鼻から粘り気のある鼻水がのどに流れることを後鼻漏といいます。
いくら鼻をかんでも、のどに鼻水が流れ込んで不快感が残る場合は、食事や睡眠といった日常生活に影響するため、治療を受ける必要があります。
ここでは、後鼻漏の症状や特徴、原因や治し方について詳しく解説します。
後鼻漏とは?症状について
後鼻漏とは、鼻からのどの奥に鼻水が流れることをいいます。
健康な人でも鼻水が作られ、のどに流れていますが、鼻水がサラサラしているので気になることはありません。
後鼻漏では、大量に発生した鼻水や粘りのある鼻水、膿のような鼻水がのどに下ります。
そのため、通常の鼻水がのどの奥に流れるときとは異なり、ひっかかるような違和感があります。
また、鼻水がのどに溜まると口から吐き出すか、飲み込むかになるため、不快感がとても大きいという特徴があります。
人によっては、後鼻漏で食事や睡眠が困難になることがあり、日常生活にも支障が出るので早めに治療を受けるようにしましょう。
鼻水以外ののどの症状
後鼻漏が原因で、のどに強く症状が出ることがあります。
- のどの違和感
- 咳
- 痰がからむ
特に、飲み込む能力の嚥下(えんげ)機能が低下している高齢の方では、痰のような鼻水がのどに引っかかりやすくなります。
後鼻漏の原因
後鼻漏の原因でよくみられるのは「鼻炎」や「鼻炎の症状がある病気」です。
後鼻漏のきっかけとなる鼻炎や鼻炎を引き起こす病気は、以下のとおりです。
- 副鼻腔炎…鼻の穴の周囲にある空洞(副鼻腔)に炎症が起こり、膿がたまる病気です。たまった膿が鼻の中にあふれて流れるため、鼻水の量が増え、粘りが出てきます。
- アレルギー性鼻炎…鼻の粘膜からアレルギーの原因物質が侵入し、鼻水やくしゃみを起こす病気で、鼻水が大量に流れ出します。
- 上咽頭炎…細菌やウイルス感染により炎症が起こった状態で、のどの奥を中心に様々な症状が起こり、後鼻漏の原因となります。
- 風邪症候群
鼻炎をそのまま放置すると、後鼻漏に移行することがあります。鼻炎は身近な症状ですが、きちんと治療を受けるようにしましょう。
粘膜の炎症で後鼻漏感になることも
鼻やのどに引っかかりを感じても、実際には何もないことを「後鼻漏感」といいます。
鼻の奥にポリープ(鼻茸 はなたけ)があったり、胃酸でのどの粘膜が荒れたりすると、後鼻漏感があらわれやすくなります。
後鼻漏の治療
後鼻漏の治療は、大きく分けて以下の方法で行われます。
①原因疾患の治療
症状を改善するため、まず後鼻漏の原因である鼻炎を治療します。
- 副鼻腔炎の場合…抗生剤の内服
- アレルギー性鼻炎の場合…抗アレルギー薬の内服、舌下免疫療法、レーザー手術(他院紹介)、ボツラックス治療(自費診療)
対療法
発症してすぐの後鼻漏は治りやすいですが、発症から1年以上経つと慢性化することもあります。
治りにくい後鼻漏には、以下のような対症療法を行います。
- 保湿成分配合の点鼻薬の投与
- マスクの着用
後鼻漏のセルフケア
後鼻漏が慢性化すると、完全に治癒するのが難しくなります。
治りにくい後鼻漏では、症状のコントロールが大切になります。毎日の生活の中でできるセルフケアについて解説します。
鼻うがいをする
鼻うがいは、鼻の穴から生理食塩水を流して、鼻腔内を洗浄する方法です。
鼻うがいの方法は次のとおりです。
- 前かがみになり、洗浄液を流し入れる
- 反対の鼻の穴から流す(難しい場合は、同じ鼻の穴から流してもよい)
- 反対の穴を洗浄したら、鼻をかんで完了
鼻うがいで鼻の中を洗浄するときに、水道水を使うのはおすすめできません。
水温が冷たいと鼻の粘膜への刺激が強くなるからです。
鼻うがいをするときは、体液と浸透圧のほぼ等しい生理食塩水を使うようにしましょう。
カフェインの摂取を控える
後鼻漏で、のどのつかえ感がある人は、カフェイン入りの飲み物を摂りすぎないようにしましょう。
カフェインには、体の水分の排出を促す作用があります。
体が脱水傾向になると、鼻水の粘り気も増加し、のどのつかえ感や咳が悪化することがあります。
後鼻漏の症状が強いときは、カフェイン入りのお茶やコーヒーをほどほどの量に抑えましょう。
漢方薬の効果について
後鼻漏の症状を緩和するために、次のような漢方薬が使われることがあり、服用により後鼻漏の改善がみられることもあります。
- 葛根湯(かっこんとう)
- 桂姜棗草黄辛附湯(けいきょうそうそうおうしんぶとう)
後鼻漏の疑いで来院された方の、当院での診療の流れ
①問診
鼻汁、鼻閉の有無、鼻水の色などを確認します。
鼻水が黄色く、痰が絡んでいる場合は、後鼻漏である可能性が高いと考えられます。
②身体診察
あらゆる原因を考え、医師が丁寧に診察を行います。
③検査
レントゲンを撮影し、肺の異常がないか確認します。
採血を行い、アレルゲンの検索を行うこともあります。
④処方(重症の場合は専門医療機関へ紹介)
アレルギー性鼻炎が原因で後鼻漏をきたしている場合は、抗ヒスタミン薬や点鼻ステロイド等処方します。
鼻汁が黄色い膿性がある場合や副鼻腔炎がある場合は、抗菌薬を処方することもあります。
長く鼻閉が続く場合は鼻ポリープがある場合もあるので、耳鼻科に紹介することもあります。
後鼻漏は、しばしば長引く慢性咳嗽の原因になることがあります。
鼻水や鼻が詰まっているだけと思わずに、早めに治療することで、日常のQOL(生活の質)が大きく改善することが実感できるはずです。
クリニックプラスでは、平日は20時まで、土日祝日も後鼻漏の診療を行っております。
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