お腹が痛い… 下痢が止まらない… 嘔吐してしまった…
こうした症状を経験したことがある方は少なくないと思います。
これらの症状から考えられる病気、対処法など解説していきます。
腹痛・下痢・嘔吐の症状が現れる疾患
腹痛・下痢・嘔吐が現れる疾患には、以下のようなものがあります。
- 胃腸炎
- 過敏性腸症候群(かびんせいちょうしょうこうぐん)
- 虫垂炎(ちゅうすいえん)
胃腸炎
腹痛・下痢・嘔吐という症状で一番多くみられるのが胃腸炎で、「お腹の風邪」と表現されることもよくあります。
胃腸炎の原因の多くはウイルスや細菌などの感染です。
ウイルスと細菌では、ウイルスの方が頻度としては多く、胃腸炎の原因となる有名なウイルスにノロウイルスがあります。
ノロウイルス感染性胃腸炎は冬の食中毒の代表で、カキなどの二枚貝を介して感染することが多く、食べてから1~2日経ってから嘔気・嘔吐、下痢、腹痛といった症状が出てきます。
また、発熱や頭痛、筋肉痛といった全身症状を伴うこともあります。
細菌性の胃腸炎でよく知られているのはO-157で、大腸菌の感染による疾患です。
胃腸炎の症状は不快なものですが、自然によくなるケースも多い疾患です。
感染性腸炎の診断のための検査は必ずしも必要ではなく、患者さんのお話を聞き、必要な身体診察を行った上で、臨床経過から診断することが多いですが、小児や飲食店勤務の方については検査することもあります。
ウイルス性の場合には特効薬もなく、症状も2~3日程度で治まるので、水分をとって安静にしていることが治療になります。
症状が強い場合には、整腸剤や制吐剤などの対症療法薬を用います。
細菌性が疑われる場合にも、ウイルス性と同様に対症療法のみで経過をみることが多いですが、体内に人工物が入っている方や抵抗力が落ちている方には、抗菌薬を用いて治療を行います。
感染性腸炎において気をつけなければいけないのは、脱水症状です。
胃腸炎では、嘔吐や下痢によって水分や電解質が体外に出てしまい、脱水症状を引き起こして重篤な状態に陥ってしまうことがあります。
特に小児や高齢者などは注意しなければなりません。
嘔吐や下痢が頻回の場合は、固形物は避けて、しっかり水分や電解質を補給して安静にするといった対応が必要です。
また、嘔吐物や下痢から他の人に感染させてしまう恐れがあるので、吐瀉物(としゃぶつ)などの処理には注意が必要です。
吐瀉物に混じったウイルスが飛散し、それを吸い込むことで感染してしまうため、マスクや手袋・エプロン・ゴーグルなどをつけて作業し、塩素系消毒剤(ハイターなどの次亜塩素酸ナトリウム)で拭き取ります。
拭いたタオルなどは袋に入れて、しっかり封をして捨ててください。
過敏性腸症候群
腸に異常がみられないにも関わらず、腹痛を繰り返したり、下痢や便秘が長期間続いたりする病気を過敏性腸症候群(IBS:Irritable Bowel Syndrome)といいます。
過敏性腸症候群の原因ははっきりとわかっていませんが、その多くはストレスであると考えられています。
脳と腸はその働きに密接な関係があり、脳がストレスを感じると、腸の機能に異常が生じやすくなります。
また、睡眠不足や運動不足、食生活の乱れなども発症のきっかけになるといわれています。
過敏性腸症候群と診断するためには、その他の原因となりうる腸の病気を除外する必要があり、血液検査や内視鏡検査を行います。
治療のためにはまず睡眠・休養をしっかりとって、ストレスを避けることが重要です。
暴飲暴食や過度なアルコール摂取も避けた方がよいでしょう。
こういった生活習慣の改善でも症状がよくならない場合には、薬による治療も検討します。
過敏性腸症候群に適応を持つ薬はいくつかあり、患者さんの状態に合わせて処方されます。
症状が緩和されることで日常生活が送りやすくなるだけでなく、症状によるストレスが軽減される好循環が生まれます。
虫垂炎
虫垂炎とは、盲腸の下部にある虫垂に炎症が生じる病気です。
幅広い年齢で発症しますが、10代から20代で多くみられます。
主な症状は、お腹の痛みや吐き気、発熱です。
虫垂炎の原因は全て解明されていませんが、以下のような要因が挙げられます。
- 虫垂の入口が閉塞したり圧迫されたりすることで、中で細菌やウイルスが繁殖して炎症が起こる
- 便秘
- 食生活の乱れや運動不足、ストレス
虫垂炎を診断するためには、血液検査やお腹のCT検査を行います。
症状が軽度の虫垂炎であれば、抗菌薬による薬物療法で保存的に治療されることも多いですが、症状が中等度以上の場合や、緊急を要する場合には手術が行われます。
虫垂炎は早期に適切な治療を開始することで良好な経過をたどりますが、治療が遅れることで重症化や命の危険にさらされることがあるので注意が必要です。
腹痛・下痢・嘔吐が気になる場合は一度受診を
腹痛・下痢・嘔吐の症状から考えられる疾患について解説しました。
胃腸炎は特効薬がなく、重篤な場合には点滴などが必要なケースもあります。
また、急性虫垂炎は手術を要するケースもあります。
適切な診断と治療のためにも、こうした症状が出現した場合には、一度医療機関を受診するようにしてください。
→詳細は「内科 胃腸炎」をご参照ください
→詳細は「小児科 胃腸炎」をご参照ください
→詳細は「循環器内科 狭心症」をご参照ください