風邪だと思っていたのに咳がなかなかおさまらない、そんな経験はありませんか?
咳の症状をメインとする疾患はとても多く、自然と治るものから、早期に治療をしないと悪化してしまうものまで、さまざまあります。
ここでは、咳を伴う疾患の種類やその特徴について解説します。
咳の症状をメインとする疾患
咳の症状をメインとする疾患には、次のようなものがあります。
・風邪(かぜ)
・喘息(ぜんそく)
・咳喘息(せきぜんそく)
・気管支炎(きかんしえん)/感染後咳嗽(かんせんごがいそう)
・肺炎(はいえん)
・後鼻漏(こうびろう)
・結核(けっかく)
・百日咳(ひゃくにちぜき)
・胃食道逆流症(いしょくどうぎゃくりゅうしょう、GERD:Gastroesophageal Reflux Disease)
・肺がん
・薬剤性咳嗽(やくざいせいがいそう)
風邪
風邪は、発熱・くしゃみ・鼻水・鼻づまり・のどの痛み・咳・たんなどの症状の総称のことをいいます。
中でも風邪の3症状といわれるのが、「鼻水・のどの痛み・咳」です。
どの症状が強く出るかは、感染したウイルスの種類や患者さんごとに異なります。
風邪の症状は、通常1週間程度で自然とおさまりますが、咳だけが3~4週間残ってしまうこともあります。
咳が長引く場合、他の病気が隠れている場合もあるため注意が必要です。
喘息
喘息は、気道に炎症が起こることで空気が通りにくくなる病気です。
炎症が起きている気道はとても敏感なので、ホコリやタバコ、ストレスなどのわずかな刺激でも、それがきっかけとなり発作を起こしてしまいます。
発作を起こすと、「ゼーゼー、ヒューヒュー」という喘鳴(ぜんめい)がしたり、激しい咳込みや息苦しさなどの症状が出たりします。
発作が起きてしまったときには、発作を鎮める治療を速やかに行う必要がありますが、喘息の治療で何より重要なことは、発作を起こさないように普段から予防のための治療を行うことです。
喘息の症状でお困りの場合は、まずは医療機関を受診し、予防も含めた適切な治療を受けるようにしてください。
咳喘息
風邪などの感染症にかかっていないのに、咳が数週間にわたって続く場合、その原因として多いのが咳喘息です。
普通の喘息とは違い、「ゼーゼー、ヒューヒュー」という喘鳴がなく、乾いた咳のみが症状であることが特徴です。
市販の風邪薬や咳止めでは治らず、気管支拡張剤や吸入ステロイド剤による治療が必要になります。
市販薬を飲み続けている間に悪化してしまう場合もあるため、乾いた咳が長引く場合、自己判断せず受診するようにしましょう。
気管支炎/感染後咳嗽
気管支にウイルスや細菌が入り込んで炎症を起こす病気が気管支炎です。
風邪を引き起こすウイルスが原因となることが多く、風邪の症状の中でも特にしつこいのが咳の症状です。
そのような咳は感染後咳嗽と呼ばれ、適切な治療を行わなければ2か月以上続いたりすることもあり、生活に強く支障が出ることもあります。
細菌感染が原因の場合には抗菌薬による治療が必要になりますし、咳喘息や肺炎、結核などとの鑑別も重要になるため、自己判断せず、受診して適切な診断と治療を受けるようにしてください。
肺炎
ウイルスや細菌の感染が原因で、肺に炎症が起きることを肺炎といいます。
主な症状は、たんが絡んだ咳・発熱・悪寒・胸痛・息切れなどです。
風邪の症状と間違われやすいですが、風邪よりも症状は重く長引きます。
コロナ肺炎の場合は、適切な抗ウイルス薬の投与が必要なこともあり、細菌性肺炎には病原体に応じた抗菌薬を使用します。
放置すると重症化して、入院治療が必要になる場合もあります。
風邪が長引いたり、高熱を伴う激しい咳が出たりする場合には、必ず受診するようにしてください。
後鼻漏
鼻水が鼻の穴から出ず、のどの方へ落ちていくことを後鼻漏といいます。
