新型コロナウイルスワクチンってどんなワクチン?
2021年2月17日より、まずは医療従事者を対象にファイザー社(米)とビオンテック社(独)が共同開発した「コミナティ」という新型コロナウイルスワクチンの接種が始まり、同年5月21日には武田薬品工業とアストラゼネカの新型コロナウイルスワクチンも日本で特例承認されました。
ワクチンにも様々な種類がありますが、日本で最も早く導入された「コミナティ」と武田薬品工業の「モデルナ」はmRNA(メッセンジャーアールエヌエー)ワクチンというタイプのものになります。ちなみにアストラゼネカ社のワクチンはウイルスベクターワクチンというタイプのものです。いずれのワクチンも筋肉注射ですが、それぞれのワクチンで対象年齢や、接種回数(接種間隔)が異なります。
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コミナティ(ファイザー)
筋注 / mRNAワクチン/接種2回(3週間隔)/ 12歳以上
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COVID-19ワクチンモデルナ(武田薬品工業)
筋注 / mRNAワクチン/接種2回(4週間隔)/ 12歳以上
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バキスゼブリア(アストラゼネカ)
筋注 / ウイルスベクターワクチン / 接種2回(4~12週間隔)/ 18歳以上
・新型コロナウイルスワクチンの効果は?
例えばファイザー/ビオンテック社が開発した「コミナティ」は、第3相試験を行った結果、発症予防効果95%であったと報告されております。発症予防効果95%というのは、「ワクチン接種をした人の95%はかからないが、5%の人はかかってしまう」という意味ではなく、「ワクチンを接種した場合、発症リスクが5%(20分の1)になる」ということです。ちなみにインフルエンザは、シーズンにもよりますが、発症予防効果は50%程度と言われておりますので、かなり効果が高いのが分かります。
イスラエルでは、1回目のワクチン接種を行ってから7日以内に感染が確認されたのが4484人、8〜14日以内が3186人、15〜22日経過した人では353人と、1回の接種でもかなり発症予防効果を得ることができた様です。
また、ワクチンの効果には、発症を防ぐ効果とは別に「重症化を防ぐ効果」もあると言われています。「コミナティ」の第3相試験で、重症化した10名のうち、9名がワクチン接種を行っていない群で、ワクチン接種をして重症化したのはわずか1名でした。よって、高齢者(65歳以上)や基礎疾患を有する、重症化リスクの高い方は特に、積極的にワクチン接種を行うことをオススメします。
・新型コロナウイルスワクチンは変異株にも効果があるの?
2021年6月時点で広く知られている変異株は、英国のVOC202012(イギリス型)と呼ばれるものと、インドの変異株(インド型)、南アフリカの変異株(南アフリカ型)と、ブラジルの変異株(ブラジル型)の4つです。日本国内では既に感染力の強いイギリス型が従来型に置き換わる形で拡大し、続いてインド型、ブラジル型、南アフリカ型の感染報告も増えてきている状況にあります。
日本で既に10%以上の方が接種を終えたファイザー社のワクチンは、イギリス型に対して93.4%、インド型に対して87.9%と、高い発症予防効果を示したという報告があります(Emma C Wall,et al. Lancet. 2021. DOI:10.1016/S0140-6736(21)01290-3)。これらの値はワクチンを2回接種した時の結果で、1回接種のみではここまで高い発症予防効果は得られておらず、2回接種の重要性についても述べられています。
一方で南アフリカ型とブラジル型は、いずれもE484K変異を認めており、これらの変異がある場合、発症予防効果は20%程度減弱する可能性があるとされています(Xuping X, et al. Nature Medicine; 27, 620-621, 2021.)。5月5日にカタールから報告された論文では、南アフリカ型に対しては、ファイザー社のワクチンによる発症予防効果は75%と低下していたとあります(Laith A, et al. N Engl J Med. 2021. DOI: 10.1056/NEJMc2104974)。ただし、重症化を防ぐ効果は、変異の種類に関わらず、97.4%と非常に高い効果が報告されていますので、ワクチンの接種は行った方が良いと言えるでしょう。
・新型コロナウイルスワクチンの効果はどれくらい続くの?
まだ現時点で詳細なことは分かっておらず、追加接種が必要なのか、いつ打つべきかといった情報は、今後の研究で明らかなになってくるでしょう。
・新型コロナウイルスワクチンを接種すれば周りの人にうつさなくなりますか?
