結核とは、結核菌が体の中に入って増えることで起きる病気です。
結核の中で一番多いのは、肺で炎症が起きる「肺結核」で、咳やくしゃみを介して人にうつっていきます。
はじめは風邪(かぜ)と症状が似ていますが、治療せずに放置すると死につながるかもしれません。
ここでは、結核の症状から治療法までを解説します。
結核とは
結核は、抗酸菌の1つである「結核菌」が体の中に入って増えることで起きる病気です。
抗酸菌とは、検査のために細菌を色素で染めたとき、酸で脱色しない性質を持つ菌のことです。
結核は昔の病気と思われがちですが、日本では現在も毎年約10,000人以上が新たに結核を発症し、約1,600人が亡くなっています。
結核の歴史
結核の歴史は非常に長く、紀元前の人骨から骨結核のあとが見つかっており、かなり昔から存在する病気であることがわかっています。
結核菌は1882年に発見され、そこでようやく結核が感染症であると証明されました。
日本では、明治以降の産業革命による人口集中とともに結核が広がり、1950年頃まで結核は日本人の死亡原因の第1位でした。
その後「結核予防法」が施行され、BCGワクチンの普及や生活水準の向上などによって、結核による死亡者・死亡率は減少していきました。
結核はうつる!感染経路とは
結核はうつる病気です。
結核菌はとても小さいので、咳やくしゃみと一緒に外に出ると、なかなか下に落ちずに空気中を漂っています。
その間に、他の人が結核菌を吸い込んで、結核に感染します。
ここで注意したいのは、食器についた菌による間接感染は起きないということです。
結核患者が使った食器は、通常の洗浄でよいとされています。
結核の感染と発症
結核に感染したからといって、必ず発症するわけではありません。
結核に感染した人のうち、発症するのは5~10%です。
健康で体力があるときには、人の体は結核に感染しても発症せずに抑え込めますが、病気で免疫が低下していると、結核菌が活発に活動して発症してしまいます。
結核を放っておくと
結核菌をいったん抑え込んでも、病気などで免疫が低下すると、以前に感染していた結核菌が活動的になり、発症する場合があります。
結核は放っておくと、症状が悪化し、肺だけでなく他の臓器にも広がって、死亡する場合があります。
また、周りの人にもうつしてしまい、感染拡大につながります。
ほとんどは適切に治療を行えば治るので、「結核かも」と思ったら、放置せずに医療機関で受診しましょう。
結核の症状と検査
結核の症状と検査方法について解説します。
結核の症状
結核は、長引く咳や痰といった、風邪と似た症状から始まります。
それ以外に、胸痛・倦怠感・食欲不振・体重減少・発熱・寝汗などがみられます。
結核の検査
結核に感染しているかどうかを調べるには、2つの方法があります。
ツベルクリン反応検査では、皮内注射をして注射部位の反応を調べます。
ただし、注射した部位が赤く腫れた場合でも、結核菌や結核菌に似た細菌に感染しているのか、またはBCGワクチンの影響がでているだけなのか、判別できません。
そこで、結核菌に感染していることを確認するために、インターフェロンγ(ガンマ)遊離試験が行われる場合もあります。
ツベルクリン反応検査と違って、血液検査で調べられ、BCGワクチンの影響を受けません。
さらに結核が発症しているかに関しては、胸のレントゲン検査で肺の異常を確認したり、痰の中に抗酸菌がいるかどうかを調べる喀痰培養(かくたんばいよう)検査を行ったりします。
結核の治療
結核の治療の基本は、薬の内服です。
治療には、イソニアジド、リファンピシン、ピラジナミドの3種類の薬に、エタンブトールかストレプトマイシンを含めて、合計4種類の薬を2か月間内服します。
その後は、イソニアジドとリファンピシンの2種類の薬を中心とした治療を4か月間続け、合計6か月間治療を行います。
治療の途中で薬の内服をやめてしまうと、結核菌が薬に対して耐性をつくり、薬が効かなくなる場合があります。
処方された薬は確実に内服することが大切です。
WHOは、確実に薬を内服してもらうために「直接服薬確認療法(DOTS:Directly Observed Treatment Short course)」を勧めています。
DOTSとは、薬を患者に渡さずに、毎日外来に来てもらって、スタッフの前で薬を内服してもらう方法です。
医療機関のスタッフが薬の内服をサポートすることで、途中で薬の内服をやめる人が減ってきました。
必要な薬を、必要な期間、しっかり内服する、これが結核の治療においてとても重要です。
結核の予防
結核の予防は、主に4つあります。
- 健康診断を受ける
- 結核患者とは、マスクなしで長時間会話するなどの接触を避ける
- 結核に感染している人は、発症予防のための薬を内服する
- BCGワクチンによる予防接種を受ける
健康診断を受けると胸のレントゲンを撮るので、結核の早期発見につながります。
結核は、咳やくしゃみを介して結核菌を吸い込むことで感染するので、マスクなしで長時間会話するような接触を避ける必要があります。
また、感染がわかった時点で薬を内服して、結核の発症の予防を行います。
イソニアジドを6~9か月間毎日飲み続けることで、発症のリスクを約3分の1に抑えられます。
BCGワクチン
BCGワクチンによる予防接種も、結核の重要な予防法の1つです。
現在、日本では、生後1歳未満(標準的な接種は生後5~8か月の間)の乳幼児に、BCGワクチンの定期接種が行われています。
BCGワクチンの副反応は、リンパ節の腫れや皮膚症状などの軽度な反応から、骨炎やアナフィラキシーといった重大な反応まであります。
通常は、接種してから5~6週間後に、針を刺したあとが赤くなり、その後化膿してかさぶたを作ります。
接種してから1週間~10日以内に同じような症状がみられた場合は、注意が必要です。
結核菌や結核菌に似た細菌に感染している可能性があるので、早めに医療機関で受診しましょう。
乳幼児は、まだ抵抗力が弱く、重症化しやすいので、BCGワクチンによる予防が大切です。
BCGワクチンは、小児の結核の発症を52~74%減らすことが報告されています。
ただし、BCGワクチンの結核予防効果は10~15年なので、成人の結核に対する予防効果は小児ほどは高くないとされています。
定期的に健康診断を受け、「結核かも」と思ったら放置せずに、医療機関で受診するようにしましょう。
結核の疑いで来院された方の当院での診療の流れ
①問診・診察
過去に結核にかかったことがないか、結核を疑うような症状がないかなど、丁寧に問診・診察を行います。
幼少期に長期間の服薬や入院の経験がある場合には、結核の治療を受けていた可能性があります。
事前にご家族に確認をとっておくとよいでしょう。
②検査
まずはレントゲンで結核を疑う影がないかを確認します。
わかりにくい場合はCTを撮影することもあります。
最終的な診断は喀痰培養検査が必要ですが、当院では行っていません。
③専門医療機関へ紹介
画像検査で結核が疑われた場合には、結核の治療を行っている専門の医療機関へ速やかに紹介します。
結核は早期診断が難しく、気づいた時には周囲に感染を広めている可能性があります。
疑う症状があれば当院にご相談ください。
クリニックプラスでは、平日は20時まで、土日祝日も診療を行っています。
お気軽にご相談にいらしてください。