息を吸って取り込んだ空気は気管支を通り、肺へ運ばれます。
肺は体内に酸素を取り込み、余分な二酸化炭素を出す大切な働きをしています。
この肺に炎症が起きてしまうのが肺炎です。
肺炎の症状や原因、治療について解説していきます。
肺炎とは
肺炎とは、どういった病気のことを指すのでしょうか。
肺の炎症
一般的に肺炎は、細菌やウイルスなど、何らかの病原体が肺に感染することにより急性の炎症が起こることをいいます。
主に感染によって引き起こされる肺の炎症が、肺炎と呼ばれています。
一方で、間質性肺炎と呼ばれる、感染をきっかけとしない肺炎もあります。
リウマチやアレルギー、薬などの影響で肺に炎症が起き、肺の壁が厚くなってしまうものです。
いずれも肺に炎症が起きることによって、肺で酸素を取り入れる機能が低下するため、重症の場合には死亡するリスクが高くなります。
肺炎は日本人の死因の5位
肺炎は治る病気というイメージもあるかもしれませんが、日本人の死因では上位に入ります。
2022年の日本人全体の死因の5位といわれており、悪性新生物(がん)、心疾患、老衰、脳血管疾患、次いで肺炎です。
若い方ではめったに肺炎になることもなく、なっても軽症で終わることがほとんどですが、免疫が低下している方や高齢者では、肺炎により致死的な状態となることも少なくありません。
感染性肺炎の分類と原因
感染症による肺炎は、主に5つに分類されます 。
どのタイプの肺炎か判断することで、感染した病原体を推測しやすく、的確な治療を行うことができます。
市中肺炎
病院の外で何らかの病原体に感染することで、引き起こされる肺炎を市中肺炎といいます。
原因となる主な病原体として肺炎球菌、インフルエンザ菌、マイコプラズマなどの細菌が知られています。
ウイルスも原因となることがあり、コロナウイルスやRSウイルス、アデノウイルス、インフルエンザウイルスなどがあげられます。
一般的に「肺炎」というと、市中肺炎を指すことが多いでしょう。
院内肺炎
入院して48時間以上経ってから肺炎を発症した場合に診断されます。
病原体としては、グラム陰性桿菌(かんきん)、黄色(おうしょく)ブドウ球菌、などが知られています。
人工呼吸器関連肺炎
人工呼吸器を装着した人に起きる肺炎を、人工呼吸器関連肺炎といいます。
気管挿管をしてから48時間以上経ってから肺炎がみられた場合に診断します。
易感染性(いかんせんせい)患者に起こる肺炎
免疫抑制剤やステロイドを使用している方、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染症患者などは、免疫機能が正常な健常人では感染しない病原体に感染してしまうことがあります。
代表的なのがニューモシスチス肺炎で、致死的な状況になることも多く、易感染性の方で発熱がみられた場合などは要注意です。
誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)
飲み込む力、嚥下(えんげ)機能の低下している方で起こりやすい肺炎です。
高齢者など嚥下機能が落ちて、食事の際に食道にいくはずの食べ物が気管支に入ってしまうと、誤嚥性肺炎を引き起こします。
誤嚥性肺炎を繰り返す場合には、口からの食事を避け、胃ろうなどの手段を考慮することになります。
肺炎の症状、風邪との違い
肺炎の症状、風邪との違いについて解説していきます。
肺炎の症状と診断
肺に炎症が起きると咳や痰、発熱、呼吸困難感などがみられるようになり、その他にも倦怠感や胸痛といった症状があらわれ、胸部聴診では肺雑音が聴こえるようになります。
胸部レントゲン、胸部CTといった画像検査、酸素飽和度の測定、採血検査などにより診断と重症度の判断を行い、必要であれば入院加療とします。
肺炎と風邪の違い
風邪は、上気道や下気道といった鼻やのどに病原体が感染することで発症します。
一方で、肺炎はさらに奥の肺で炎症が起きるため、肺炎と呼ばれます。
咳や痰など似ている症状もありますが、肺炎では38℃以上の高熱がみられることが多く、黄色や緑色の痰が多量に出るのが風邪との違いです。
風邪は自然によくなるものがほとんどですが、肺炎になってしまった場合、多くは抗生剤での治療が必要であり、重症例では低酸素状態となるため、酸素吸入が必要となることもあります。
高齢者の肺炎
高齢者の肺炎は、若い人に比べて症状がはっきりしないため注意が必要です。
高熱が出て、咳や痰がひどいといった症状があるときには積極的に肺炎を疑いますが、高齢者では典型的な症状がでないケースも多くあります。
