RSウイルス感染症(Respiratory Syncytial Virus)は、こどもがかかることの多い感染症ですが、大人も感染することがあり、ときに重症化する場合もあります。
2024年1月に、RSウイルスワクチンである「アレックスビー」が発売になりました。
これまでRSウイルスの予防は、基本的な感染対策が中心でしたが、今後60歳以上の方はアレックスビーの接種によって、感染を予防できる可能性があります。
ここでは、アレックスビーの特徴と効果について解説します。
RSウイルス感染症とは
RSウイルス感染症は、一般的にはこどもがよくかかる病気で、何度も感染を繰り返します。
発熱・鼻水・咳のような風邪症状がほとんどですが、重症化すると気管支炎や肺炎になってしまうこともあります。
特に、生後6か月までの赤ちゃんが感染すると重症化しやすく、大人の場合も高齢者や基礎疾患(喘息・慢性閉塞性肺疾患 まんせいへいそくせいはいしっかん・心疾患・糖尿病)のある人、免疫機能が低下した人は、重症化のリスクがあります。
子どものRSウイルス感染症や大人のRSウイルス感染症については、以下の記事で解説しています。
小児で重症化しやすいRSウイルス感染症
大人のRSウイルス感染症 高齢者では重症化しやすく要注意
RSウイルス感染症には効果的な薬がないため、主な治療法は症状を緩和するための対処療法になります。
必要に応じて解熱剤や咳止めが処方されたり、呼吸を楽にするために入院して酸素吸入を行ったり、水分確保や全身管理のために点滴したりする場合もあります。
これまでの予防は、基本的な感染対策
RSウイルス感染症のこれまでの予防は、手洗い・うがい・マスクの着用のような基本的な感染対策が中心でした。
2024年1月にRSウイルスワクチンが発売され、60歳以上の方はワクチンによって感染を予防できるようになりました。
アレックスビーとは
アレックスビーは、60歳以上の方に使用するRSウイルス感染症のワクチンで、1回0.5mLを筋肉内に接種します。
高齢者の肺炎の原因となるインフルエンザや肺炎球菌には治療薬があるのに対して、RSウイルスには治療薬がないため、予防が重要になってきます。
家族間で小さいこどもが感染しても、ワクチンを接種しておくとRSウイルス感染のリスクを減らせるので、60歳以上の人で小さいお子さんやお孫さんと接する機会が多い方は、アレックスビーの接種を積極的に検討してみてはいかがでしょうか。
アレックスビーは組換えタンパクワクチンで、不活化ワクチンに分類される
ワクチンには、生ワクチンや不活化ワクチン、mRNAワクチン、組換えタンパクワクチン、トキソイドなどの種類があります。
この中でも不活化ワクチンは、感染力を失ったウイルスや細菌を接種して、自分の体に免疫を獲得させるワクチンです。
一方で、組換えタンパクワクチンは、ウイルスや細菌の持つタンパク質の一部と、ワクチン効果を高めるために使用されるアジュバンド(補助剤)を組み合わせてつくられたワクチンです。
ウイルスや細菌そのものを使用するわけではありませんが、組換えタンパクワクチンは不活化ワクチンの一種とされています。
アレックスビーは、RSウイルス表面のタンパクの一部を使って作られた組換えワクチンで、不活化ワクチンの一種です。
アレックスビーの費用は?
現在、アレックスビーは任意接種のワクチンのため、費用は原則個人が負担するようになっており、1回あたり27,500円(税込)です。
現時点での効果は、2~3年続くといわれています。
アレックスビーの効果
アレックスビーのワクチン効果をみていきましょう。
60歳以上で、RSウイルスに感染し、症状が出るリスクを約1/5程度に減らせる
RSウイルス感染による咳・痰・呼吸困難のような呼吸器症状の予防に対して、アレックスビーは有効性が検証されています。
RSウイルス感染症に対する効果は、60歳以上全体で82.6%、基礎疾患のある60歳以上で94.6%でした。
60歳以上で、RSウイルスに感染し症状が出るリスクを約1/5程度に減らせるといえます。
アレックスビーの副反応
筋肉注射のため、アレックスビーの副反応は、「注射を打った部位の痛み」が最も多く、赤くなったり腫れたりすることもあります。
また、効果のある成分を含まないプラセボと比較して、頭痛・疲労・関節痛・筋肉痛などの副反応も多い傾向にあります。
アレックスビーの接種対象者
2024年1月時点で、60歳以上の方を接種対象者としています。今後、接種対象者は拡大していく可能性もあります。
気になる場合には、医療機関に問い合わせをしてみましょう。
アレックスビー接種時の注意点
アレックスビーを接種する時には注意点があります。
基本的には他のワクチンと同じですが、しっかり確認してから接種するようにしましょう。
接種できない人
- 発熱している人や現在病気にかかっている人
- アレックスビーの成分に対して、全身性のアレルギー反応が出るアナフィラキシー症状を起こしたことのある人
- 医師の判断で接種しない方がよいと判断された人
接種する前に医師に相談した方がいい人
- 心臓血管系・腎臓・肝臓・血液などの基礎疾患のある人
- 過去の予防接種で発熱やアレルギー反応がでたことのある人
- アレックスビーの成分にアレルギーを起こす可能性のある人
- 過去にけいれんを起こしたことのある人
- 出血しやすい、または血を固まりにくくする治療を受けている人
- 自分の免疫能力が低下して、ワクチンを接種しても十分な抗体を作ることができないような免疫不全の状態にある人
接種後の注意点
- 接種後30分間は、できるだけ接種した医療機関にとどまり、安静にして様子をみましょう。
- 接種した日は激しい運動を避けましょう。
- 接種した日に入浴してもいいのですが、接種部位を強くこすらないように注意して、清潔を保ちましょう。
- 体調がいつもと違うと感じたら、すぐに医師の診察を受けるようにしましょう。
他のワクチンとは間隔をあける?
アレックスビーは不活化ワクチンに分類されるため、新型コロナウイルスワクチン以外の他のワクチンとは、間隔をあける必要はなく、同時に接種できます。
新型コロナウイルスワクチンとは、2週間以上間隔をあけるようにしましょう。
アレックスビーは、小さいお子さんやお孫さんと接する機会が多い60歳以上の方におすすめのRSウイルスワクチンです。
アレックスビーを接種して、RSウイルスの感染を予防しましょう。
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