新型コロナウイルス感染症の治療薬「ラゲブリオ」についてご存じでしょうか。オミクロン株に対しても効果が認められている抗ウイルス薬です。
厚生労働省の承認を得てから2年以上が経過し、効果についても情報が更新されています。ここでは、2023年8月現在における、ラゲブリオの最新情報をまとめてご紹介します。
ラゲブリオ®️とは?
まずは、治療薬「ラゲブリオ」について、わかっている効果・費用・注意点などについてご紹介します。
ラゲブリオの作用メカニズム
ラゲブリオは、「RNA依存性RNAポリメラーゼ阻害薬」と呼ばれる薬です。
ウイルスは、タンパク質の殻と、それに包まれたRNAという遺伝子で構成されます。ウイルス単独では増殖できず、動物の細胞に侵入しなくてはなりません。
細胞に侵入したウイルスは、タンパク質とRNAの両方を複製し、自分のコピーをたくさん作ったのち、細胞から出ていき、ほかの生き物に感染を広げます。
ラゲブリオは、RNAの複製に使われる物質と似たような構造をしていますが、ウイルスが間違えてラゲブリオを取り込んでしまうと、RNAの複製ができません。ラゲブリオは、このメカニズムでウイルスの複製ができないよう阻害し、ウイルスの増殖を抑える薬です。耐性ができにくいとされています。
ラゲブリオの効果
ラゲブリオは、新型コロナウイルス感染症の治療期間や重症化の予防にどのような効果があるのでしょうか。
最近の報告によると、ワクチンを接種していない人と、接種している人とでは得られる効果が違うようです。
まずは、ワクチン接種をしていない人を対象におこなわれた「MOVe-OUT試験」の結果をご紹介します。
18歳以上で、軽症または中等症、重症化のリスク因子をもつ患者1433名が参加し、半数はラゲブリオを服用、半数は服用せずに効果を比較しました。29日目までの間に入院が必要になった・または死亡した人の割合は、ラゲブリオを服用したグループで低く、ラゲブリオの服用は有効だという結果になっています。入院が必要になった方でも、ラゲブリオを服用したグループでは平均して3日ほど退院までの日数が短くなり、回復までの日数が短くなることが示されました。
一方で、参加者の99%の人が1回以上、94%の人が3回以上ワクチンを接種していた「PANORAMIC試験」では、少し結果が違っています。約26,000人が参加し、半数はラゲブリオを服用、半数は服用せずに効果を比較しました。
28日目までの間に入院が必要になった・または死亡した人の割合は、両グループで差が出ませんでした。症状のある期間は、ラゲブリオを服用したグループで4.2日短縮したという結果が得られ、ワクチンを接種した人でも、ラゲブリオの服用によって回復までの日数は短くなることが示されました。
ラゲブリオを服用できる対象者
ラゲブリオは、18歳以上で、以下のような重症化リスク因子のある方を中心に、症状が重篤(熱が高い、咳がつらいなど)で重症化の恐れがある方などにも使用できます。
- がん
- 慢性腎臓病(CKD)
- 肝硬変などの肝臓疾患
- 慢性閉塞性肺疾患(COPD)
- 肥満
- 糖尿病
- 脳神経疾患(多発性硬化症、重症筋無力症など)
- 臓器移植、骨髄移植、幹細胞移植後の方
ラゲブリオの服用方法
ラゲブリオは、カプセルタイプの治療薬です。
1日2回、12時間程度の間隔をあけて、1回に4カプセルずつ服用します。服用の途中で症状がなくなったとしても、5日分全てを飲みきってください。もし食事をとれなかった場合でも、服用して問題ありません。
ラゲブリオの費用
2023年8月現在は公費で賄われており、ラゲブリオの薬剤費は無料です。2023年10月からは公費負担がなくなり、お一人おひとりが薬剤費を支払う必要があります。
現在のところ、1カプセルあたり2,357.8円のため、1日で18,862.4円、5日間で約94,000円です。3割負担の場合に約28,000円、決して安くはない金額になります。ラゲブリオも含め、年間の医療費が10万円を超える場合には医療費控除の対象となりますので、領収書を保管しておきましょう。
妊婦・妊娠の可能性のある人は服用できない
ラゲブリオは、胎児へ影響が出る可能性があるため、妊婦・妊娠の可能性がある人は服用できません。動物では、胎児の奇形や発育遅延が報告されています。
5日間の服用を終えたあとも、4日間は避妊をおこなってください。
ラゲブリオの副作用
ラゲブリオにはいくつか副作用があります。いずれも軽度のことが多いですが、症状がつらい場合には処方元の医師や薬剤師へ相談してください。
下痢
ラゲブリオの服用で、下痢を生じることがあります。頻度は3%程度で、多くはありません。
脱水にならないよう、少しずつ水分をとってください。
吐き気
吐き気も2〜3%の頻度で生じます。吐き気が落ち着いているときに、無理のない範囲で食べやすいものをとりましょう。嘔吐によって脱水を生じてしまうこともあるため、少しずつ水分をとりましょう。
頭痛
2%程度の頻度で頭痛が生じます。アセトアミノフェン(商品名:カロナール)などの解熱鎮痛剤で頭痛にも対応できますので、お手持ちの薬をお使いください。
その他のわずかな副作用
そのほか、いずれも頻度は低いですが、以下のような副作用が報告されています。
めまい、食欲低下、動悸、かゆみ、じんましん、発疹、中毒性皮疹(体の両側に生じる、大小の赤い斑点状の発疹)
クリニックプラスではラゲブリオが処方可能
クリニックプラスでは既に多くの患者様にラゲブリオを提供しており、安全にご使用いただいています。ラゲブリオの服用をご希望される方は、診察時に直接医師にご相談いただくか、オンライン診療で医師にご相談ください。オンライン診療の場合には、処方箋をお近くの対応薬局に送付しますので、直接薬局に受け取りにいっていただくことも可能です。