下痢や便秘が長く続く、なんとなくお腹が張っている、ガスがたまりやすい…そんな長引くお腹の不調を抱えている人は多くいます。
このような症状がある場合、受診をすると「過敏性腸症候群(かびんせいちょうしょうこうぐん)」と診断されるケースが多々あります。
過敏性腸症候群の主な原因はストレスといわれており、現代において発症頻度がとても高い病気の1つとなっています。
ここでは、誰もがなり得る、過敏性腸症候群について詳しく解説します。
過敏性腸症候群ってどんな病気?
過敏性腸症候群とはどのような病気なのでしょうか。
まず初めに、過敏性腸症候群の特徴について解説します。
過敏性腸症候群とは
腸に異常が見られないにも関わらず、腹痛を繰り返したり、下痢や便秘が長期間続いたりする病気を、過敏性腸症候群(IBS:Irritable Bowel Syndrome)といいます。
命に関わる病気ではなく、難病指定もされていませんが、はっきりとした原因が分からないために症状が長期化しやすく、日常生活に支障が出てしまうことも少なくありません。
ストレス社会といわれる現代において、急増している疾患の1つです。
過敏性腸症候群の種類
過敏性腸症候群は、4つのタイプに分類されます。
①下痢型
激しい腹痛を伴う下痢が繰り返し起こります。
②便秘型
慢性的な便秘が主症状で、便が出てもコロコロとした硬い便だったり、残便感があったりします。
③混合型
下痢と便秘を交互に繰り返すタイプです。
④分類不能型(ガス型)
上記①~③に分類されないけれど、腹部の違和感などが慢性的に生じているタイプです。
ガスが溜まってお腹が張ったり、頻繁にガスが出たりするような場合を「ガス型」ともいいます。
下痢型は男性、便秘型は女性、に多い傾向があります。
患者さんはどのくらいいるのですか?
日本人の10人に1人が過敏性腸症候群を発症しているというデータもあるほど、現代においてありふれた病気です。
特に、20代~40代の働き盛りの方に多いとされています。
過敏性腸症候群の原因
過敏性腸症候群の原因ははっきりとは分かっていませんが、その多くはストレスであると考えられています。
脳と腸はその働きに密接な関係があり、脳がストレスを感じると腸の機能に異常が生じやすくなります。
また、睡眠不足や運動不足、食生活の乱れなども発症のきっかけになるといわれています。
過敏性腸症候群の症状
過敏性腸症候群では、腹部の不快感や痛みが数週間以上続いたり、下痢や便秘、またはそれらが交互に起こる状態が繰り返されたりします。
いずれの症状も目が覚めているときに起こり、寝ているときにはほとんど起こりません。
また、排便によって症状が一時的に軽快しやすいことも特徴です。
過敏性腸症候群の検査と診断
過敏性腸症候群は、ローマ(Rome)基準と呼ばれる診断基準に基づき、次の①②の両方に当てはまる場合に診断されます。
①過去3か月の間に、月4回以上の頻度で腹痛が見られる
②次の項目の2つ以上に該当する
・腹部の痛みが排便に関連する
・症状が排便回数の変化に連動している
・症状が便の硬さの変化に連動している
しかしながら上記のような症状は、過敏性腸症候群だけに起こる症状ではありません。
指定難病である、潰瘍性大腸炎(UC)やクローン病(CD)などの炎症性疾患や、大腸がんなどでも似たような症状が起こります。
他の疾患の可能性を排除するためにも、血液検査や内視鏡検査も併せて行います。
特に、がんでないかどうかを確認することは重要です。
過敏性腸症候群の治療
過敏性腸症候群と診断された場合、どのような治療を行うのでしょうか。ここでは治療について解説します。
生活習慣の改善
腸への刺激を減らしストレスを緩和する目的で、普段の生活の中では、次のようなことに気をつけるようにします。
・睡眠、休養をしっかりとる
・ストレスをなるべく避ける
・適度な運動を行う
・暴飲暴食、過度なアルコール摂取を避ける
・高脂肪食を避ける
薬による治療
過敏性腸症候群に適応を持つ薬はいくつかあり、患者さんの状態に合わせて処方されます。
また、下痢には下痢止め、便秘には便をやわらかくする薬、その他腹痛を抑える薬やストレスを和らげる薬なども使われます。
こうした薬は対症療法にはなりますが、症状が緩和されることで日常生活が送りやすくなるだけでなく、症状によるストレスが軽減される好循環が生まれます。
薬には合う・合わないがありますので、薬を服用していて気になることがあれば、医師に相談するようにしてください。
過敏性腸症候群かもと思ったら
過敏性腸症候群は発症頻度の高い病気ですが、排便異常やガスが出るなどの症状の特徴から、周りの人や医師に相談できずに1人で抱え込んでしまうケースも少なくありません。
我慢することがさらなるストレスとなり、症状が悪化するという悪循環にも陥りがちです。
こんな症状で受診してもよいのか…などと悩まずに、遠慮なく受診することをおすすめします。
過敏性腸症候群の疑いで来院された方の当院での診療の流れ
1. 問診
いつからどの様な症状が出ているか、診断・治療に必要な情報を集めるために、医師がいくつか質問します。
(LINEの事前問診にお答えいただきますと、よりスムーズな診療を提供できますのでご協力ください)
2. 身体診察
過敏性腸症候群以外の病気が考えられないか、医師が丁寧に診察を行います。
必要に応じて、お腹の聴診や触診なども行います。
3. 検査
過敏性腸症候群以外の病気が疑われた場合、検査を行います。
採血検査や画像検査、便潜血検査などを当院で進める場合もありますが、確定診断を得るためには内視鏡検査を必要とすることが多いです。
当院では内視鏡検査は行っておりませんので、必要であれば内視鏡検査を行っている病院を紹介する場合もあります。
4. 薬の処方(重症の場合は専門医療機関へ紹介)
過敏性腸症候群と診断された方には、生活習慣の改善の指導や、内服薬による治療を開始します。
薬の内服でもなかなか症状がコントロールできないような場合には、専門医療機関へ紹介することもあります。
長く続く下痢や便秘でお悩みの方は過敏性腸症候群かもしれません。
過敏性腸症候群は適切な治療で症状を和らげることが可能です。
下痢や便秘がなかなかよくならないという方は、速やかにクリニックを受診するようにしましょう。
クリニックプラスは平日は20時まで、土日祝日も毎日診療しています。お気軽に相談にいらしてください。