・高血圧とは
血圧は心臓から押し出される血液量(心拍出量)と、血管の収縮の程度やしなやかさ(血管抵抗)によって決まります。年齢が進むにつれて、血管が硬くなり、血管抵抗が上がることで血圧が高くなります。安静状態での血圧が慢性的に正常値よりも高い状態が続くことを高血圧と言います。高血圧は日本では4300万人という最も患者数の多い生活習慣病で、脳卒中や心臓病、腎臓病を予防する上では、血圧を適切な値に管理していくことが非常に重要になります。
・高血圧はいくつから?
高血圧は、上の血圧が140mmHg以上、または下の血圧が90mmHg以上の場合、あるいはこれらの両方を満たす場合を言います。
・どんな人が高血圧になりやすい?
高血圧には、原因を一つに定めることができない本態性高血圧と、原因が明らかな二次性高血圧の2種類があります。日本人の高血圧の約8〜9割は本態性高血圧で、遺伝的要因や食生活(食塩の過剰摂取など)といった環境因子が組み合わさって起こります。二次性高血圧は腎臓や副腎の異常、血管の病気、お薬などが原因で起こります。本態性高血圧は高齢の方に多いですが、二次性高血圧は若い方でもみられるので注意が必要です。
・高血圧でどんな症状が出ますか?
早朝の頭痛や、夜の頻尿、めまいやふらつきを認める方もいますが、症状がない方が多いのが高血圧の怖いところです。症状がでたときには臓器がすでに痛んでいることも十分考えられますので、早めの対策が必要です。
・高血圧はどうやって診断しますか?
日本では、病院やクリニックで測る診察室血圧と、ご自宅で測る家庭血圧があります。日本高血圧学会のガイドラインでは、血圧の値を次の表のように分類しています。

病院やクリニックで血圧を測ると、緊張などのせいで、自宅で測定した値より高くなる傾向にあるので、診察室血圧の方が少し高めの基準で設定されています。大切なのは、1回の血圧の数値から高血圧を診断するのではなく、毎日決められた時間に血圧測定を行い、再現性を持って高い血圧の値が得られるかどうかで、高血圧かどうかを見極めることです。
・血圧はどこまで下げれば良いですか?
2019年に5年ぶりに高血圧治療ガイドラインが改定され、降圧目標がより厳しくなりました。

高血圧治療ガイドライン2019(JSH2019)から引用
ただし、合併している病気によっては、より厳格に下げたほうが良い場合や、慎重に下げたほうが良い場合もありますので、医師とよく相談しながらコントロールしていくことが大切です。
・血圧はどうやって下げるのですか?
血圧は薬で下げれば良いと思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、まずやるべき大事なことは、食事・運動・嗜好品などの生活習慣を見直すことです。具体的には以下のような項目を修正していきます。
◆減塩・・・食塩摂取量6g/日未満
◆食事・・・肉より魚メインの食生活
◆肥満の予防や改善・・・BMI[体重(kg)/{身長(m)}2]25kg/m2未満
◆節酒・・・男性:アルコール20-30ml/日以下、女性:10-20ml/日以下
◆運動・・・毎日30分以上または週180分以上の運動
◆禁煙・・・受動喫煙も可能な限り避ける
上記の生活習慣を是正しても血圧が高い、仕事などでどうしても生活習慣の是正が難しいという方は、薬による治療を考えていきます。血圧を下げる薬にも副作用がありますので、まずは薬なしでコントロールしていくことを目指していきます。
・血圧の薬は飲み始めたら一生やめられないですか?
血圧の薬は、血圧が高い原因を治療しているわけではないので、一般的には薬をやめるとまた血圧が高くなってしまうことが多いです。しかし、必ずしもやめられないというわけではありません。見違えるように生活習慣が改善し、血圧が下がってくれば、血圧の薬を少しずつ減らしていって、最終的には完全にやめることもできます。
・高血圧で来院された方の当院での診療の流れ(診察所要時間目安: 3〜5分)
1. 問診
病院や健康診断で測った血圧は、家庭での血圧より高めに出ることが多いです。ご自宅で血圧を普段測っていない方は、まず血圧計をご購入いただき、毎日の自宅での血圧を測定し、記録してもらうことから始めます。ご自宅で血圧を記録している方は、普段どのくらいの血圧で推移しているか、教えてもらいます。血圧手帳や、記録に使用しているアプリなどをご提示いただけるとスムーズに診療が行われます。
2. 身体診察
血圧を測定します。また、高血圧に伴い心臓に雑音が聞こえたりしないか、医師が丁寧に診察を行います。
3. 検査
基本的には検査を必要としないことが多いですが、薬に全く血圧が反応しない場合や、異常に血圧が高い場合などは、ホルモンの異常なども考えられますので、血液検査を行ったりします。
4 .生活指導および処方
生活習慣病において最も大切なのは、生活習慣の是正です。普段とっている食事や運動、嗜好品などを聴取し、改善できる部分に関して指導を行なっていきます。生活習慣の是正だけではコントロールが不十分な場合、薬を処方します。血圧の推移をみながら、血圧の薬を調整していきますので、飲み忘れがない様にご注意ください。