バセドウ病は、甲状腺ホルモンというホルモンが、体が必要とする量より多くなってしまうことによってさまざまな症状が現れる病気です。その症状からは原因がなかなか分からず、診断されるまでに時間がかかってしまうことも多いです。少しでも早く適切な治療を始められるよう、バセドウ病の特徴や治療について解説していきます。
バセドウ病とは
まず初めに、バセドウ病の特徴や患者さんの数について解説します。
バセドウ病ってどんな病気?
バセドウ病は、甲状腺(こうじょうせん)という臓器が働きすぎる「甲状腺機能亢進症(こうじょうせんきのうこうしんしょう)」と呼ばれる病気の1つです。甲状腺はのどぼとけの下あたりにある臓器で、甲状腺で作られる甲状腺ホルモンは、心拍の速さや体温など、体の代謝を調節する働きをしています。バセドウ病では甲状腺が働きすぎることで甲状腺ホルモンが多く作られてしまい、さまざまな症状が引き起こされます。
患者さんはどのくらいいるの?
人口1000人あたり0.2~3.2人の患者さんがいると言われています。男性より女性に多く、20代~30代の若い方の発症が多い病気です。
バセドウ病の原因
バセドウ病は、体の免疫システムに異常が起こり、普段は体を守ってくれるはずの抗体(こうたい)が、自分の甲状腺を攻撃するようになってしまうことが原因で発症します。自分の甲状腺を攻撃してしまう抗体がなぜ作られるのかは分かっていませんが、遺伝が関係していると言われています。
バセドウ病の症状
甲状腺ホルモンが多く作られてしまうことで、どのような症状が起きるのでしょうか。ここではバセドウ病の症状について解説します。
バセドウ病の症状にはどんなものがあるの?
バセドウ病の症状には、次のようなものがあります。
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のどのあたりの腫れ
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胸がドキドキする
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体がほてる
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汗が多くなる
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イライラする
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手足の震え
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体重が減る
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疲労感
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便の回数が増える、便がゆるくなる
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目がとび出る、目が完全に閉じない
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炭水化物の多い食事をした後や運動後に突然手足が動かなくなる
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女性の場合は生理が止まる
バセドウ病の初期症状は不定愁訴と間違えられやすい
症状の中でも、目がとび出るような、バセドウ病に特有の症状は初期にはほとんど現れません。原因が分からないけれどなんとなく体調が悪い、という状態のことを不定愁訴(ふていしゅうそ)と言いますが、バセドウ病の症状はこの不定愁訴や風邪と間違われることがよくあります。当てはまる症状がいくつかある場合には受診して検査をしてもらいましょう。放っておくと、心臓やその他の臓器に大きな負担がかかり、命に関わることもあるため注意が必要です。
バセドウ病の検査・診断
バセドウ病が疑われる場合には、次のような検査を検討します。
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血液検査(甲状腺刺激ホルモン、甲状腺ホルモン、甲状腺刺激抗体の測定)
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甲状腺エコー(甲状腺の炎症の有無、程度の確認)
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心電図(動悸がある場合には原因を確認)
バセドウ病の治療
次に、バセドウ病と診断された場合の治療について解説します。
まずは飲み薬を使った治療から
多くの場合、最初は薬を使った治療から始めます。チアマゾールやプロピルチオウラシルなど、抗甲状腺薬と言われる薬を飲んで、甲状腺ホルモンが作られる量を減らします。約半数の人が2~3年で薬をやめることができます。
その他の治療法
薬での治療を2年以上続けても薬をやめられる目処が立たなかったり、副作用で薬が続けられなかったりする場合には、次のような別の治療法を検討します。
・放射性ヨウ素内用療法(ほうしゃせいようそないようりょうほう)
アイソトープ治療とも呼ばれるもので、放射性ヨウ素というものが入ったカプセルを飲んで行う放射線治療です。実施できる施設が限られており、当院ではこの治療を行うことはできませんが、必要な場合には治療が受けられる施設を速やかにご紹介します。
・手術による治療
甲状腺を手術で取り除きます。確実な効果を早く得ることができますが、入院が必要になる、手術の痕が残る、合併症が起こる場合があるなどのリスクが生じます。
バセドウ病と妊娠
バセドウ病の患者さんは若い女性に多いため、治療をしながら妊娠・出産ができるのかということを心配される方も多くいらっしゃいます。バセドウ病の患者さんが妊娠した場合も、適切な対応をすることで問題なく出産することができます。
安心して妊娠・出産するために
甲状腺ホルモンの量が多いままの状態だと、流産や早産の原因になると言われています。妊娠を希望される場合には、妊娠前から治療を開始し、バセドウ病の状態をコントロールしておくことが大切です。治療薬の赤ちゃんへの影響は心配ないと言われていますが、妊娠初期はチアマゾールの服用は避けた方がいいというデータもあるため、どの薬を使うかは主治医と相談しましょう。妊娠中だからと言って薬をやめたりせず、しっかり治療を続けていくことが妊娠・出産においても重要です。
バセドウ病と疑われた方のクリニックプラスでの診療の流れ
①問診
まずいつからどの様な症状がでているかなど、診断・治療に必要な情報を集めるために、医師がいくつか質問します。(LINEの事前問診にお答えいただきますと、よりスムーズな診療を提供できますので、ご協力ください。)
②身体診察
甲状腺の触診を行ったあと、その他の部位にも異常が出ていないか全身を丁寧に診察します。
③検査
医師が必要と判断した場合には、検査を行うこともあります。クリニックプラスで行える検査は以下になります。
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血液検査 →甲状腺ホルモンの値をチェックします。
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心電図検査 →甲状腺ホルモンの異常により、不整脈がおきていないかを判断します。
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超音波検査※ →甲状腺の形態に異常がないかをみます。
※検査できる院とできない院があります。また、検査対応可の院でも、対応できる日が異なりますので、検査をご希望の方は、事前に各院にお問い合わせください。
④処方あるいは専門医療機関へ紹介
バセドウ病と診断された場合、クリニックプラスで行える治療は飲み薬の治療になります。ただし、重症の場合や、クリニックプラスの検査では十分に判断がつかない様な場合には、専門の医療機関にご紹介させていただくこともあります。クリニックプラスは多くの大学病院や総合病院と連携をとっておりますので、速やかに紹介することが可能です。
バセドウ病はさまざまな症状が出現し、他の病気との鑑別が難しく、医療機関で検査をしてみないと分かりません。クリニックプラスでは平日は夜の8時まで、さらには土日祝日も毎日営業しています。バセドウ病を疑うような症状がありましたら、まずはお気軽に御相談にいらしてください。