・脂質異常症とは
脂質異常症とは血液中の脂肪分が増えすぎて、血液がドロドロになっている状態です。脂質異常症が続くと、少しずつ血のめぐりが悪くなり、動脈硬化を引き起こし、心筋梗塞や脳梗塞といった恐ろしい病気につながります。血液中の脂肪分には大きく分けて「コレステロール」と「中性脂肪」の2種類があります。さらにコレステロールには善玉コレステロール(HDLコレステロール)と悪玉コレステロール(LDLコレステロール)に分けられます。動脈硬化の原因となるのは後者の悪玉コレステロールです。一方、善玉コレステロールは余計なコレステロールを吸い取ってくれる掃除機のような働きがあるため、多い方が動脈硬化の予防になると言われています。
・どんな人が脂質異常症になりやすい?
多くは食べ過ぎや飲みすぎといった良くない食生活や、運動不足、それらに伴う肥満や精神的ストレスが原因になっていることが多いです。ただ環境的な因子だけではなく、遺伝的な要因が関係していることもあります。
・脂質異常症はどうやって診断しますか?
採血で、血中内のコレステロールや中性脂肪の値を測定します。
診断基準は以下の表のようになっています。
動脈硬化性疾患予防ガイドライン2017年版から引用
脂質異常症は上の4つのタイプに分類されますが、この中でもっとも動脈硬化の進行につながるのが、高LDLコレステロール血症です。また、高トリグリセライド血症は動脈硬化ばかりでなく、糖尿病患者さんに合併する細い血管(目の網膜などの血管)の障害の進行を速める原因になります。
・脂質管理目標値はどれくらいですか?
日本動脈硬化学会「動脈硬化性疾患予防ガイドライン(2017年)」では以下のように目標値が設定されています。


*1: 管理区分が低〜高リスクのどれに該当するかは、年齢や性別、喫煙の有無などの危険因子を考慮して決めます。また、糖尿病、慢性腎臓病、脳梗塞の既往がある方は、高リスクに当てはまります。
*2: 遺伝性の高コレステロール血症や、心筋梗塞・不安定狭心症の急性期、または糖尿病に加えて慢性腎臓病やメタボリックシンドロームなどがある時に考慮する目標値です。
・コレステロールや中性脂肪はどうやって下げるのですか?
まずは、食事・運動・嗜好品などの生活習慣を見直すことから始めていきます。
◆食事・・・肉より魚メインの食生活。青魚や大豆製品、食物繊維の多い野菜や海藻、きのこなどがおすすめ。卵はコレステロールが多いので注意。
◆カロリー制限・・・食べ過ぎやお菓子類など高カロリーなものを制限。
◆節酒・・・アルコールは中性脂肪を高める原因になります。
◆運動・・・運動を継続して行うと、HDLコレステロールが高くなります。
上記の生活習慣を是正しても脂質が高い、仕事などでどうしても生活習慣の是正が難しいという方は、薬による治療を考えていきます。コレステロールを下げる薬にも副作用がありますので、まずは薬なしでコントロールしていくことを目指していきます。
・脂質異常症で来院された方の当院での診療の流れ(診察所要時間目安: 3〜5分)
1. 問診
まず最近の食事摂取状況や体重の変動などについてお話を聞きます。初回の場合は、遺伝性に発症していることもあるので、ご家族にも脂質異常症の方はいないか、質問いたします。
2. 身体診察
脂質異常症に伴い動脈硬化が進行し、心臓や血管に異常をきたしていないか、医師が丁寧に診察を行います。
3. 検査
定期的に血液検査を行い、コレステロールの値の推移を観察します。血液検査を行う場合は、事前にお食事を召し上がらない様にご注意ください。食事を取ることで、コレステロールの値が高く出てしまいます。
4. 生活指導および処方
生活習慣病において最も大切なのは、生活習慣の是正です。普段とっている食事や運動、嗜好品などを聴取し、改善できる部分に関して指導を行なっていきます。生活習慣の是正だけではコントロールが不十分な場合、薬を処方します。コレステロール値の推移をみながら、薬を調整していきますので、飲み忘れがない様にご注意ください。