寝ている間に呼吸が繰り返し止まってしまう睡眠時無呼吸症候群によって、高血圧が引き起こされることが近年明らかになってきました。睡眠時無呼吸症候群が原因で起こる高血圧は、心筋梗塞や狭心症などの病気につながる危険性が高いことが分かっています。こうした命に関わる病気を予防するためには、適切な治療を受けることが必要です。ここでは睡眠時無呼吸症候群と高血圧の関係や、治療について解説していきます。
睡眠時無呼吸症候群が高血圧の原因になる
寝ている間に一時的に何度も呼吸が止まってしまう睡眠時無呼吸症候群は、肥満や筋力の低下などの原因によって、寝ている間に空気の通り道である気道が塞がってしまうことで起こります。近年、この睡眠時無呼吸症候群が、高血圧の原因になることが分かってきました。ここでは、睡眠時無呼吸症候群が高血圧を引き起こすメカニズムについて解説します。
なぜ睡眠時無呼吸症候群によって血圧が上がるの?
寝ている間の無呼吸によって、なぜ血圧が上がってしまうのでしょうか。人間の体は通常、起きている時は交感神経(こうかんしんけい)が、寝ている時は副交感神経(ふくこうかんしんけい)が主に働いています。寝ている時に呼吸が止まると、呼吸が再開する時に脳が一時的に目覚めてしまいます。するとその瞬間に交感神経が働き始め、結果、血圧が上がります。このように睡眠時無呼吸症候群では、「無呼吸」と「呼吸の再開」を繰り返すたびに血圧が変動することになります。また、無呼吸によって酸素不足となり、体が苦しいと感じることでも血圧が上がります。
「夜間高血圧」と「早朝高血圧」
ふつう、血圧は朝は低く、日中にかけて上昇し、睡眠中に下がります。しかし、睡眠時無呼吸症候群の患者さんは、夜になっても血圧が下がらなかったり、逆に上昇したりします。また、そのまま朝を迎えるため、朝方の血圧も高いままのことがあります。このように、夜間や早朝の血圧が高い状態を、「夜間高血圧」「早朝高血圧」と言います。夜間高血圧や早朝高血圧の人は、日中に病院で血圧を測ると正常値となる場合もあるため、寝る直前や早朝の血圧を知ることも重要になります。
睡眠時無呼吸症候群が原因の高血圧がもたらすリスク
寝ている間に急激な血圧の変動を繰り返すことで、心臓に大きな負担がかかります。このことにより、心筋梗塞や狭心症など、命に関わる病気を引き起こす危険性が高まります。こうした病気は夜間や朝方に起こりやすいことが知られていますが、それは、睡眠時の急激な血圧の上昇が、これらの病気のリスクを高めているためだと考えられます。
睡眠時無呼吸症候群による高血圧の頻度と特徴
睡眠時無呼吸症候群が原因となっている高血圧の患者さんはどのくらいいるのでしょうか。また、どのような特徴があるのでしょうか。
どのくらいの患者さんがいるの?
高血圧の患者さんの30~40%は、睡眠時無呼吸症候群を合併しています。これは単に合併しているだけではなく、睡眠時無呼吸症候群が高血圧の原因となっているのです。睡眠時無呼吸症候群が原因の高血圧の患者さんは、日本だけでも200~300万人ほどいると推定されています。
どんな特徴があるの?
