「糖尿病に漢方薬は効果があるの?」と気になっている方もいるのではないでしょうか。糖尿病における漢方薬は、糖尿病の症状の改善、血糖値が上がりやすい体質の改善などに有効と考えられています。
適切な検査や治療を受けずに、糖尿病の治療のために漢方薬のみを利用することは推奨できません。本記事では、糖尿病における漢方薬の役割や利用されている漢方薬などを解説します。
糖尿病治療における漢方薬の役割
糖尿病治療において漢方薬だけで血糖値をコントロールするのは難しいです。糖尿病における漢方薬の役割は下記の通りです。
- 糖尿病の症状の改善
- 肥満の改善
- 合併症の発症または進行予防
前提として、必要な検査を受けて薬物療法や食事療法、運動療法を実施する必要があります。
【病状別】糖尿病に効く漢方薬とは?
漢方薬において糖尿病は消渇(しょうかち)といいます。そして、糖尿病の進行状況を下記のように分類します。
- 上消(じょうしょう):発症初期、軽症で多飲が主体
- 中消(ちゅうしょう):発症中期、中等症で多食が主体
- 下消(かしょう):発症後期、重症で多尿が主体
漢方薬は患者さんそれぞれの体質や病状に沿ったものを選択する必要があります。ここでは病状別に代表的な漢方薬について解説します。
上消|喉が乾き水を多く飲む
上消は東洋医学的に熱の所在が肺にあり、乾きを感じる状態です。食べ過ぎや飲み過ぎなどの不摂生、ストレスなどが原因とされています。
口渇(こうかつ:のどが乾く症状)や多飲(たいん:水分を多量にとってしまう症状)、多食(たしょく:たくさん食べてしまう症状)、多尿(たにょう:たくさん尿が出る症状)、痰、空咳などが主な症状です。
上消の際に使用が検討される漢方薬は下記の通りです。
漢方名 | 効果 | 副作用 |
白虎加人参湯(びゃっこかにんじんとう) | のどの渇きやほてりを改善する | 血圧の上昇、むくみ、体重の増加、脱力感、手足のけいれんなど |
滋陰降火湯(じいんこうかとう) | のどにうるおいがなく、痰がでなくて咳き込む症状を改善する | |
麦門冬湯(ばくもんどうとう) | 痰の切れにくい咳を改善する | 咳、呼吸苦、発熱など |
中消|すぐに空腹になり多量に食事をする
中消とは、東洋医学的に熱の所在が脾胃(ひい:胃腸のこと)にあり、消化器の機能に異常が起きている状態です。食べ過ぎや飲み過ぎなどの不摂生、ストレスなどが原因で、過食や口臭、喉の渇き、口内炎、胸やけ、多汗、のぼせ、便秘などが主な症状です。
中消では、白虎加人参湯の他に下記の漢方薬の利用が検討されます。
漢方名 | 効果 | 副作用 |
防風通聖散(ぼうふうつうしょうさん) | 肥満やむくみ、便秘などを改善する | 血圧の上昇、むくみ、体重の増加、脱力感、手足のけいれん、咳、呼吸苦、発熱など |
下消|水分が吸収できず尿が増える
下消とは、東洋医学的に熱の所在が腎臓にあり、体に必要な水分が吸収できておらず尿量が増えている状態です。糖尿病の長期化により病状が悪化の経過をたどっています。多尿や多飲、頻尿、尿のにごり、だるさ、のぼせ、手足のほてり、寝汗などが主な症状です。
漢方名 | 効果 | 副作用 |
六味地黄丸(ろくみじおうがん) | 頻尿やむくみなどを改善する | 食欲の低下、胃の不快感、吐き気、嘔吐、下痢など |
八味地黄丸(はちみじおうがん) | 頻尿やだるさ、のどの渇きなどを改善する | 発疹(ほっしん:体にブツブツなどができる症状)、発赤(ほっせき:体が赤くなる症状)、かゆみなど |
牛車腎気丸(ごしゃじんきがん) | 頻尿やむくみ、手足のしびれなどを改善する | 咳、呼吸苦、発熱など |
糖尿病治療で漢方薬を活用する際の注意点
糖尿病治療で漢方薬を活用する際の注意点は、漢方単体では血糖値を下げる効果は不十分であることです。漢方の生薬である人参(にんじん)、山薬(さんやく)、地黄(じおう)、麦門冬(ばくもんどうとう)、麻子仁(まにしん)、牡丹皮(ぼたんぴ)、葛根(かっこん)などには、血糖値を下げる効果があると考えられています。
発症初期の2型糖尿病において、血糖値を下げる漢方薬が有効であったという報告も存在します。しかし、前述した通り漢方薬単体での治療は推奨できません。また糖尿病に効くからといって、自己判断で漢方を内服するのは控えてください。糖尿病予備軍の方や発症している方は、医療機関を受診して適切な治療を受けましょう。