために、抗ヒスタミン薬が使用されます。
抗ヒスタミン薬で症状の改善が乏しいような場合には、ゾレア注射や、ボツラックス治療などを併用することで、より一層の効果が期待できます。
また、炎症を抑えるために、ステロイドを使用する場合もあります。
皮膚症状に対しては塗り薬、目の症状には目薬、鼻炎に対しては点鼻薬といった、局所に作用する薬が中心です。
ステロイドは長期間使用すると副作用が出やすくなるので、「必要な部位に、必要な期間のみ使用すること」が重要です。
舌下免疫療法
舌下免疫療法は、アレルゲンを少量ずつ投与することで、体がアレルゲンに対してアレルギー反応を示さないようになるための治療です。
体が徐々にアレルゲンに慣れていき、アレルギーが出ないようになるので、根本的な治療法になります。
ダニやスギ花粉などのアレルゲンに対して治療が可能です。
当院でも治療可能ですので、気になる方はお気軽にご相談ください。
ドロップスクリーン検査は、非常に少ない血液で、幅広くアレルゲンをスクリーニングできる検査です。
患者さんの負担がとても少なく、小さいお子さんでも検査が受けられるという点で評価されている検査です。
アレルギー症状のない安心した生活を送るために、ドロップスクリーン検査で自分のアレルゲンとなりうるものを調べてみましょう。