・インフルエンザとは?
インフルエンザはインフルエンザウイルスに感染することによって発症する病気で、急な高熱や関節痛が現れるのが特徴です。流行シーズンは12月〜3月です。いわゆる風邪の一型ととらえることもできますが、中には重症化し、死に至る可能性もあるので注意が必要です。
・インフルエンザの症状は?
38度以上の発熱や関節痛、筋肉痛などの症状が出ることが多いですが、個人差があったり、風邪と見分けがつきにくい場合もあります。下の表は、米国疾病予防管理センター(CDC)が提唱するインフルエンザと風邪の特徴、見分け方になりますので、参考にしてみてください。
・インフルエンザの治療は?
インフルエンザウイルスの増殖を抑える抗インフルエンザ薬が治療に使用されます。現在日本で使用されている代表的な抗インフルエンザ薬のそれぞれの特徴を以下の表にまとめました。
薬名 | 剤形 | 用法・用量 | 薬価 | 予防投与 |
---|---|---|---|---|
タミフル | 飲み薬 | 1日2回、5日間 | 2,720円 | ○ |
リレンザ | 吸入 | 1日2回、5日間 | 2,940円 | ○ |
イナビル | 吸入 | 1回きりで終了 | 4,280円 | ○ |
ラピアクタ | 点滴 | 15分かけて点滴 | 6,216円 | × |
1回きりで終了 | (+静脈注射手技料) | |||
ゾフルーザ | 飲み薬 | 1回きりで終了 | 4,780円 | ○ |
*記載されている薬価は治療1コースの10割負担の値段になります。3割負担の方は、記載されている価格の3割の値段になります。(2020年4月時点)
「どの薬が1番効果があるか」という点に関しては、実はまだデータが不十分であり、明確な答えが出ていません。上の表を参考に、患者さんにあった薬を使用していくというのが現時点での使い分けになります。また、インフルエンザの治療に必ずしも薬が必要というわけではありません。インフルエンザの薬はあくまでウイルスの増殖を抑えるもので、ウイルスを死滅させるような薬ではありません。実は薬を飲まなくても自然によくなる人がほとんどです。ただし、以下に挙げた「インフルエンザ重症化のハイリスク患者」に相当するような方は、予防も含めた抗インフルエンザ薬による早期加療をおすすめしています。
◆5歳未満の小児(特に2歳未満)
◆65歳以上
◆妊婦、産後2週間以内
◆喘息をお持ちの方
◆心臓や腎臓、肝臓に病気をお持ちの方
◆癌を患っている方
◆糖尿病の方
◆薬やHIVなどで免疫機能が低下している方
◆神経障害、認知症などで痰をうまく出せないような方
◆BMI40以上の高度肥満の方
・インフルエンザの場合、明日の学校/仕事は休んだほうがいいですか?
学生は学校保健安全法により、「発症後5日を経過し、かつ、解熱後2日(幼児にあっては3日)を経過するまで」出席停止となっておりますので、そちらを守ってください。成人では明確な基準はなく、「就業制限については会社のルールに従っていただく」ということになります。一般的には感染性のある期間は症状発現から5〜7日間とされていますので、それを参考に会社と相談して決めてください。また、例え検査が「陰性」でも必ずしもインフルエンザではないとは言えないということにも注意が必要です。周りでインフルエンザが流行っていて、インフルエンザの症状が出ていれば、検査で「陰性」でもインフルエンザとして扱うのが重要です。
・インフルエンザの予防はどうすれば良いですか?
インフルエンザにおいて最も重要なのは「予防」です。予防方法には以下のようなものがあります。
◆アルコールでの手指衛生
◆マスクなどの咳エチケット
◆人混みを避ける
◆インフルエンザワクチンの接種
特に「インフルエンザ重症化のハイリスク患者」に相当する方、またハイリスク患者に相当する方と同居されている方は、ワクチン接種は必須です。ワクチンは、65歳未満の健常成人での発症予防は70〜90%とされています。13歳以上の方は1回接種が原則です。13歳未満の方は2回接種となります。
・インフルエンザで来院された方の当院での診療の流れ(診察所要時間目安: 5〜7分)
1. 問診
いつからどの様な症状が出ているか、周りにインフルエンザを発症している方はいないかなど、診断・治療に必要な情報を集めるために、医師がいくつか質問します。(LINEの事前問診にお答えいただきますと、よりスムーズな診療を提供できますので、ご協力ください。)
2. 身体診察
喉が腫れていないか、呼吸の音に異常はないかなど、医師が丁寧に診察を行います。
3. 検査
インフルエンザウイルス迅速検査を行います。鼻の奥を綿棒で拭って検体を採取します。10〜15分ほどで結果が分かります。注意していただきたいのが、インフルエンザは、発症から12時間の間は偽陰性が出てしまう可能性があります(本当は陽性なのに、陰性と出てしまう)。インフルエンザを疑い、検査を希望される際には、熱が出てから12時間経過した後に受診されることをお勧めします。
4. 処方・点滴
一般的には、医師に処方された薬を飲んで数日経過をみていただくことになります。薬によって飲む日数や、服用方法が違うので、医師と相談して、それぞれの患者さんに合った薬を決定していきます。ごく稀に肺炎や脳症などを合併し、重症化する場合がございます。薬を飲んでも症状が増悪していく様な場合には、早めに受診ください。必要であれば、入院治療などを行うことができる医療機関をご紹介させていただくこともあります。特にご高齢の方や、糖尿病や肺疾患などの基礎疾患をお持ちの方は、重症化を防ぐためにもインフルエンザワクチンの摂取を行うようにしましょう。