インフルエンザワクチンと同じ様に考えてもらうと分かりやすいと思いますが、答えはノーです。新型コロナウイルスワクチンは症状がでるのを防ぐ効果は示されていますが、症状がないけど感染している状態、いわゆる無症候性感染は防げないのではないかという懸念は残っています。無症候性感染者からも周囲の人に感染が広がる可能性はあるので、ワクチンを接種してからも、マスクの着用やアルコール消毒、3密回避といった感染対策は引き続き徹底して行なっていく必要があります。
・新型コロナウイルスワクチンの安全性は?
まず、基本的には安全性に関して大きな問題はないとされています。ただし、どんなワクチンにも必ず副反応というものがあり、新型コロナウイルスワクチンも例外ではありません。副反応としては以下の様なものが報告されています。
◆注射した部位の痛み:最も頻度が高い(約6〜9割くらい)特に接種後12〜24時間で痛みが顕著
◆注射した部位が赤く腫れる
◆注射した部位にしこりができる
◆だるさ:約6割くらい
◆頭痛
◆37.5度以上の発熱:約3割くらい
◆嘔吐
◆下痢
よく報告されているものから順に列挙しましたが、これらの副反応は一般的には数日以内に消失します。また、高齢者よりも若年者で見られることが多く、2回目の接種の方がより多く副反応が起こる様です。基本的には何もせずに経過を見るか、解熱鎮痛剤などの薬で経過をみていればよくなるケースがほとんどですが、衰弱した高齢者の場合は、この副反応が致命的になることもありますので、接種するかどうか医師とよく相談してから決めましょう。
上に挙げた副反応とは別に、頻度こそ多くはありませんが、誰しも命の危険にさらされる副反応がアナフィラキシー反応といったアレルギー反応です。アメリカでは「10万人に1人」にこのアナフィラキシー反応がみられたという報告があります。ちなみにインフルエンザワクチンは「100万人に1人」程度、ペニシリンという抗生物質は「5千人に1人」程度とされていますので、インフルエンザよりはリスクが高いかもしれませんが、決して高い頻度で起きるという訳ではありません。アナフィラキシー反応は接種後30分以内に出現することがほとんどですので、接種後30分は慎重に様子を見る様にしましょう。
・子どもはワクチン接種できますか?
2021年6月時点ではファイザー社のワクチンが12歳以上、それ以外のワクチンが18歳以上対象の為、対象年齢未満の子供に対するワクチン接種は推奨されておりません。子供へのワクチンの有効性、安全性のデータがまだないのが理由ですが、①新型コロナウイルスによる重症化がきわめてまれな健康的な子供にはワクチンのメリットが小さく、②接種後に発熱しやすいワクチンは、子供に、大人とは異なる副反応をもたらす可能性がある、という2つの観点から今後子供へのワクチン接種の導入については大人以上に慎重であるべきとされています。
・妊娠中や授乳中でもワクチン接種できますか?
妊娠中や授乳中でもワクチン接種をすることはできます。ただし、安全性という点では、ちゃんとしたデータがまだないというのが現状です。一般的にmRNAワクチンは、生ワクチンではないため、不妊、流産、死産、先天異常のリスクを高めることはないと考えられています。また、ワクチンの母乳への影響は想定されず、授乳中の方の接種は問題ないと考えられています。接種すべきか悩まれる場合には、まず当院医師にご相談ください。
・私は新型コロナウイルスワクチンを接種するべきでしょうか?
厚生労働省では医療従事者、高齢者(65歳以上)、基礎疾患を有する方は優先してワクチン接種を行うことを推奨しております。この中で分かりにくいのは、ワクチン接種が優先される基礎疾患とは何かというところだと思います。
◆慢性呼吸器疾患:気管支喘息、COPD、肺気腫など
◆慢性心疾患:狭心症、不整脈、弁膜症、心不全など
◆慢性腎疾患
◆慢性肝疾患
◆神経疾患/神経筋疾患
◆血液疾患
◆糖尿病
◆疾患や治療に伴う免疫抑制状態:ガン、関節リウマチ/膠原病、肥満を含む内分泌疾患、消化器疾患、HIV感染症など
上記に1つでも該当する様な方は、ワクチン接種を積極的に検討しましょう。自分が接種するべきかわからないなどありましたら、お気軽に当院医師までご相談ください。
・新型コロナウイルスワクチンはいくらですか?
外国人の方も含め、接種の対象となる全ての方が全額公費(無料)で接種できます。接種時期が近づいたら、市区町村から接種のお知らせや接種券が配布される予定です。(厚生労働省ホームページよりhttps://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000121431_00218.html)
・クリニックプラスでは新型コロナウイルスワクチンの接種は可能ですか?
高円寺院のみ接種可能です。