のどに痛みがある場合、風邪をひいたと思う場合が多いのではないでしょうか。
しかし、のどの痛みを伴う病気は、風邪以外にもいろいろあります。
また、胸の痛みがのどの痛みとして感じられることもあるため、注意が必要です。
ここでは、のどの痛みを伴う疾患の種類やその特徴について解説します。
のどの痛みを伴う疾患
のどの痛みを伴う疾患には、次のようなものがあります。
・風邪(かぜ)
・細菌性/ウイルス性 咽頭炎(いんとうえん)
・急性喉頭蓋炎(きゅうせいこうとうがいえん)
・扁桃周囲膿瘍(へんとうしゅういのうよう)
・伝染性単核球症(でんせんせいたんかくきゅうしょう)
・亜急性甲状腺炎(あきゅうせいこうじょうせんえん)
・狭心症(きょうしんしょう)
・大動脈解離(だいどうみゃくかいり)
風邪
風邪は、発熱・くしゃみ・鼻水・鼻づまり・のどの痛み・咳・たんなどの症状の総称のことをいいます。
中でも風邪の3症状といわれるのが「鼻水・のどの痛み・咳」です。
どの症状が強く出るかは、感染したウイルスの種類や患者さんごとに異なります。
のどが痛いので風邪だと思っていたら別の病気だった、ということも少なくありません。
のどの痛みが長引く場合や別の症状が出てきた場合には、主治医に相談するようにしてください。
細菌性/ウイルス性 咽頭炎
咽頭炎は、のどの奥の咽頭(いんとう)と呼ばれる部分に炎症が起こり、のどの痛みや発熱、全身のだるさなどの症状が出る病気です。
原因の多くはウイルス感染ですが、細菌感染によって発症することもあります。
咽頭炎の症状は、のどの軽い痛みから唾液を飲み込むことも辛いような状態まで、重症度は様々です。
ウイルス感染による咽頭炎の場合はのどの炎症を抑える薬を、細菌感染による場合には抗生剤を使用して治療します。
急性喉頭蓋炎
急性喉頭蓋炎は、細菌感染によって舌の根元にある喉頭蓋(こうとうがい)と呼ばれる部分に急性の炎症が生じる疾患です。
炎症によって喉頭蓋が腫れるため、激しいのどの痛みが起こります。
急速に進行し、呼吸困難、声が出ない、ものが飲み込めない、発熱などの症状が現れ、治療が遅れると気道が閉塞し、命の危険を伴うこともあります。
息苦しさを感じる場合には、すぐに救急を受診するようにしてください。
扁桃周囲膿瘍
扁桃(へんとう)は、のどの奥の両側にあるリンパ組織です。
細菌やウイルス感染により扁桃が炎症を起こす病気を扁桃炎といい、扁桃炎がさらに悪化すると扁桃周囲膿瘍という状態になります。
扁桃周囲膿瘍は扁桃の周囲に膿がたまっている状態で、症状が進むと首や胸にまで膿がたまってしまうことがあります。
強いのどの痛みのほか、発熱、首周りのリンパの腫れ、口臭、食事がとれない、唾液がのみ込めないなどの症状が出ます。
治療は膿のたまった部分に針を刺したり切開したりして、膿を排出させる外科的な治療となります。
扁桃周囲膿瘍は悪化すると気道がふさがって呼吸困難に陥るなど、命の危険にもなりかねません。
自己判断で様子を見たりせず、すぐに医療機関で受診するようにしてください。
伝染性単核球症(キス病)
伝染性単核球症は、主にヘルペスウイルスの一種であるEBウイルスに感染することで起こる感染症で、10~20代の若年層に多くみられます。(別名「キス病」と呼ばれています)
発熱・のどの痛み・倦怠感・首周りのリンパの腫れ、発疹などの症状が出ます。
のどの痛みはひどくなる場合も多く、のどの奥に膿のようなものが見られることもあります。
熱やのどの痛みは1~2週間程度でおさまることが多いですが、1か月以上続く場合もあります。
また、熱が下がっても、倦怠感だけが数か月続くようなことも珍しくなく、肝臓や脾臓が腫れることもあります。
腹部に強い圧力や衝撃が加わると、腫れた脾臓が破裂する恐れもあるので、腹部に強い圧力や衝撃が加わるような運動は避けるようにしましょう。
EBウイルスに効く薬はないため、治療は症状を抑える対症療法となります。
喉の痛みや熱、倦怠感がなかなか良くならないような場合には、伝染性単核球症が原因の可能性もあるので、医療機関で受診するようにしてください。
亜急性甲状腺炎
亜急性甲状腺炎は、のどぼとけの下にある蝶のような形をした甲状腺という臓器に炎症が起こり、甲状腺の組織が壊れてしまう病気です。
首の腫れや痛みを伴い、熱が出ることもあります。首の痛みは、のどやあごの下・耳のあたりに感じることもあります。
治療は主に痛みや炎症に対して、投薬での治療をおこないます。
ロキソプロフェンナトリウム(ロキソニン)などの痛み止めや、ステロイドを使用する場合もあります。
亜急性甲状腺炎は通常数か月以内に治まりますが、甲状腺中毒症という状態になると、強い倦怠感や動悸などの甲状腺ホルモンが過剰になって起きる症状が出現し、日常生活に支障をきたすこともありますので、気になる症状がある場合には速やかに医療機関で受診するようにしてください。
狭心症
心臓には冠動脈(かんどうみゃく)という血管が張りめぐらされており、心臓はこの冠動脈から栄養や酸素を受け取っています。
冠動脈の内側に脂肪などのゴミがたまり、血流が悪くなると、心臓は栄養や酸素を十分に受け取れなくなり、胸の痛みなどの症状が出ます。
この胸の痛みは、のどや歯の痛みとして感じられることもあるため注意が必要です。
狭心症は進行すると心筋梗塞(しんきんこうそく)につながり、命の危険を伴います。
特に高血圧・高脂血症・糖尿病・喫煙・心臓病の家族歴などがある方は、狭心症になるリスクが高いため、繰り返すのどの痛みは放置せず、一度受診することをおすすめします。
大動脈解離
大動脈は心臓から全身に血液を送っている太い血管です。
何らかの原因により、大動脈の内側の壁に亀裂が入って裂けてしまう病気のことを、大動脈解離といいます。
大動脈解離を起こすと、何の前触れもなく突然、胸や背中に引き裂かれるような激痛が現れます。
これは突き刺すようなのどの痛みとして感じられることもあります。大動脈解離は命に関わる危険な病気です。
胸や背中、のどなどに耐え難い激痛が現れた場合には、すぐに救急車を呼んで、中核病院や基幹病院を受診するようにしてください。
のどの痛みが続く場合は、悩まずに受診を
のどの痛みを伴う疾患はさまざまで、中には命にかかわる病気もあります。
また、のどの痛みが強い場合は水分がとれず、脱水症状を起こしてしまうことも少なくありません。
のどの痛みが強い、長引く、というような場合は、悩まずに受診されることをお勧めします。
→詳細は「内科 風邪」をご参照ください
→詳細は「内科 甲状腺疾患」をご参照ください
→詳細は「循環器内科 狭心症」をご参照ください
→詳細は「小児科 風邪」をご参照ください