新型コロナウイルス感染症は、世界的にも未だ終息には至っていません。コロナ対策の中心はワクチンによる感染予防ですが、重症化リスクの高い人が感染した場合には、迅速な診断・治療が重要です。
2022年2月に、軽症~中等症向けの新型コロナ治療薬「パキロビッド」が特例承認を受けました。
新型コロナウイルス感染症に使える抗ウイルス薬としては、レムデシビル(商品名:ベクルリー)、モルヌピラビル(商品名:ラゲブリオ)に続いて3つ目となります。
本記事では、パキロビッドの効果や副作用、どのような人がどのような場所で入手・使用できる薬なのかについて解説します。
パキロビッドとはどのような薬なのか?
まずは、パキロビッドの効果や使用方法について解説します。
パキロビッドの効果
パキロビッドは、新型コロナウイルス感染症に使用できる飲み薬で、軽症~中等症の人に対する治療で使われます。変異株への有効性も期待されています。「ニルマトレルビル」と「リトナビル」という2つの薬が1つのシートにパッケージされているパック製剤で、正式名称は「パキロビッドパック」となっています。ニルマトレルビルは、ウイルスが作られるのに必要な酵素(こうそ)の働きを邪魔し、ウイルスが増えるのを抑えます。リトナビルは、体の中でニルマトレルビルが分解されないようにする役割を担っています。
パキロビッドの使用方法
パキロビッドを使った治療では、1回につきニルマトレルビル2錠とリトナビル1錠の合計3錠を服用します。これを、1日2回、5日間にわたって続けます。パキロビッドは食事の時間にかかわらず服用できるため、1日2回、なるべく12時間おきになるように時間を決めて服用します。
パキロビッドの副作用について
パキロビッドは、重篤なものから軽いものまで、いくつかの副作用が知られています。副作用を過剰に恐れる必要はありませんが、服用後に体調が悪くなったり、服用前と異なる症状が現れたりしたときには、パキロビッドを処方した医師や、調剤した薬局の薬剤師に相談しましょう。
重大な副作用
パキロビッドでは、頻度は不明ですが、以下の重大な副作用が生じる可能性があると報告されています。
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肝機能障害
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中毒性表皮壊死融解症(ちゅうどくせいひょうひえしゆうかいしょう)
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スティーブンス・ジョンソン症候群(すてぃーぶんす・じょんそんしょうこうぐん)
その他の副作用
パキロビッドでは、以下の副作用が1%以上5%未満の確率で生じるとされています。
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味覚不全
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下痢、軟便
また、以下の副作用が1%未満の確率で生じるとされています。
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めまい
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吐き気、嘔吐
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消化不良
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高血圧
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胃や食道の病気
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肝機能検査値の異常
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発疹
パキロビッドはどのような人が使える薬なのか?
パキロビッドは、誰もが使える薬というわけではありません。
検査で陽性となっても、条件に当てはまらない人は服用できないため注意が必要です。
パキロビッドが使える人
パキロビッドが使えるのは、以下の必須条件をすべて満たすことに加え、部分条件のどれかに当てはまる、重症化リスクの高い人のみとなります。
【必須条件】
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成人または12歳以上で体重40㎏以上の小児
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妊婦又は妊娠している可能性がない
【部分条件】
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60歳以上
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BMI 25を超える肥満
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喫煙者
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以下の疾患をもつ人
糖尿病
がん
慢性腎臓病
免疫が抑制される病気
高血圧
慢性的な肺の病気
脳性麻痺
遺伝性の病気
メタボリックシンドローム
重い先天異常
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免疫を抑える薬を使い続けている人
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心臓や血管に関係する病気になったことがある人
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新型コロナウイルス感染症に関係なく、人工呼吸器などの医療技術を使っている人
また、発症から時間が経ちすぎると増えたウイルスを減らすほどの効果は望めません。
発症5日以内に服用を始めるのが原則です。
パキロビッドが使えない人
重症化リスクの高い人であっても、以下に当てはまる場合はパキロビッドを服用できません。
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パキロビッドの成分に過敏症を起こしたことのある人
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腎臓や肝臓に障害がある人のうち、コルヒチンという薬を使用している人
パキロビッドと併用禁忌の薬
パキロビッドには「併用禁忌(へいようきんき)」といって、一緒に服用してはいけない薬がたくさんあります。
普段から血圧や心臓の薬、睡眠薬などを使用している人は特に注意が必要です。
また、薬だけでなく、サプリメントにも併用禁忌とされるものがあります。
受診する際には「お薬手帳」を必ず持っていき、普段飲んでいる薬とパキロビッドとの相性を確認してもらいましょう。
普段からサプリメントを使っている人は、パッケージなどの成分が分かる情報をもっていくのがおすすめです。
パキロビッドとの併用が禁忌になっている薬剤についてはこちらからもご確認いただけます。→https://www.mhlw.go.jp/content/000903772.pdf
パキロビッドの費用は?
2024年4月1日以降、パキロビッドを含む新型コロナウイルス感染症の治療薬の薬剤費については公費負担の対象外となりました。
自己負担額は、医療費の自己負担割合に応じて、以下のとおりになります。
・3割負担 約29,700円
・2割負担 約19,800円
・1割負担 約9,900円
クリニックプラスではパキロビッドが処方可能
当院で新型コロナウイルス感染症と診断された方には、上記条件に当てはまる方に限り、パキロビッドの処方が可能です。
パキロビッドの服用をご希望される方は、診察時に直接医師にご相談いただくか、お問い合わせフォームから電話再診をお申し込みの上、医師にご相談ください。
パキロビッド内服の適応があると医師に判断された場合、医師が処方箋を対応薬局に送付し、薬局からご自宅にお薬が配送されます。(代理の方が取りに行くことも可能)