睡眠時無呼吸症候群による高血圧の場合、血圧を下げる薬が効きにくいという特徴があります。夜間に何度も急激な血圧の変化が起こるので、薬ではコントロールできない状態になってしまっていると考えられます。
睡眠時無呼吸症候群が原因の高血圧の治療法
睡眠時無呼吸症候群が原因となっている高血圧の治療法には次のようなものがあります。
①CPAP療法(持続性陽圧呼吸療法)
睡眠時無呼吸症候群の治療に用いられる方法で、寝る時に鼻や口にマスクを装着し、空気を送り込むことで、空気の通り道が塞がれないようにします。CPAP療法によって睡眠時の無呼吸が改善されることで、夜間や早朝の血圧が下がり、血圧の激しい変動もなくなります。
②薬による治療
血圧を下げる薬を使って治療します。しかし、睡眠時無呼吸症候群が原因の高血圧の場合、薬が効きにくいことも多いです。どの薬が有効かということはまだはっきり分かっておらず、また人によっても違うため、患者さんの状態を見ながら決めていくことになります。
③生活習慣の改善
生活習慣の改善は、治療のベースとして取り組むことが必要です。肥満がある場合には減量し、飲酒や喫煙は控えるようにしましょう。減量、飲酒制限、禁煙は、睡眠時無呼吸症候群の改善に直結します。
この高血圧、睡眠時無呼吸症候群が原因かもと思ったら
薬が効きにくい、早朝の血圧が高い、そのような高血圧の場合、睡眠時無呼吸症候群が原因となっている可能性があります。放っておくと心筋梗塞や狭心症のような重篤な病気を引き起こしかねません。睡眠時の無呼吸が気になったり、睡眠時無呼吸症候群が原因の高血圧かもしれないと思ったら、早めにかかりつけ医に相談するようにしましょう。
クリニックプラスでの睡眠時無呼吸症候群の診療の流れ
①血圧の測定
受付を済ませた方は看護師が声をかけますので、血圧を測定していただきます。
②問診
病院や健康診断で測った血圧は、家庭での血圧より高めに出ることが多いです。ご自宅で血圧を普段測っていない方は、まず血圧計をご購入いただき、毎日の自宅での血圧を測定し、記録してもらうことから始めます。ご自宅で血圧を記録している方は、普段どのくらいの血圧で推移しているか、教えてもらいます。血圧手帳や、記録に使用しているアプリなどをご提示いただけるとスムーズに診療が行われます。
すでに血圧の治療を開始しているが、治療に抵抗性のある方、重度の高血圧の方、40歳未満の方などは睡眠時無呼吸症候群が合併している可能性を考えます。
いびきを周りから指摘されることはあるか、日中眠気が強く仕事や家事に支障をきたすことはあるかなど、診断・治療に必要な情報を集めるために、医師がいくつか質問します。(LINEの事前問診にお答えいただきますと、よりスムーズな診療を提供できますので、ご協力ください。)
③身体診察
見た目に異常がないか、皮膚所見がないか、視診を行った後、足にむくみがないかなど触診を行ったり、心音や腹部に異常がないか聴診を行ったりします。睡眠時無呼吸症候群以外の高血圧の原因が隠れていないか全身を隈なく丁寧に診察します。
④検査
医師の診察で睡眠時無呼吸症候群が疑われたら、自宅で簡単にできる簡易検査を行います。
後日、「パルスオキシメータ」が、検査会社からご自宅に届きますので、それを装着したまま一晩寝ていただき(ご自身で簡単に装着できます)、翌日以降に機器を検査会社までご郵送ください。
数日後、解析結果がクリニックに届きますので、お手数ですが結果説明を聞きにクリニックまでお越しください。
AHIが20以上40未満であった場合、ポリソムノグラフィー(PSG)検査が必要になります。こちらの検査もご自宅で行えます。
検査結果は、約1週間でクリニックまでレポートが届きます。
ご返送後、7-10日後を目安に、LINEで予約をお取りの上、クリニックまでご来院ください。
⑤ CPAPの処方あるいは専門医療機関へ紹介
睡眠時無呼吸症候群と診断された場合、CPAP療法の処方を行います。ご自宅に専用のマスクなどの機器が届きますので、そちらを装着の上、睡眠をとる様にしていただきます。こちらは保険診療内で治療を受けることが可能ですが、そのためには毎月の定期的な外来受診が必要になります。治療状況のレポートをみながら、適切に機器を使用できているかなど説明いたします。当院では毎月の定期受診も少ない負担でご案内する体制が整っていますのでご安心ください。また、気道閉塞の原因がアデノイド肥大や扁桃肥大など耳鼻科疾患が原因の場合は、手術によって取り除く必要があります。この場合、速やかに最適な医療機関をご紹介させていただきます。
会社の健康診断で高血圧を指摘されたものの、忙しくてそのまま放置してしまっている方も多いと思います。そんな方で、日頃いびきを指摘されたり、日中の眠気を感じている方は睡眠時無呼吸症候群かもしれません。睡眠時無呼吸症候群の検査はご自宅で簡単にできます。まずはクリニックプラスにご相談にいらしてください。クリニックプラスは平日夜の8時まで、さらには土日祝日も毎日営業しています。事前LINE問診や、事前クレカ決済システムなど、テクノロジーを活用することで待ち時間を少しでも短くする取り組みも行っています。