「少し動いただけで息が苦しい」「同年代の人と一緒に歩いていると、自分だけ息切れがして足取りが遅くなる」このような症状がある場合、何らかの病気が隠れている可能性があります。息切れの症状が現れやすいのは、心臓や肺の病気です。どちらも生命の維持に非常に大切な臓器です。息切れの症状が出たら放置せず、医療機関を受診するようにしてください。ここでは息切れの症状をともなう疾患について解説します。
息切れの症状をともなう疾患
息切れの症状をともなう疾患には以下のようなものがあります。
・心不全
・肺塞栓症(はいそくせんしょう)
・肺炎
・気管支喘息
・貧血
心不全
何らかの原因によって、全身に血液を送る心臓の働きが弱まってしまった状態を心不全といいます。心不全の主な症状は、息切れやむくみです。特に慢性心不全では症状はゆっくりと進むため、「年のせい」などと勘違いされやすく、心不全だと気づきにくい場合があります。
心不全の原因として多いのは、心筋梗塞、心筋炎、心臓弁膜症といった心臓の病気や高血圧などが挙げられます。治療のためには、心不全のもととなっているこれらの病気に対するアプローチや食事療法、症状緩和のための薬物療法などが必要です。「たかが息切れ」と思わずに、受診して原因を探るようにすることが大切です。
肺塞栓症(はいそくせんしょう)
血栓(けっせん)という血のかたまりが肺の血管に詰まってしまう病気を肺塞栓症といいます。特に足は血液の流れが滞りやすく血栓ができやすい状態であるため、足にできた血栓が肺の血管に流れ込んで詰まるケースが最も多く、別名で「エコノミークラス症候群」とも呼ばれます。
肺塞栓症の主な症状には、急な息切れ、胸の痛み、咳などがあります。治療では安静を保ち、薬やカテーテル治療などによって血栓を取り除く必要があります。
足に血栓ができると、太ももからふくらはぎにかけて「赤み、腫れ、痛み、ふくらはぎの太さの左右差」などの症状が出現します。これらは肺塞栓症に至る前の段階なので、すぐに受診する必要があります。また、こうした症状が現れたあとに息切れや胸の痛みなどがあったときは、すぐに救急車を呼ぶようにしましょう。
肺炎
肺炎は、一般的には細菌やウイルスなどの病原体が肺に感染することで急性の炎症が起こることをいいます。それ以外に、リウマチやアレルギー、薬などの影響で肺に炎症が起きる間質性肺炎(かんしつせいはいえん)と呼ばれるものもあります。どちらも肺に炎症が起きることによって酸素が取り入れにくくなるため、重症の場合には死亡のリスクが高まります。
肺炎にかかると、咳や痰、発熱、息切れ、倦怠感や胸の痛みなどの症状が現れます。治療は原因に応じて抗生剤やステロイドなどの投薬が行われます。特に高齢者では入院となるケースも多く、重症例では酸素吸入も必要となる場合があります。
高齢者の場合は典型的な肺炎の症状が現れない場合もあるため、息切れがする、元気がない、食欲がないといった普段と違う様子が見られるときにはすぐに医療機関で受診することをおすすめします。
気管支喘息
気管支喘息は、呼吸をするときの空気の通り道である「気道」が炎症によって狭くなり、呼吸が苦しくなる病気のことです。気道に炎症が起こると、ホコリ・たばこ・ストレスなどのわずかな刺激にも敏感に反応して狭くなり、発作を起こしてしまいます。
気管支喘息の症状には、息切れの他、呼吸時の「ヒューヒュー」「ゼーゼー」という喘鳴(ぜんめい)、咳込み、胸苦しさ、のどの違和感などがあります。
気管支喘息の治療では、発作予防が最も重要になります。重症度に応じたステロイド吸入薬を使用して、気管支喘息の状態を管理していきます。それでも発作が起きてしまった場合には、気管支拡張剤を使用して呼吸を楽にする治療を行います。
気管支喘息は処置が遅れると命にかかわる可能性もゼロではありません。症状がある場合には我慢せず、早めに適切な治療を受けるようにしてください。
貧血
ひとことで「貧血」といってもいろいろな種類がありますが、最も多い鉄欠乏性貧血は、からだの中の鉄分が少なくなることで発症します。次に多いのが、慢性腎臓病、関節リウマチ、甲状腺疾患などにともなう貧血です。どちらでもない場合には血液の病気を疑います。
貧血が進行すると全身が酸素不足となり、めまいや立ちくらみ、動悸、息切れなどの症状が現れます。
貧血の治療では、必要な栄養素の補給、原因となっている病気の治療、輸血などが行われます。貧血は、適切な対処をせずに放置するとどんどん進行していくため、気になる症状がある場合には早めに受診をするようにしましょう。
息切れは放置せず、一度受診して相談を
息切れの症状の裏には命にかかわる病気が隠れていることがあります。「これくらいなら我慢できる」と放置せず、息切れの症状が出たらすぐに医療機関で受診するようにしてください。