むくみとは顔や手足が腫れているような状態のことですが、東洋医学ではエネルギーが不足して、水が滞っている状態のことをいいます。このエネルギーと水のバランスを整えるのに漢方薬は効果的です。ここでは、むくみに漢方薬が良い理由、むくみに効くおすすめ漢方薬などについて解説します。
むくみとは?
むくみとは、赤みや痛みを伴わずに、顔や手足が腫れているような状態のことです。アルコールを飲んだ翌朝に顔がパンパンになる、夕方になると靴がきつくなる、長時間歩くとふくらはぎが張ったような感じがするなど、人によってむくみのあらわれ方はいろいろです。
むくみとは?
東洋医学では、むくみは「体の中で水分が滞っている状態」と考え、「水毒(すいどく)」と呼んでいます。むくんでいる部分の水分は、血管から血液中の水分が外に出たものです。ある部分の細胞周りに水分が溜まることで、むくみの状態になります。
むくみの原因は?
むくみの原因には、以下のようなものがあげられています。
- 筋力低下
- 長時間の同じ姿勢
- 水分や塩分の摂り過ぎ
- 冷え
- ストレス
- 女性ホルモン
運動不足やそれに伴う筋力低下があると、むくみます。なぜなら、収縮と弛緩を繰り返す筋肉には血液やリンパ液を循環させる筋ポンプ作用もあるのに、十分に働かなくなるからです。長時間同じ姿勢だと、血液やリンパ液の流れが滞ってしまい、むくみが起きます。
水分や塩分を摂り過ぎてもむくんでしまいます。塩分を摂り過ぎてもむくんでしまうのは、体の塩分濃度を薄めるために、水分を溜め込むようになるからです。ストレスがたまると交感神経が優位になり血行不良をまねくので、水分も滞りやすくなります。女性ホルモンが関係している月経前に、手足や顔がむくむという方もいます。
むくみに対する西洋医学と東洋医学
むくみの治療法は、西洋医学と東洋医学で違います。
西洋医学でむくみに使うのは、医師が処方した利尿薬などです。利尿薬は、体の余分な水を尿として排泄するのを促します。一方、東洋医学で治療に使うのは漢方薬です。漢方薬は生物由来の生薬を複数組み合わせた処方でむくみを改善します。
むくみに漢方薬がいい理由
東洋医学では、人の身体は以下の「気(き)」「血(けつ)」「水(すい)」からできていると考えられています。
【気・血・水とは】
要素 | 働き | |
気 | エネルギー | 身体を支える原動力 |
血 | 血液 | 身体の器官や組織に栄養を与える |
水 | リンパ液などの体液や汗 | 摂取した飲食物の水分を消化吸収し、身体を潤す |
望ましい人の体とは、気血水が過不足なく、巡っている状態とされています。東洋医学におけるむくみとは「気」が不足して、「水」が滞っている状態のことです。この「気」と「水」のバランスの乱れを整えるのに漢方薬は効果的です。
むくみに効くおすすめ漢方薬
ここでは、むくみに効く漢方薬を3つ解説します。
水の巡りを良くするには五苓散(ごれいさん)
五苓散は、余分な水を排出することで、水を滞りなく流れるようにする漢方薬です。胃腸の働きを高めながら、水分バランスを整えます。一時的に不要な水(すい)が体にたまっているときに良い漢方薬で、急性胃腸炎や下痢、吐き気にも使われます。雨や台風など、低気圧が来る前に頭痛がするという人にも有効です。
腰痛や冷えのある下半身のむくみには真武湯(しんぶとう)
腎と脾の機能を改善することで「水」の巡りをよくするとともに体を温める働きのある生薬からなる漢方薬です。体質虚弱気味で、水の巡りが悪く、冷えのある方のむくみや足腰の重だるさ、下痢や腹痛などに使います。他にも、腎の働きの改善を優先するなら牛車腎気丸やその関連薬、脾の働きの改善を優先するなら茯苓飲などが候補に挙がります。
水分の偏りを失くして体を温めるには当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)
当帰芍薬散は、やせていて体力のない人の冷え症などに使う漢方薬です。不足している「血」を補い、流れを良くし、水分が滞らないように整えて、体を温めます。
「血」が不足することは月経不順や貧血の原因となりますが、「血」を補うことで月経不順の改善だけでなく、月経痛の改善も期待できます。
その他、以下の様な症状にも効果があります。
- 更年期障害
- 産前産後もしくは流産による障害
- めまいや立ちくらみ
- 肩こり
- 冷え性 など
むくみで漢方を服用する場合の注意点
漢方薬を安全で効果的に服用するための注意点について解説します。
1.自己判断での服用に注意
同じ症状でも、体質によって、適する漢方薬は違います。適さない漢方薬を服用すると、思わぬ作用が出たり、副作用が出やすくなったりする可能性があります。自己判断で漢方薬を服用するのは控え、医師の診察を受けましょう。漢方薬は保険診療で十分な効果を期待できます。
2.漢方薬の副作用
漢方薬も薬なので、副作用は皆無ではありません。普段と違う、気になる症状が現れた場合には服用を中止して、すぐに医師の診察を受けてください。
むくみなどで気になる症状があれば受診を
むくみがあり、以下のような場合は、治療が必要な可能性があるので、医療機関を受診しましょう。
- 高血圧で治療していない
- 尿量が極端に少ない
- 胸の苦しさを感じる
上記に該当しなくても、むくみなど気になる症状がある方は、お気軽に医師にご相談ください。