「頭が痛い」という症状は、比較的多くの方に経験のあるもので、慢性化して悩んでいる方も少なくありません。
「頭痛くらいで病院に行くのは面倒」と感じるかもしれませんが、頭痛は生活の質(QOL)を大きく下げてしまいます。
しっかりと原因を見極めて、適切な治療で、快適に過ごせるようにしていきましょう。
頭痛の原因として考えられるもの
頭痛の原因として、ここでは以下の疾患をご紹介します。
- 緊張型頭痛(きんちょうがたずつう)
- 片頭痛(へんずつう)
- 風邪(かぜ)
- 髄膜炎(ずいまくえん)
- 副鼻腔炎(ふくびくうえん)
緊張型頭痛
緊張型頭痛は、慢性的な頭痛の中でも悩まされている方が最も多く、約40%の方が罹患していると推定されるほどよくある頭痛です。
頭痛は30分程度でおさまることもあれば、最長で7日ほど続くこともあります。
頭がぎゅーっと締め付けられるような痛みが特徴です。
片頭痛との違いとして、寝込むことは少ない・入浴などで温めると楽になることが多いという点があります。
以下の項目を満たす場合は、緊張型頭痛の可能性が高いでしょう。
(1)30分〜7日間続く頭痛
(2)頭痛の特徴が以下の項目の2つ以上にあてはまる
a.頭の両側が痛い
b.圧迫されるような、あるいは、しめつけられるような痛み
c.軽度〜中等度の痛み
d.歩いたりなどの日常動作で頭痛が悪くなるようなことはない
(3)以下の両方があてはまる
e.吐き気をもよおしたり、吐いてしまうようなことはない
f.光や音が原因で頭痛が増悪することはあっても、光か音のどちらか一方のみ
緊張型頭痛は、次に紹介する片頭痛と合併することもあり、状態に合わせて治療をする必要があります。
どんな頭痛が、どのくらいの時間続いたか、何をすると楽になったか、などを記録しておくと診療の助けになります。
緊張型頭痛の治療では、体の緊張をやわらげるような薬を使いつつ、軽い運動やストレッチなどで体をほぐすことも有効です。
片頭痛
片頭痛も、日本では10人に1人程度の罹患率(りかんりつ)と考えられており、よくある頭痛の1つです。
高齢になってから片頭痛を発症することはあまりないので、「高齢になって頭痛に悩まされるようになった」という場合には、別の要因を調べる必要があるでしょう。
更年期には、ホルモンバランスの変化によって片頭痛の悪化が見られる場合があります。
光や音によって頭痛が悪化したり、脈打つようなズキズキとした痛みが出たりするのが特徴で、寝込むほどひどくなる方も少なくありません。
血管が広がったときに周囲の神経を刺激して、頭痛が起きると考えられています。
そのため、入浴などで体を温めると悪化することが多いです。そのほか、匂いや光・音・疲労・寝不足・チーズ・ワイン・カフェイン・気圧の変化などが、悪化の要因となりえることが知られています。
ご自身の悪化の要因を探り、できるだけ避けて過ごしましょう。
人によっては、頭痛が起こりそうだという前兆を感じることもあります。
・目の前がチカチカする(閃輝暗点 せんきあんてん)
・感覚が鈍くなる
・感覚が鋭くなってチクチク感じる
・言葉が出にくくなる
・脱力感
・めまい
・イライラする、集中できない
片頭痛の場合、頭痛の頻度には個人差があり、ごくまれの方もいれば、毎日のように痛む方もいます。
近年、新しい片頭痛治療薬がいくつか承認され、片頭痛に悩む方の生活の質が大きく改善されるようになってきました。
片頭痛は「治せる頭痛」になりつつあります。つらい頭痛は我慢せずに医療機関で受診しましょう。
適切な診断・治療につなげることが大切です。
風邪
風邪と聞くと、発熱や咳・のどの痛みなどをイメージすると思いますが、頭痛を伴うこともあります。
咳やのどの痛み、鼻水などの上気道症状がはっきりとある場合は、多くは発熱に伴って出現する頭痛で、風邪による頭痛を強く疑います。
風邪による頭痛であれば、頭痛薬などの対症療法で十分ですが、高熱を伴う場合、髄膜炎などの見逃してはいけない病気が隠れている可能性もあるので注意が必要です。
強い頭痛を認めるような場合には、自己判断で風邪と思わずに医療機関で受診し、適切な診断・治療を受けるようにしましょう。
髄膜炎
発熱に加え、今までに感じたことのないような頭痛を認める場合は、髄膜炎かもしれません。
髄膜炎は、脳や脊髄(せきずい)を覆っている髄膜(ずいまく)に生じた炎症です。
通常、髄膜や髄液(髄膜の内側にある液体)にはウイルスや菌・カビ(真菌)は存在しませんが、何らかのきっかけで侵入・増殖することで、髄膜炎を発症します。
一般的に、こどもはウイルスによる髄膜炎が多く、予後はよい傾向にあります。
一方、高齢の方や免疫機能が低下している方の場合、細菌による髄膜炎のリスクが少し高くなります。
髄膜炎に特徴的な症状は「頭痛・発熱・首の硬直(こうちょく)」の3つですが、すべてが必ず生じるわけではありません。
そのほか、吐き気や光のまぶしさを感じたり、意識が朦朧(もうろう)としたりする場合もあります。
特にぐったりしている場合や、吐き気を伴う場合、意識障害がある場合には、積極的に髄膜炎を考える必要があります。
髄膜炎を疑った場合には、腰椎穿刺(ようついせんし)という検査を行って、髄液を調べる必要がありますので、髄液検査が可能な医療機関を速やかにご紹介します。
副鼻腔炎
鼻の周辺にある副鼻腔(ふくびくう)という空洞に、細菌が繁殖して炎症を起こし、膿が溜まった状態が副鼻腔炎(蓄膿症 ちくのうしょう)です。
副鼻腔炎の状態になると、鼻づまりや鼻水がのどへ垂れてくるような感覚がしたり、頭痛を伴ったりする場合があります。
副鼻腔は、頬や額の裏側、鼻の奥などに存在するため、副鼻腔炎による頭痛は「頭の前方」が痛みます。
風邪に続いて起こる副鼻腔炎も、通常は1〜2週間程度で自然に改善しますが、症状がつらい場合には鼻の吸入薬や内服治療なども可能です。
元々鼻炎がある方、喫煙する方、肥満の方、喘息や気管支炎のある方などは、副鼻腔炎を起こしやすいので注意が必要です。
頭痛は我慢せず受診を
慢性的な頭痛は生活の質を大きく損なってしまいますが、原因がわかれば対処可能です。
特に片頭痛は、よい治療薬も承認されており、治る頭痛になってきています。
風邪に伴って頭痛を感じることも多いですが、意識が朦朧としたり、強い頭痛や吐き気を伴ったりするような場合には、髄膜炎を起こしている可能性もあるため、医療機関で受診し、適切な診断・治療を受けるようにしましょう。
→詳細は「内科 風邪」をご参照ください
→詳細は「内科 片頭痛・緊張性頭痛」をご参照ください
→詳細は「小児科 風邪」をご参照ください