甲状腺炎の中でも、甲状腺の痛みや発熱が無いものを「無痛性甲状腺炎(むつうせいこうじょうせんえん)」といいます。胸がドキドキしたり体がほてったりする症状があるためバセドウ病と間違われやすいですが、多くの場合、バセドウ病より症状は軽く、自然と治るのが特徴です。無痛性甲状腺炎の特徴や、治療が必要かどうかについて解説します。
無痛性甲状腺炎ってどんな病気?
まず初めに、無痛性甲状腺炎の特徴について解説します。
無痛性甲状腺炎とは
甲状腺はのどぼとけの下にある蝶(ちょう)の形をした臓器で、ここでは甲状腺ホルモンが作られ、心拍の速さや体温など体の代謝を調節しています。
無痛性甲状腺炎(むつうせいこうじょうせんえん)は、一時的な甲状腺の炎症の結果、何らかの原因で甲状腺の組織が壊れ、甲状腺ホルモンが血液の中に漏れ出てくることで、血液中の甲状腺ホルモンの量が多くなり、甲状腺中毒症(こうじょうせんちゅうどくしょう)と呼ばれる症状が起こる病気です。多くの場合、症状は一時的であり自然におさまります。亜急性甲状腺炎と違い、痛みや発熱を伴わないため、無痛性甲状腺炎と呼ばれます。
無痛性甲状腺炎の原因は?
無痛性甲状腺炎は橋本病の方に多いことから、体の免疫システムの異常が原因で起こるのではないかといわれていますが、詳しいことは分かっていません。出産後に発症することも多く、その場合は「出産後甲状腺炎」と呼ばれます。
無痛性甲状腺炎の症状
無痛性甲状腺炎には、甲状腺ホルモンの量が血液中に増える時期と、その後元に戻っていく過程で一時的に正常値より低下してしまう時期があります。それぞれの時期における症状は次のとおりです。
①甲状腺ホルモンの量が血液中に増える時期
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疲労感
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動悸(胸のドキドキ)
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汗が多く出る
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体がほてる
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体重が減る
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女性の場合生理が止まることがある
この時期はその症状からバセドウ病と間違えやすいため注意が必要です。バセドウ病と比べると症状は軽いことが多く、数か月で自然と改善に向かいます。
②回復過程で甲状腺ホルモンの量が正常値より低下する時期
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体の冷え
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むくみ
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体重が増える
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眠気
壊れた甲状腺組織が回復するまでの間、甲状腺ホルモンが作れないために正常値より低下します。通常2~3か月ほどで自然と正常値に戻りますが、中にはそのまま慢性的な甲状腺機能低下症になってしまう方もいます。また、この時期を経ずに、甲状腺ホルモンが高い状態からそのまま正常化する場合もあります。
無痛性甲状腺炎の検査と診断
無痛性甲状腺炎と診断するためにはどのような検査を行うのでしょうか。無痛性甲状腺炎と間違いやすいバセドウ病と、どう見分けるかについても解説します。
検査と診断
無痛性甲状腺炎の診断のために、次のような検査を行います。
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血液検査(甲状腺ホルモンの測定、甲状腺自己抗体の有無の確認)
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甲状腺エコー(甲状腺の大きさ、甲状腺の血流、腫瘍の有無の確認)
バセドウ病と見分けるために
甲状腺ホルモンが血液中に増えて動悸や体重減少などの症状が出る状態はバセドウ病と同じであるため、無痛性甲状腺炎なのかバセドウ病なのかの判別がつきにくい場合があります。この2つの病気は、症状は同じでも治療法が全く違うため、きちんと診断することが重要になります。両者の判別がつきにくい場合には、放射性ヨウ素摂取率(ほうしゃせいようそせっしゅりつ)・シンチグラフィという検査を追加する場合もあります。
無痛性甲状腺炎の治療
自然と回復することの多い無痛性甲状腺炎ですが、治療は必要なのでしょうか。ここでは無痛性甲状腺炎の治療について解説します。
治療は必要?必要な場合の治療法は?
無痛性甲状腺炎と診断された場合、通常は甲状腺ホルモンの量も自然に元に戻り、それに伴って症状もなくなるため、治療はせずに経過観察のみとなります。ただし、動悸などの症状が強く出ている場合には、β遮断薬(ベータしゃだんやく)という薬を使って症状を抑えることもあります。バセドウ病の治療に使う抗甲状腺薬は効かないため使用しません。
甲状腺ホルモンの量が少なくなる時期が長引く場合には、必要に応じて甲状腺ホルモンを補う薬を使う場合があります。
まずはかかりつけ医に相談を
気になる症状がある場合には、まずはかかりつけ医に相談してみましょう。特にもともと橋本病がある方や、出産後数か月以内の方での発症が多いため、一度受診されることをおすすめします。
無痛性甲状腺炎と疑われた方のクリニックプラスでの診療の流れ
①問診
まずいつからどの様な症状がでているかなど、診断・治療に必要な情報を集めるために、医師がいくつか質問します。(LINEの事前問診にお答えいただきますと、よりスムーズな診療を提供できますので、ご協力ください。)
②身体診察
甲状腺の触診の他、胸の聴診など、異常がないか全身を丁寧に診察します。
③検査
医師が必要と判断した場合には、検査を行うこともあります。クリニックプラスで行える検査は以下になります。
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血液検査 →甲状腺ホルモンや炎症反応の値をチェックします。
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心電図検査 →甲状腺ホルモンの異常により、不整脈がおきていないかを判断します。
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超音波検査※ →甲状腺の形態に異常がないかをみます。
※検査できる院とできない院があります。また、検査対応可の院でも、対応できる日が異なりますので、検査をご希望の方は、事前に各院にお問い合わせください。
④処方あるいは専門医療機関へ紹介
無痛性甲状腺炎と診断された場合、必要に応じて飲み薬の治療を行います。ただし、クリニックプラスの検査では十分に判断がつかない様な場合には、専門の医療機関にご紹介させていただくこともあります。クリニックプラスは多くの大学病院や総合病院と連携をとっておりますので、速やかに紹介することが可能です。
クリニックプラスでは平日は夜の8時まで、さらには土日祝日も毎日営業しています。無痛性甲状腺炎を疑うような症状がありましたら、まずはお気軽に御相談にいらしてください。