生涯にわたって何度も感染を繰り返すことのあるRSウイルスは、大人にとってはただの風邪ですが、小さい子どもにとっては重症化して入院になりかねず、命に関わる脅威にもなり得ます。保育園や幼稚園などの集団生活のなかで耳にすることもあるRSウイルス。どのような病気なのか、かかってしまったときの対処法も解説します。
RSウイルス感染症とは
保育園ママ、幼稚園ママならいちどは聞いたことがあるRSウイルス感染症。どんな感染症なのでしょうか。
RSウイルスによる呼吸器感染症
RSはrespiratory syncytialの略で、呼吸器に感染するウィルスです。感染症法ではインフルエンザと同じ5類に分類されており、流行などの動向が把握されている感染症です。
何度もくりかえす感染症
RSウイルス感染症はいちど感染したあとも生涯にわたりなんども感染をくりかえす可能性があります。生後1歳までに半数以上でRSウイルスに1度は感染し、2歳になるまでにほぼ100%感染の既往があると言われています。
RSウイルス感染症の症状
なんども繰り返す感染症なのにもかかわらず、大人になってからのRSウイルス感染症は話題になることはありません。どのような症状なのでしょうか。
RSウイルスは風邪の原因ウイルス
RSウイルス感染症の潜伏期間は2~8日、発症すると、4~6日間発熱や鼻汁などの典型的な症状がでて、10日前後で症状は改善します。症状が重くなると咳がひどくなる感染症で、初めて感染するときには3割で咳が悪化、喘鳴や呼吸困難などの症状がでると言われています。
乳児期早期は重症化しやすい
大人にとっては風邪でおわるRSウイルス感染症も、初めて感染するときに重症化しやすいため1歳未満の乳児期早期では注意が必要です。炎症が気管支の奥にまで及ぶ「細気管支炎」になってしまい、呼吸を休んでしまう無呼吸や呼吸が苦しいといった症状がでてしまうことがあり、その場合には入院し、場合によっては酸素投与や人工呼吸器管理が必要になることもあります。症状でぐったりしてしまい食事や水分が摂れない場合も入院で経過をみることになります。
呼吸困難、咳の悪化、おしっこの量が減ったら要注意
RSウイルス感染症が重症化すると呼吸が苦しくなり、肩で息をするようになったり、あばらが浮くような呼吸をしたりするようになります。咳こんで吐いてしまうこともありますが、痰を出すための咳なので背中をさするなど咳はしっかり出してあげてください。食事や水分がとれなくなると、おしっこの量が減ってきます。濃い尿しかでなくなり、回数も減ってくるときには脱水を起こしていると考えます。重症化の可能性があるため、早めに病院を受診するようにしてください。
RSウイルス感染症の診断
基本的にはRSウイルス感染症と診断をつけるのは1歳未満の乳児期早期に限られます。それ以上の年齢では重症化のリスクは低く、治療も対症療法となるため診断をつける意義が乏しくなるのです。
1歳未満では迅速検査が保険適応
RSウイルス感染症はインフルエンザウイルス感染症で行うような鼻の中を綿棒で擦って行う検査で15分程度の迅速診断が可能な感染症です。インフルエンザのように外来で簡便に行うことができます。しかし、これは疑われるすべての患者さんで行う検査ではなく、1歳未満の乳幼児だけが保険適応で行うことができる検査ですので対象とならない方は自費での検査となります。
1歳未満の乳幼児で保険適応となっている理由は、RSウイルス感染症により無呼吸発作といった重症な症状を呈することがあり、入院の必要可否を判断するために迅速な検査が必要になるからです。RSウイルス感染症は1歳以上で罹患することもありますが、1歳をこえれば重症化する可能性は低くなり、特効薬もないため、積極的にはRSウイルス迅速検査をおすすめしておりません。ただし、園でRSウイルス感染症が流行っている時などは、園からRSウイルスの迅速検査を受けるようにいわれるケースもあるようです。その場合は、自費でも検査を行うべきかどうかをあらかじめ園に確認されてもよいかもしれません。
流行時期は年による
RSウイルス感染症は冬に流行がみられるのが一般的でしたが、最近では7月や8月など夏にも流行が見られるなど、流行時期にばらつきがあります。
RSウイルス感染症の対策と予防
RSウイルス感染症では対症療法が主
RSウイルス感染症は治療のための特効薬はありません。熱があれば解熱剤、咳があれば鎮咳薬というように対症療法が治療になります。。
重症化して入院したときなどには、細菌感染症を合併していることを考え、抗生剤を使用することもあります。
「飛沫感染」「接触感染」に注意
RSウイルス感染症は繰り返す感染症です。年長者が軽い風邪だと思っていてもRSウイルスに感染していて、乳児にとって脅威になることもあります。乳児の前で咳やくしゃみをしないこと、手洗いうがいをしっかりすること、年長者が風邪をひいているときに不用意に乳児に接触しないようにすることなど注意してください。おもちゃなどを介して感染することもあるため、風邪をひいている子どもがいるときには、「こまめにおもちゃを消毒する」、「おもちゃを分けて同じおもちゃで遊ばないようにする」といった配慮が必要です。
重症化リスクのある小児ではパリビズマブが保険適応
現在、RSウイルス感染症のワクチンはなく、特効薬もありません。ただし、重症化するリスクが高い乳幼児や、早産児、心臓や肺に基礎疾患がある乳幼児、免疫不全やダウン症候群などをお持ちの乳幼児の方は、パリビズマブを筋注することで重症化を予防することができます。
RSウイルス感染症で登園しても大丈夫?
子どもがRSウイルス感染症と診断されたら、RSウイルス感染症が疑わしい場合に登園してもいいかどうかは気になるところです。
症状がなくなって元気になったら登園してもよい
感染症によっては、登園再開について症状消失してから何日と明確に決められていることもありますが、RSウイルス感染症では特に明確な日数の規定はありません。登園の目安としては「呼吸器症状が消失し、全身状態が良いこと」とされています。
登園再開時は園に確認を。
園によっては登園許可証を必要とする場合もあるので、登園再開にあたっては幼稚園または保育園に確認するようにしてください。登園許可証はクリニックプラス下北沢で発行が可能です。
RSウイルス感染症の疑いで来院された方の当院での診療の流れ
①問診
いつからどの様な症状が出ているか、周りにRSウイルス感染症を発症している方はいないかなど、診断・治療に必要な情報を集めるために、医師がいくつか質問します。(LINEの事前問診にお答えいただきますと、よりスムーズな診療を提供できますので、ご協力ください。)
②身体診察
呼吸の音に異常はないかなど、医師が丁寧に診察を行います。
③検査
1歳未満のお子さんであればRSウイルス迅速検査を行います。鼻の奥を綿棒で拭って検体を採取します。10〜15分ほどで結果が分かります。1歳以上の場合は、RSウイルス迅速検査は自費での検査になりますので、相談してご希望の方にのみ検査を行います。
④処方(重症の場合は専門医療機関へ紹介)
RSウイルス感染症の治療は基本的には対症療法になります。症状を改善するための薬を処方致します。1歳未満の乳幼児の方は重症化のリスクもあります。重症化を示唆する所見が認められた場合には、専門医療機関へ紹介させていただくこともあります。
大人にとってはただの風邪でも、子供のRSウイルス感染症は咳や鼻水などの呼吸器症状が強くでる場合が多く侮れません。速やかに治療を開始することが、重症化を防ぐためにもとても重要になります。クリニックプラスは平日は夜の8時まで、さらには土日祝日も毎日営業しています。RSウイルス感染症を疑うような症状がありましたら、まずはお気軽に御相談にいらしてください。