お子さんにのどの痛みや発熱がある場合、それは溶連菌感染症(ようれんきんかんせんしょう)による症状かもしれません。溶連菌感染症は冬から春にかけて学校などの集団生活の場で流行し、大人にもうつることがあります。適切な治療をすれば早期に症状がとれて楽になり、問題無く治る病気ですが、合併症による重症化を防ぐために注意が必要な点もあります。ここでは溶連菌感染症の特徴や治療について詳しく解説します。
溶連菌感染症ってどんな病気?
まず初めに、溶連菌感染症の特徴について解説します。
溶連菌感染症とは
溶連菌は正式には溶血性連鎖球菌(ようけつせいれんさきゅうきん)という細菌で、主にのどに感染し、のどの痛みや発熱、体や手足の発疹などの症状を引き起こします。感染力が強く、咳やくしゃみ、タオルや食器の共用などによって感染が広がりやすいです。溶連菌感染症は昔は伝染病として恐れられていましたが、現在は治療法が確立している病気です。
溶連菌感染症の症状は?
溶連菌感染症の症状には次のようなものがありますが、これらの症状が全て現れるわけではなく、症状の出方には個人差があります。
・38度以上の発熱
・のどの痛み
・舌にイチゴのようなブツブツがつができる(イチゴ舌)
・のどや扁桃腺(へんとうせん)が腫れる
・発疹
・腹痛
新型コロナウイルス感染症やインフルエンザと症状が似ているため、きちんと検査して診断する必要があります。咳やくしゃみ、鼻水のような症状はほとんど出ません。
潜伏期間はどのくらい?
潜伏期間は2~5日と言われています。
流行しやすいのはいつ?
11月~4月に流行しやすい病気です。この時期はインフルエンザの流行時期とも重なるので注意が必要です。また、この時期以外でも年間を通して溶連菌に感染する可能性はあります。
いつから登園・登校していいの?
抗生剤を飲んでから24時間経てば感染力はなくなるとされています。そのため、受診した当日と翌日は出席停止となり、その後は体調が回復していれば登園・登校が可能です。
大人にもうつりますか?
子どもに多い溶連菌感染症ですが、大人にもうつり、発症することがあります。
一度かかったらもうならない?
溶連菌感染症は、一度治っても繰り返しかかることがあります。以前感染した溶連菌とは別の型の溶連菌だった場合や、前回の治療が十分でなく、菌が残っていたために再発する場合などがあります。
劇症型(げきしょうがた)溶連菌感染症について
発症の頻度としては非常にまれではありますが、溶連菌感染症の中には劇症型(げきしょうがた)と呼ばれるものがあり、突然発症して短時間で急激に進行し、多臓器不全やショック症状を起こし重症化します。劇症型は大人に多いですが、小児にも見られることがあります。
溶連菌感染症の検査
のどの状態や発熱の程度、体の発疹などの症状から、溶連菌感染症の疑いがある場合、迅速診断キットを使い、細い綿棒でのどをこすって検査を行います。検査の結果は5分ほどで出るため、溶連菌に感染しているかどうかすぐに分かります。
溶連菌感染症の治療
溶連菌感染症と診断された場合の治療法と注意点について解説します。
抗生剤を飲んで治療します
溶連菌感染症は抗生剤を飲んで治療します。抗生剤は主にペニシリン系のものを使い、ペニシリンにアレルギーがある場合はクリンダマイシンなど別の抗生剤で治療することもできます。抗生剤の種類にもよりますが、10日間ほど飲み続ける必要があります。
合併症に注意!薬は最後まで飲み切ること
溶連菌には抗生剤が非常によく効きますが、症状がおさまったからといって途中で薬をやめてはいけません。途中で薬をやめると、溶連菌が再び増え始めて再発したり、リウマチ熱や腎炎、結節性紅斑(けっせつせいこうはん)のような合併症を引き起こしたりしてしまうことがあります。これらの合併症は、溶連菌の感染によって異常な免疫反応が引き起こされることで発症します。症状がおさまると薬を飲むのを忘れてしまいがちですが、再発や合併症予防のためにも、薬は必ず最後まで飲み切るようにしてください。
糸球体腎炎(しきゅうたいじんえん)の早期発見と予防のために
糸球体腎炎は溶連菌感染症の合併症の1つで、溶連菌感染症にかかった2~4週間後に発症します。突然、血尿やたんぱく尿が出たり、尿の回数が少なくなったりします。尿の色がにごっていたり、コーラ色の尿が出たりした場合は血尿の可能性があります。また、たんぱく尿が出ている場合には尿が泡立ちます。溶連菌感染症にかかった場合は、尿の色や状態に気をつけ、変化を認めた場合はすぐに受診するようにしてください。溶連菌感染症の治療の際に抗生剤をしっかり飲み切るようにすれば、糸球体腎炎の合併も予防することができます。
溶連菌感染症の予防のために
学校などで溶連菌感染症が流行ったり、家族がかかったりした場合には、手洗いやうがいといった一般的な予防方法を日ごろからしっかり行うようにしましょう。
溶連菌感染症かもと思ったら
溶連菌感染症は子どもに多く見られますが、大人でもかかります。抗生剤を指示通りに飲んで治療すればほとんどの場合問題無く治る病気です。気になる症状がある場合には速やかに受診し、検査を受けるようにしてください。
溶連菌感染症の疑いで来院された方の当院での診療の流れ
①問診
いつからどの様な症状が出ているか、周りに溶連菌感染症を発症している方はいないかなど、診断・治療に必要な情報を集めるために、医師がいくつか質問します。(LINEの事前問診にお答えいただきますと、よりスムーズな診療を提供できますので、ご協力ください。)
②身体診察
喉の所見など、医師が丁寧に診察を行います。
③検査
溶連菌が疑われた場合、溶連菌迅速検査を行います。綿棒で喉の奥を拭って検体を採取します。5分ほどで結果が分かります。
④処方(重症の場合は専門医療機関へ紹介)
溶連菌感染症と診断された方には抗生物質を処方します。重症化を示唆する所見が認められた場合には、専門医療機関へ紹介させていただくこともあります。
溶連菌感染症は子供から大人まで幅広くかかる感染症の1つです。速やかに治療を開始することが、重症化を防ぐためにも重要になります。クリニックプラスは平日は夜の8時まで、さらには土日祝日も毎日営業しています。溶連菌感染症を疑うような症状がありましたら、まずはお気軽に御相談にいらしてください。