百日咳は、けいれんによって引き起こされる咳発作や長引く咳が特徴です。
これまでは、子どもの感染が多く報告されてきましたが、最近では大人の感染も増加傾向にあります。
特にワクチン未接種の人や接種後に時間が経過している人は要注意です。
ここでは、百日咳の症状から治療法と予防までを解説します。
百日咳とは
百日咳は、百日咳菌による感染が原因で起こる急性の気道感染症です。
風邪症状から徐々に激しい咳が出るようになり、百日咳特有のけいれん性の咳発作が見られるようになります。
百日咳は、世界中で感染が報告されており、特に子どもの感染が多くを占めています。
1歳以下の乳児、特に生後6か月未満の乳児では重症化しやすく、亡くなってしまうこともあります。
2021年の日本における百日咳患者数(届出ガイドラインの診断基準を満たした百日咳患者数)は712例であり、最近では子どもだけでなく、大人の感染も報告されてきています。
百日咳はうつる?
百日咳は、うつる病気です。咳やくしゃみをした時に排出される分泌物を介して感染します。
特に感染初期は感染力が強く、症状に気づかないうちに感染を広げている可能性もあり、注意しなくてはなりません。
百日咳は、一度かかるとかからない?
百日咳は、一度かかっても再びかかることのある感染症です。
何度でもかかってしまう可能性があるので、子どもの頃かかったからといって、安心はできません。
また百日咳ワクチンの効果は、接種後約10年間と言われています。
ワクチン接種後に時間が経過している場合も、百日咳にかかる可能性があります。
百日咳の原因
百日咳は、百日咳菌が鼻やのどの粘膜に感染することで起こります。
百日咳の感染経路は?
百日咳の患者が咳やくしゃみをすると、百日咳菌の入った分泌物が排出されます。
百日咳は、排出された百日咳菌を吸い込むことで飛沫感染する場合と、手や食器などを介して接触感染する場合があります。
百日咳の症状
百日咳は、主に3期に分けられ、それぞれに特徴的な症状が見られます。
カタル期では、5~10日程度の潜伏期のあと、約2~3週間かけて軽いかぜ症状が徐々に強くなります。
特に感染力が強い時期です。
次の痙咳期(けいがいき)では、続けて短く激しい咳をした後、最後にヒューッという音をたてて、息を吸うような症状が見られます。百日咳に特徴的なけいれん性の咳発作です。
咳のために顔が真っ赤になったり、吐いてしまったりすることもあり、ひどい場合には無呼吸発作を引き起こすことがあります。
痙咳期も約2~3週間続きます。
その後回復期を迎え、2~3週間かけて徐々に回復していきます。
咳の症状が長引く場合もあり、完全に回復するのに数か月かかります。
また、百日咳は肺炎や脳症、中耳炎を合併する可能性があり、特に乳児では注意が必要です。
百日咳の検査・診断
百日咳の検査法は、大きく分けて3つあります。
- 菌培養検査
- 遺伝子検査
- 血清学的検査
菌培養検査では、まず「スワブ」という大きな綿棒のような検体採取キットを使って、鼻かのどを拭います。
拭った液を菌が成長しやすい環境に塗布し、菌を増殖させます。
これを培養といい、培養を7日間行った後に、百日咳菌に感染しているかどうかの判定を行います。
菌培養検査は、判定に時間がかかり、陽性の場合でも菌の量が少ない場合にはなかなか陽性になりにくい傾向があります。
咳が出始めてから2週間以内ならば検査が可能で、抗菌薬を飲み始めている場合には検査ができません。
遺伝子検査では、菌培養検査と同じく、鼻かのどから拭った液を使います。
遺伝子検査にはLAMP法とPCR法があり、特にLAMP法は百日咳菌に対し高い検出感度を持っています。
検査方法も簡単で、検査結果が早くわかるというメリットがあります。
咳が出始めてから3~4週間以内であれば検査が可能です。
血清学的検査とは、血液を採取し抗体価を調べる検査になります。
抗PT-IgG測定法と、抗百日咳菌IgA-IgM測定法があり、ワクチン接種の影響を受けるかどうかの違いがあります。
抗PT-IgG測定法では、ワクチン接種によっても抗体の値が上昇するため、百日咳に感染しているのかワクチン効果なのかを判別しなくてはなりません。
一方、抗百日咳菌IgA-IgM測定法では、ワクチンの影響を受けません。
百日咳に感染後、抗体の値が上昇してくるのに2週間程度かかることから、咳の症状が出現してから2週間後から検査が可能です。
百日咳の治療・予防
百日咳は、早期にきちんと治療すれば治る病気です。
予防法は、日頃の感染対策に加えてワクチン接種も重要です。
百日咳の治療法は?
百日咳は、アジスロマイシンやエリスロマイシンといったマクロライド系の抗菌薬で治療します。
特に、カタル期にこれらの抗菌薬を飲むと、百日咳菌の排出が減って感染を広げる力を弱める効果があると言われています。
痙咳期でも、抗菌薬を飲むことは感染拡大を防ぐために有効です。
乳児が痰や鼻水で呼吸がしにくいときには、吸引や酸素投与を行います。
また、気管支を広げて呼吸を楽にする気管支拡張剤を使用したり、咳の症状を緩和するために咳止めを飲んだりする場合もあります。
百日咳特有のけいれん性の咳発作が見られたり、咳が長引いたりする場合には、早めに医療機関で医師の診察を受けるようにしましょう。
百日咳にかかったら仕事や学校は休む?
百日咳にかかったら、感染拡大を防止するためにも仕事や学校は休まなければなりません。
百日咳は、学校保健安全法において第2種の感染症に定められています。
「特有の咳が消失するまで又は5日間の適正な抗菌薬療法が終了するまで出席停止」とされています。
百日咳のワクチン
百日咳には、4種混合ワクチンと3種混合ワクチンがあります。
4種混合ワクチンは、百日咳・破傷風・ジフテリア・ポリオの4つの感染症に対するワクチンです。
生後2か月以降の乳幼児に接種することで、早期に感染を予防しています。
3種混合ワクチンは、百日咳・破傷風・ジフテリアの3つの感染症に対するワクチンです。
乳幼児への接種に加えて、11歳以上13歳未満の小児に対しては1回のみ追加接種が可能です。
百日咳のワクチンの効果は、接種後約10年間と言われています。成人に対しても追加接種が可能です。
百日咳は乳児が感染すると重症化しやすいので、家族は乳児にうつさないためにも追加接種を検討しましょう。
長引く咳で来院された方の、当院での診療の流れ
①問診
いつからどの様な症状が出ているか、診断・治療に必要な情報を集めるために、医師がいくつか質問します。
(LINEの事前問診にお答えいただくと、よりスムーズな診療を提供できますのでご協力ください)
②身体診察
呼吸音をみたり、リンパが腫れていないかなど、医師が丁寧に診察を行います。
百日咳は診断が難しいですが、咳の仕方に特徴があるので身体診察が重要です。
③検査
百日咳を疑った場合レントゲンや採血検査を行います。
1か月後に再検査をして、数値の変化を見る場合もあります。
④処方(重症の場合は専門医療機関へ紹介)
百日咳の治療の中心は、マクロライド系の抗生物質です。
その他症状に合わせて必要な薬を処方します。
百日咳は、けいれん性の咳発作と長引く咳が特徴です。
クリニックプラスは平日は20時まで、土日祝日も毎日診療しています。
気になる症状がある場合は、医師の診察を受けるようにしましょう。