健康な方でも少量の後鼻漏は起こりますが、アレルギー性鼻炎や副鼻腔炎がある場合、鼻水の量が多くなるため後鼻漏も増えます。
夜間に横になっていると、鼻水はさらにのどの方へ流れやすくなり、鼻水がのどに溜まることがあります。
そのような場合、起床後にたんが絡んだ咳が出ることが多くなります。
長引く咳の原因としてもっともポピュラーなものなので、早めにご相談ください。
結核
日本において結核は、現在でも決して珍しくない病気です。
結核菌が原因となり、おもに肺に炎症を起こす病気で、人から人へ感染します。
多くの場合、感染しても発病はしないのですが、抵抗力が低下していると発病し、咳・たん・発熱・倦怠感・食欲不振などの症状が出ます。
高齢の人にとっては、特に重症化する可能性があります。
咳やたんが2週間以上続く、いったん良くなってもまた同じ症状を繰り返す、というような場合は結核の可能性も考えられます。
結核は、抗結核薬による適切な治療を行えば完治する病気です。
治療にかかる費用は公費負担制度もありますので、気になる症状がある場合には、まず医療機関で受診するようにしましょう。
百日咳
百日咳は、百日咳菌という細菌に感染することで発症します。
咳やくしゃみなど風邪に似た症状から始まり、次第に咳が強くなっていきます。
その後、連続した短い咳と、息を吸うときに「ヒュー」という音を伴う特徴的な発作が起こります。
飛沫感染・接触感染によって、人から人へうつります。治るまで数か月かかることもあるため、百日咳と呼ばれます。
以前は小さなお子さんに多い病気でしたが、最近では大人の患者さんも増えています。
治療には抗生剤を使いますが、初期に使うほど薬の効きが良くなるため、早めに診断を受けることが大切です。
胃食道逆流症(GERD)
胃食道逆流症(GERD:Gastroesophageal Reflux Disease)は、胃の中にある胃酸や胃液が食道へ逆流して起こる病気の総称です。
胸やけやげっぷ・胃酸の逆流によって感じる苦みが主な自覚症状で、慢性化すると咳や喘息・副鼻腔炎・逆流性食道炎など、さまざまな合併症を伴うことも知られています。
治療には胃酸を抑える薬が使われます。
咳が長引く場合、このように胃食道逆流症が隠れている場合もありますので、当てはまる症状がある場合には受診して、検査を受けるようにしましょう。
肺がん
肺がんは、早期のうちは無症状であることが多く、ある程度進行すると咳やたん、息切れや胸の痛み、体重減少などの症状が出ます。
診断のためにまずはレントゲンを撮影し、疑われる場合はCT検査を施行します。
肺がんと診断された場合の治療法には、手術・放射線療法・薬物療法があります。
がん治療は早期発見・早期治療が非常に重要になるため、定期的に健康診断を受け、気になる症状がある場合には早めに受診をすることが大切です。
薬剤性咳嗽
薬剤の中には、副作用として咳を生じるものがあります。特に有名なのがACE阻害薬という血圧を下げる薬です。
たんが絡まない乾いた咳が特徴で、のどが狭まるような違和感を伴うことも多いです。
投与後数週間から数か月後に咳が出始め、薬をやめると通常1週間ほどでおさまりますが、3か月以上続くこともあります。
薬剤の副作用で咳が出る場合、その薬をやめるかどうかはケースバイケースとなります。
主治医とよく相談するようにしてください。
長引く咳は早めに受診を
咳症状を伴う疾患にはさまざまあり、自己判断は難しく、放置することで悪化してしまう場合も少なくありません。
咳が長引く場合には早めに受診し、適切な診断と治療を受けることが大切です。
当院には、経験豊富な呼吸器専門医がおりますので、ぜひご相談ください。
→詳細は「内科 風邪」をご参照ください
→詳細は「小児科 風邪」をご参照ください
→詳細は「アレルギー科 喘息」をご参照ください