・甲状腺とは?
甲状腺とは、のどぼとけの下にある蝶の形をした臓器で、身体の代謝を活性化させたり、成長を促進したりするような甲状腺ホルモンを産生しています。また、甲状腺ホルモンは脳の下垂体というところから分泌される甲状腺刺激ホルモンによって多すぎたり少なすぎたりしないように調節されています。甲状腺疾患は、何かしらの原因で甲状腺ホルモンが増えすぎてしまう甲状腺機能亢進症/甲状腺中毒症と、逆に甲状腺ホルモンが分泌されなくなってしまう甲状腺機能低下症に大きく分けられます。
❖甲状腺機能亢進症/中毒症
・甲状腺機能亢進症/中毒とは
甲状腺ホルモンが増えすぎる原因として、甲状腺ホルモンが多く作られすぎてしまう甲状腺機能亢進症と、甲状腺が壊れてホルモンが血液にもれ出てしまう中毒症の2つがあります。甲状腺機能亢進症の中には、バセドウ病や機能性甲状腺結節、甲状腺刺激ホルモン産生下垂体腫瘍といった病気があります。一方、甲状腺中毒症には無痛性甲状腺炎、亜急性甲状腺炎、甲状腺ホルモンの過剰摂取などがあります。
・どんな症状が出ますか?
甲状腺ホルモンが増えすぎると、下記のように、多岐に渡って症状が表れます。
◆動悸
◆体重減少
◆指の震え
◆身体のほてり・汗かき
◆眼球突出
◆疲れやすい
◆軟便・下痢
◆筋力低下
◆イライラ
◆甲状腺が腫れる(痛みを伴う場合もあります)
◆炭水化物の多い食事をした後や運動後に突然手足が動かなくなる(周期性四肢麻痺)
◆女性では生理が止まる
・どうやって診断しますか?
甲状腺疾患を疑った患者には以下の検査を検討します。
◆採血検査
◆甲状腺エコー
◆心電図検査
基本的には採血を行い、血液中の甲状腺ホルモンや、甲状腺刺激ホルモンを測定します。場合によっては甲状腺ホルモン過剰産生を招く特殊な抗体を採血で測定することもあります。また、甲状腺疾患は不整脈の原因にもなります。動悸がする方は心電図検査で不整脈がないか検査する必要がある場合もあります。
・治療法はどのようなものがありますか?
大きく分けて3つの治療法があります。
1. 薬物療法
もっとも簡便で、外来で治療が始められるため、まずは薬物療法から治療を始めることが多いです。抗甲状腺薬を用法・用量を遵守して内服してもらいます。ただし、治療効果に個人差があり、2年以上内服しても薬を中止できない場合や、薬の副作用で内服継続が困難と判断された場合には、他の治療を検討します。
2. 放射線ヨウ素内用療法
放射性ヨウ素が入ったカプセルを飲んで治療する方法です。放射性ヨウ素は甲状腺に取り込まれ放射線を発し、甲状腺ホルモンを異常に作る細胞を徐々に破壊していきます。安全かつ効果が確実なところが魅力ですが、実施できる施設が限られています。当クリニックではこの治療は受けられませんが、必要と判断された場合には、速やかに治療を受けられる施設をご紹介させていただきます。
3. 甲状腺摘出術
その名の通り、甲状腺を手術で摘出します。最も早く確実に治療効果を得ることができますが、入院が必要だったり、手術の傷痕が残ってしまったり、手術の合併症(反回神経麻痺、副甲状腺機能低下症など)のリスクがあります。
甲状腺機能亢進症/中毒症を治療せずに放っておくと、不整脈や心不全といった心臓の病気につながる恐れがあり、さらには甲状腺ホルモン高値が続いているような状況で肺炎などの感染症や大怪我・手術といったストレスを受けると、甲状腺ホルモン過剰状態に耐えきれなくなり、複数の臓器の機能が低下し、死にも繋がりかねない甲状腺クリーゼという状態を引き起こす可能性もあります。上記症状に当てはまるような症状を認めた際には、すぐに当クリニックまでご相談ください。
❖甲状腺機能低下症
・甲状腺機能低下症とは
甲状腺機能が低下してしまう原因として、甲状腺ホルモンの産生と分泌が低下してしまう場合と、甲状腺ホルモンが作用する組織に異常があって効果が発揮されない場合とに分けられます。前者の中には、甲状腺自体に問題がある原発性甲状腺機能低下症や、甲状腺ホルモンの産生を促す下垂体や視床下部といった中枢組織に問題がある中枢性甲状腺機能低下症があります。一方、後者は甲状腺ホルモン不能症と呼ばれ、生まれつき甲状腺ホルモンの受容体に異常があることが多いです。これらのうち最もよく見かけるのは、原発性甲状腺機能低下症、いわゆる橋本病と呼ばれるものになります。昆布やひじき、ヨード卵、ヨウ素(不整脈の薬(アミオダロン)やうがい液などに含まれる)の過剰摂取によっても甲状腺機能低下を認めることがあります。
甲状腺ホルモンが低下すると、下記のように、多岐に渡って症状が表れます。
◆甲状腺の腫れ(首の前の部分の不快感や圧迫感)
◆全身のむくみ
◆脈が遅い
◆うつ状態・無気力
◆疲れやすい
◆皮膚乾燥
◆低体温
◆便秘
◆アキレス腱反射低下
◆脱毛(頭髪、眉毛)
◆かすれ声
◆筋力低下
◆女性の方は過多月経
・どうやって診断しますか?
甲状腺疾患を疑った患者には以下の検査を検討します
◆採血検査
◆甲状腺エコー※
◆心電図検査
基本的には採血を行い、血液中の甲状腺ホルモンや、甲状腺刺激ホルモンを測定します。特に橋本病は自己免疫性疾患の一つで、甲状腺に対する自己抗体を採血で測定することが診断の助けにもなります。また、甲状腺疾患は不整脈の原因にもなります。心電図検査で不整脈がないか検査する必要がある場合もあります。
※検査できる院とできない院があります。また、検査対応可の院でも、対応できる日が異なりますので、検査をご希望の方は、事前に各院にお問い合わせください。
・治療法はどのようなものがありますか?
甲状腺ホルモンの補充が基本的な治療になります。ヨードの過剰摂取が原因として疑われる場合には、ヨードの制限も行います。
一度甲状腺機能低下症になると、生涯甲状腺ホルモン補充が必要になることが多いです。
・甲状腺疾患が疑われた方の当院での診療の流れ(診察所要時間目安: 7〜10分)
1. 問診
まずいつからどの様な症状がでているかなど、診断・治療に必要な情報を集めるために、医師がいくつか質問します。(LINEの事前問診にお答えいただきますと、よりスムーズな診療を提供できますので、ご協力ください。)
2. 身体診察
甲状腺の診察の他、その他の部位にも異常が出ていないか全身を丁寧に診察します。
3. 検査
医師が必要と判断した場合には、検査を行うこともあります。当院で行える検査は以下になります。
◆血液検査 →甲状腺ホルモンの値をチェックします
◆心電図検査 →心臓に異常をきたしていないかを判断します
◆超音波検査 →血液検査で異常を認めた場合、甲状腺の超音波を行い、形態に異常がないかをみます。
4. 処方あるいは専門医療機関へ紹介
甲状腺疾患と診断された場合、当院で行える治療は飲み薬の治療になります。ただし、重症の場合や、当院の検査では十分に判断がつかない様な場合には、専門の医療機関にご紹介させていただくこともあります。