脂質異常症とは、脂質の代謝に異常が生じ、血液中の脂質の量が基準値から外れた状態になる疾患です。脂質異常症は、放っておくと動脈硬化を引き起こす原因になります。ここでは、脂質異常症の治療方法、今日からすぐできる改善方法などについて解説します。
脂質異常症とは?
脂質異常症とは、血液中の脂質の値が基準値から外れてしまう疾患です。昔は「高脂血症」と呼ばれていましたが、2007年に日本動脈硬化学会によるガイドラインの改訂に伴い、「脂質異常症」と変更されました。
脂質異常症には以下の種類があります。
脂質異常症は、食生活や運動不足などの生活習慣の乱れが原因で発症することが多い疾患ですが、遺伝による場合もあります。脂質異常症には目立った症状がほとんどなく、たいていの場合は、健康診断で指摘され気づきます。
2024年度の「特定健診・特定保健指導」から、中性脂肪の判定項目に従来の「空腹時」に加え、「随時(非空腹時)」が追加されることになりました。これは、たとえ空腹時に低くても食後に高ければ、脳梗塞や心筋梗塞などの合併症リスクが高まることがわかってきたからです。健康診断で脂質異常症を指摘されたら、早めに医療機関を受診するようにしましょう。
脂質異常症は治るのか?
脂質異常症は食事や運動で改善できる可能性があります。食事や運動で改善できない場合には、薬物療法を検討します。
1.食事で改善する
食生活では、以下のことに注意します。
- 食べ過ぎに注意する
- 栄養バランスのとれた食事を心掛ける
- 脂肪の摂り方に注意する
- 糖質やアルコールは適量を守る
決められた時刻に食事を摂り、よく噛んで「腹八分目」を心掛けることで、食べ過ぎはかなり防げます。栄養バランスのとれた食事というのは、炭水化物が60%、タンパク質が15~20%、脂肪が20~25%くらいの配分で、コレステロールを控え、食物繊維を多くとるような食事のことを言います。コレステロールは魚卵や卵黄、レバーやあん肝といったもつ類にも多く含まれているので注意が必要です。脂肪はバターや生クリーム、動物性脂肪に含まれる飽和脂肪酸の摂取を減らし、オリーブオイルや青魚などに含まれる不飽和脂肪酸の摂取の割合を増やしましょう。主食は精白度の低い穀類とし、主菜や副菜には、大豆、魚、野菜、海藻、きのこなどを揃えて食べるような、伝統的な日本食がおすすめです。栄養バランスのとれた食生活は継続することが大切ですから、おいしくして楽しく食べられる工夫をしましょう。
またどの脂質の値が基準値外であるかによって、以下のように心掛けるとよいでしょう。
【脂肪の種類ごとに特に注意すること】
基準値外の脂肪の種類 | 特に注意すること |
LDL-コレステロール値が高い | 飽和脂肪酸の多い肉の脂身や乳製品を控える。 |
HDL-コレステロール値が低い | トランス脂肪酸の多いマーガリンやファットスプレッド、ショートニングを控える。 |
中性脂肪値が高い | 糖質を多く含む菓子類は控える。 |
飲み物は、緑茶や麦茶、ウーロン茶などのお茶類やミネラルウォーターなどがおすすめです。脂肪分を含む牛乳は、1日コップ1杯を目安にし、糖質を多く含む清涼飲料水などは、控えましょう。
2.運動で改善する
運動で改善する場合には、有酸素運動を定期的に(毎日合計30分以上)するようにします。少し息が切れるが会話は可能程度の強さで運動を行うことが理想的です。
有酸素運動としては、以下のような、大きな筋肉をダイナミックに動かすものがあげられます。
- ウォーキング
- 速歩
- スロージョギング
- ベンチステップ運動
- 水泳
- エアロビクスダンス
- サイクリングなど
スロージョギングとは歩くような速度のジョギングのことです。1日の合計は30分以上、少なくとも週3日、できれば毎日するといいでしょう。
3.薬で改善する
生活習慣の見直しを3~6か月継続しても改善せず、動脈硬化症の恐れがある場合は、薬物療法を行います。薬物療法は長期間に及ぶため、自分が飲んでいる薬を理解し、これからどのような経過をたどる可能性があるかを把握しましょう。
今日からすぐできる脂質異常症の改善方法
ここでは、今日からできる脂質異常症の改善方法を紹介します。
1.間食や夜食、飲酒の回数を減らす
糖質やアルコールを多く摂取すると、中性脂肪を増やす原因になります。夜はエネルギー消費量が少ないため、食べたものがそのまま中性脂肪になりやすい状態になっていますので、注意しましょう。
2.とにかくたくさん歩く
ウォーキングには、中性脂肪を減少させ、HDLコレステロールを増加させる効果があるので、習慣的にすると脂質異常の予防や改善が期待できます。積極的に体を動かすようにしましょう。
3.十分な睡眠を確保してストレスをため過ぎない
長期間ストレスにさらされると、脂質代謝に関係しているホルモンが脂質をため込む方向に働くようになります。ストレスは適度に解消し、十分な睡眠時間を確保するようにしましょう。
脂質異常症は指摘されたらすぐに受診しましょう!
脂質異常症は静かに進行するけれども、動脈硬化性疾患を起こす可能性のある病気です。重い合併症を起こさないように、健康診断などで指摘されたら、すぐに受診しましょう。また、脂質異常症にならないように、食生活に注意し、定期的に運動をするようにしましょう。