胃腸炎とは?
胃腸炎は発熱に加えて、吐き気(嘔気 おうき)・嘔吐(おうと)・腹痛・下痢といった消化器症状を伴う病気で、「お腹の風邪」と表現されることもよくあります。
多くはウイルス性で、治療をしなくてもいずれよくなることがほとんどですが、重篤な疾患が紛れていることもありますので注意が必要です。
胃腸炎の症状は?
いわゆるウイルス性腸炎の典型的な症状および経過は、まず「嘔気」「嘔吐」から始まり、続いてみぞおち周辺の「腹痛」、そしておしりからおしっこが出るような感じの「下痢(水様便 すいようべん)」これら3つの症状のうち最低2つの症状が数日の経過で見られる場合は、胃腸炎を疑います。
特に胃腸炎の症状として重要なのは「下痢」です。
逆にいえば、「下痢」がなければ、胃腸炎以外の病気も考える必要があります。
どんな検査を行いますか?
ウイルス性腸炎を疑う場合、特に検査は必要ありません。
原因のウイルスを同定するための検査もありますが、ウイルスを同定することは実はそんなに重要ではないのです。理由は、どのウイルスでも治療や気をつけることは同じだからです。
ただし、ウイルス性ではなく、カンピロバクターなどの細菌性を疑う場合は、便培養検査を行うことも考えます。
また、胃腸炎に紛れた重篤な病気も疑うような場合は、血液検査や心電図検査などを追加で行うこともあります。
どんな治療を行いますか?
結論からいうと、胃腸炎の治療はウイルス性に限らず細菌性でも抗菌薬が必要なことは少なく、多くは治療をしなくても治ります。(重症な場合や、もともと何かしらの病気をお持ちの方は別です)
胃腸炎の治療で最も大切なことは「脱水の予防」です。
治っていく期間の中で、あまり水分が飲めず、嘔吐・下痢が多いと脱水になってしまいます。
特に小さなお子さんの場合は、以下のような脱水のサインに注意しましょう。
◆24時間、満足に水分がとれず、嘔吐が続く
◆水のような下痢(水様便)が1日5回以上ある
◆不機嫌でグズグズしている
◆ぐったりしている
◆口が乾燥している、目のくぼみなどが見られる
◆手足が冷たい
一度にたくさん水分をとると嘔吐につながりますので、少しずつこまめに水分摂取することを心がけましょう。
水分は水よりも、OS-1のような経口補水液がオススメです。
次に大切なことは感染拡大を防ぐことです。感染経路としては以下のものがあります。
①微量の吐物や下痢が手に触れて、そこからウイルスが口に入る(経口感染)
②乾燥した吐物や下痢便から舞い上がったウイルスを吸い込む(飛沫感染)
手洗い・マスクの着用はもちろん、同居者とタオルを共用することはやめましょう。
共用で使用するトイレは、1回1回除菌作業を徹底するようにしましょう。
吐物や便を処理する際に行うべきことを以下にあげますので参考にしてください。
◆使い捨ての手袋・マスクを装着する
◆乾燥する前にペーパータオルなどですぐに拭き取る
◆処理したペーパータオルはビニール袋に入れて、口をしっかり縛って捨てる
◆吐物や便がはねた床は、次亜塩素酸ナトリウム(ハイター)を50〜100倍に薄めた液を使って、しっかりと消毒す る。衣類やおもちゃなどに付着した場合は、250〜500倍に薄めた液に浸け置きした後、洗濯・洗浄する。
◆手袋を外した後、通常の石けんで手をしっかり洗う
胃腸炎で来院された方の当院での診療の流れ(診察所要時間目安:5〜7分)
1. 問診
胃腸炎の原因となるような食べ物を食べたりしていないか、周りに同様の症状を発症している方はいないか、その他何か胃腸炎の原因として思い当たることはないかなど、診断・治療に必要な情報を集めるために、医師がいくつか質問します。
(LINEの事前問診にお答えいただくと、よりスムーズな診療を提供できますのでご協力ください)
2. 身体診察
必要あれば診察室のベッドに横になり、お腹の音を聞いたり、痛む場所がないかなどを聴取したりします。
胃腸炎以外の病気が隠れていないかなども判断していきます。
※お腹を出しやすい服装で来院されることを推奨します。
3. 検査
医師が必要と判断した場合には、検査を行うこともあります。当院で行える検査は以下になります。
◆血液検査
◆便培養検査・ノロウイルス迅速検査・ロタウイルス迅速検査
◆超音波検査
◆心電図検査
4. 処方・点滴
胃腸炎の治療で最も重要なことは、脱水の予防になります。
下痢や嘔吐を1日に何回も繰り返している方、水を飲むとすぐに吐いてしまう方は、点滴の治療を行います。
症状がそこまでひどくない場合は、医師に処方された薬を飲んで数日経過をみることになります。
薬を飲んでも症状が改善しない場合は、再度受診ください。
胃腸炎以外の病気も考えられますので、当院でより詳しい検査を行うか、あるいはさらに大きな検査を実施している医療機関をご紹介することもあります。
また、ウイルスが原因の場合、他者への感染のリスクもあります。
特に、家族間の共用トイレは清潔を心がけ、感染防御を徹底しましょう。