普段に比べて元気がない、食欲がない、寝てばかりいる、反応が弱いなど、一見して肺炎とは気づかない症状であっても発症していることがあります。
気づかないうちに症状が悪化し、酸素の状態が悪くなり、命にかかわる状況になってしまうことも少なくありません。
高齢の方で普段と様子が違うときには、すぐに医療機関を受診することをお勧めします。
高齢者の肺炎は入院が必要となるケースが多く、また、入院をきっかけに認知症が進行したり足腰が弱ってしまったり、今までできていたことができなくなってしまう、といったことにもなりかねません。
高齢者は抵抗力も弱くなり、誤嚥もしやすいなど、若い人に比べて肺炎になりやすいので異変に早めに気づき、早めに治療するのが大切です。
間質性肺炎(かんしつせいはいえん)
間質性肺炎は、肺の壁である間質に炎症が起きてしまう状態で、さまざまな要因があります。
原因としては膠原病(こうげんびょう)の合併症や、薬の副作用、放射線治療の影響などがありますが、特にきっかけがなく、突然発症する間質性肺炎もあります。
感染性肺炎の検査に加えて、気管支鏡などを用いた肺の組織検査なども行うことで診断します。
感染による肺炎と違い、痰絡みのない空咳が続くことが特徴で、概ね慢性の経過をとり、感染などをきっかけとして、急な呼吸状態の悪化がみられることもあります。
肺炎の治療
肺炎の治療は、感染の有無により大きく変わります。
感染性肺炎の治療
細菌感染に伴う肺炎の治療は抗生剤です。抗生剤により病原体を抑えつつ、去痰剤や鎮咳薬といった対症療法も行います。
的確な抗生剤投与を行うことで、概ね1週間前後で良くなっていきます。
ウイルス肺炎の場合は、対症療法に加えてステロイドが投与される場合があります。
コロナウイルスの場合は、抗ウイルス薬の投与も必要です。
間質性肺炎の治療
間質性肺炎の場合は、原因によって治療が少し変わってきますが、治療の中心はステロイド投与です。
感染性肺炎と違って肺機能に後遺症を残すことが多く、ステロイドを減量すると再発することもあり、治療に難渋します。
肺炎の予防
肺炎にならないためにできることもあります。
肺炎球菌ワクチン
65歳以上では、肺炎球菌ワクチン(ニューモバックスNP、プレベナー13)の接種が強く推奨されています。
肺炎球菌は高齢者の肺炎の原因菌としては上位を占めるため、ワクチンを打つことで肺炎の予防につながります。
ワクチンを打ってから抗体ができて効果が出るまで、およそ3週間程度といわれています。
自治体によって、接種費用が助成されるケースもあるためご確認ください。
感染予防
感染しないためには病原体を体の中に入れないことです。
手洗いやうがい、人混みの中に行くときにはマスクを着用するといった、基本的な感染対策を行うことが肺炎の予防につながります。
また、口の中をきれいにしておくことで、誤嚥性肺炎のリスクを減らすことができるため、日々の歯磨きなどの口腔ケアも怠らないようにしてください。
生活習慣に気をつける
抵抗力を維持することは感染予防につながります。
規則正しい生活を続け、持病がある場合は投薬にてしっかりコントロールすることも大切です。
タバコは肺や気管支など呼吸器に悪影響を及ぼすため、禁煙するように心がけてください。
肺炎の疑いで来院された方の、当院での診療の流れ
①問診
いつからどの様な症状が出ているか、診断・治療に必要な情報を集めるために、医師がいくつか質問します。
(LINEの事前問診にお答えいただくと、よりスムーズな診療を提供できますのでご協力ください)
発熱、咳嗽、呼吸苦等が肺炎を疑う症状です。
②身体診察
喉の所見をみて、リンパが腫れていないかなど、医師が丁寧に診察を行います。
③検査
肺炎を疑ったら、まずはレントゲンを撮影します。さらに喀痰検査を行い、原因菌の特定を行います。
コロナやインフルエンザの人との接触歴があれば、抗原検査を追加することもあります。
④処方(重症の場合は専門医療機関へ紹介)
コロナなどのウイルスが原因であれば抗ウイルス薬を投与し、細菌性の肺炎であれば抗生物質を処方します。
しかし、肺炎にはそのほかに間質性肺炎と呼ばれる抗菌薬が効かない肺炎もあり、それが疑われれば専門医療機関にご紹介します。
肺炎は、特に高齢者においては命の危険につながる病気です。
少しでも肺炎を疑う症状を認めたら、医療機関を受診するようにしましょう。
クリニックプラスでは、平日は20時まで、土日祝日も診療しています。
入院が必要と判断した場合には、速やかに提携している専門医療機関をご紹介します。
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