夏に高熱が出て、のどが痛くなったり目が赤くなったりした場合、咽頭結膜熱(いんとうけつまくねつ)の可能性があります。咽頭結膜熱は子どもに多い感染症で感染力が非常に強く、保育園や学校も出席停止になります。数日続く高熱や強いのどの痛みなどの症状はお子さんにとって辛いもので、親御さんはとても心配になってしまうかもしれません。ただ、基本的には安静にしていれば自然と良くなる病気です。ここでは咽頭結膜熱の特徴や治療、感染予防のポイントなどについて詳しく解説します。
咽頭結膜熱とは
咽頭結膜熱とはどのような病気なのでしょうか。まず初めに、咽頭結膜熱の特徴や登園・登校の基準について解説します。
アデノウイルスによる感染症
咽頭結膜熱は夏風邪の一種で、アデノウイルスというウイルスに感染することで発症する、子どもに多い感染症です。高熱、のどの痛み、目の充血などの症状が特徴です。プールを介して感染が広がることが多いため「プール熱」とも呼ばれますが、プール以外でも感染は起こります。流行時期は夏ですが、他の季節でも小さな流行が見られることがあります。アデノウイルスはさまざまな型があるため、一度かかっても繰り返し感染する場合があります。
潜伏期間はどれくらいですか?
咽頭結膜熱の潜伏期間は5~7日と言われています。
出席停止期間はありますか?
咽頭結膜熱は感染力が非常に強い感染症です。そのため、熱やのどの痛み、目の充血の症状が消えてから2日経過するまでは出席停止となります。咽頭結膜熱の症状は4~5日続くため、少なくとも1週間はお休みが必要になるでしょう。咽頭結膜熱と診断された場合には、登園・登校許可書の提出が必要となる場合が多いため、通っている園や学校に確認するようにしてください。
感染経路は?
前述のとおりプールでの感染が多いですが、次のような経路でも感染します。
- 咳やくしゃみなどを介した飛まつ感染
- ウイルスが付着した手やタオルを介した接触感染
大人もかかりますか?
咽頭結膜熱は子どもに多い感染症ですが、大人もかかることがあるため、家庭内での感染対策が必要です。大人がかかった場合は、子どもよりも症状が強く出る傾向にあります。
咽頭結膜熱の症状
次に、咽頭結膜熱の症状や合併症について解説します。
どのような症状が出ますか?
発熱、のどの痛み、目が充血して赤くなる、という3つが主な症状です。熱は39~40度の高い熱が4~5日続きます。熱が高くのども痛いので、食欲がなくなったり全身がだるく感じられたりします。目の症状は通常、片目から始まって両目に広がります。
その他、目やにや鼻づまり、リンパの腫れ、頭痛、腹痛や吐き気を伴うこともあります。
症状はどのくらい続きますか?
高熱は5日前後と比較的長く続き、全ての症状が消えるまで1週間前後かかります。
合併症はありますか?
アデノウイルスの型によっては、まれではありますが、重症の肺炎などの合併症を引き起こすことがあり、乳幼児では重症化しやすいため注意が必要です。また、中耳炎や熱性けいれんを併発することもあります。
咽頭結膜熱はどのように診断されますか?
綿棒でのどをぬぐい、アデノウイルスが存在しているかを迅速診断キットで調べます。結果は5-10分ほどで出ます。園や学校で流行していることが分かっている場合には、検査をせずに症状だけで診断することもあります。
咽頭結膜熱の治療
咽頭結膜熱と診断された場合、どのように治療を行うのでしょうか。ここでは咽頭結膜熱の治療や家庭での看護について解説します。
薬は対症療法
アデノウイルスに効く薬はないため、熱やのどの痛みなどの症状を和らげる薬が処方されます。目の充血や目やにには点眼薬を使います。
食事や水分摂取について
高熱とのどの痛みで食事が十分摂れない場合が多いです。冷ましたおかゆやスープ、お味噌汁、豆腐やポタージュスープなど、刺激が少なく飲み込みやすいものを摂るようにしましょう。水分は十分摂るようにしてください。
お風呂にはいってもいいですか?
熱が高く、だるさが強いときの入浴は避けてください。そうでなければ入っても問題ありません。感染予防のため、入浴後に使うタオルは他の人と共用しないようにしましょう。
こんなときはもう一度受診を
咽頭結膜熱は、基本的には安静にしていれば自然に治る病気です。ただし、次のような場合には再度受診するようにしてください。
- 高熱が続く
- のどが痛くて水分がほとんど摂れない
- 前日より悪化し、ぐったりしている
- 咳がひどい、耳を痛がるなど、肺炎や中耳炎の合併を起こしている可能性がある
咽頭結膜熱の予防のポイント
こまめな手洗いとうがいが感染予防の基本です。プールの後はしっかりシャワーを浴びてうがいをするように心がけましょう。感染者の入浴は家族の最後にし、タオルの共用も避けるようにしてください。
咽頭結膜熱の疑いで来院された方の当院での診療の流れ
①問診
いつからどの様な症状が出ているか、周りに咽頭結膜熱を発症している方はいないかなど、診断・治療に必要な情報を集めるために、医師がいくつか質問します。(LINEの事前問診にお答えいただきますと、よりスムーズな診療を提供できますので、ご協力ください。)
②身体診察
喉の所見をみたり、リンパが腫れていないか、目の充血がないかなど、医師が丁寧に診察を行います。
③検査
臨床所見から咽頭結膜熱の診断が困難な場合、アデノウイルス迅速検査を行います。喉あるいは鼻の奥を綿棒で拭って検体を採取します。5〜10分ほどで結果が分かります。臨床所見からアデノウイルスと診断できる場合には、検査はしないこともあります。
④処方(重症の場合は専門医療機関へ紹介)
咽頭結膜熱の治療は基本的には対症療法になります。症状を改善するための薬を処方致します。ぐったりしていていつもと様子が違う、喉の痛みが強すぎて食事が全くとれないなど、重症感が強い場合には、点滴の治療などが必要な場合もありますので、専門医療機関へ紹介させていただくこともあります。
咽頭結膜熱は高熱が続いたり、強い喉の痛みがでたりと、お子さんにとってはとても辛い病気です。クリニックプラスは平日は夜の8時まで、さらには土日祝日も毎日営業しています。咽頭結膜熱を疑うような症状がありましたら、まずはお気軽に御相談にいらしてください。