過活動膀胱/膀胱炎/前立腺肥大症 

❖過活動膀胱

・過活動膀胱とは

過活動膀胱とは文字通り「膀胱が活動しすぎる」病気です。膀胱は腎臓で作られる尿を溜めておく「ダム」のような働きをしている臓器です。個人差がありますが、膀胱には300〜500mlの尿を溜めることができます。通常、膀胱に尿が溜まっていっぱいになると、神経を通じて脳に信号が送られ、尿意を感じるようになります。すると、排尿筋が収縮して尿が排泄される訳ですが、この一連の仕組みの何処かにトラブルが生じ、膀胱内にそれほど尿が溜まっていないのに尿意を感じ、排尿筋が収縮してしまうのが過活動膀胱です。

・過活動膀胱の原因は?

加齢や精神的なストレスの他、溜まった尿の量を感知するセンサーが過敏になっている可能性、脳の中の尿意を感じる部分の異常や自律神経の乱れなど、いろいろなことが原因になっていると考えられています。

・過活動膀胱の症状は?

メインの症状は「トイレが近い(頻尿)」と感じることです。ただ、頻尿をきたす病気は過活動膀胱の他にもたくさんあります。例えば、膀胱炎や前立腺炎などの感染症、前立腺肥大症、膀胱癌・前立腺癌、膀胱結石、腹圧性尿失禁、糖尿病、脳卒中の後遺症、脊髄の病気、薬の副作用などです。これらの病気がないのに頻尿が続く場合、過活動膀胱の可能性があります。
以下の質問表は、過活動膀胱診療ガイドラインに記載されているセルフチェック表です。合計点数が3点以上で過活動膀胱の可能性があります。

・過活動膀胱の治療は?

過活動膀胱には抗コリン薬という薬を使用します。この薬は、排尿筋をコントロールしている自律神経に作用し、膀胱の過剰な収縮を抑えることができます。ただ、副作用として口渇や便秘、尿閉(尿が出なくなってしまう状態)などがあります。症状が比較的軽めの方は、まずはお薬に頼らず、以下のようなセルフコントロールである程度症状を改善させることができます。

◆水分摂取量を減らす
◆トイレの間隔を少しずつ意図的に伸ばしていく
◆骨盤底筋を鍛える‥骨盤底筋とは膀胱や子宮を支えている筋肉で、骨盤底筋トレーニングを行うことで、骨盤底筋を鍛えることができます。

※骨盤底筋トレーニング:尿道・肛門・膣(女性の場合)に力を入れた状態で数秒〜十数秒間維持した後、力を抜いて少し休むというのを繰り返します。力を入れている時、腹筋や腰など他の筋肉には力を入れないように注意します。

過活動膀胱を診断するためには、頻尿の原因となる他の病気を除外することが先決です。トイレが近くてお悩みの方は、まずは当クリニックを受診してください。

❖膀胱炎

・膀胱炎とは

膀胱炎とは尿路感染症の1つで、ばい菌の感染によって「トイレが近くなる(頻尿)」といった症状をもたらす病気です。膀胱や尿の通りに道にもともと病気を有することで起きる複雑性膀胱炎と、そういった基礎疾患を認めない単純性膀胱炎に大きく分けられます。単純性膀胱炎は閉経前の女性に多く、閉経後の女性は、閉経前の女性と比較して再発率が高いのと、治癒率が低いのが特徴です。複雑性膀胱炎の基礎疾患としては、前立腺肥大症や前立腺癌・膀胱癌、神経因性膀胱(神経性の損傷を原因とする膀胱の機能障害)、尿道狭窄、膀胱結石などがあります。

・膀胱炎の原因は?

原因菌の70〜90%と最も多いのが、普段から直腸に存在している大腸菌です。他にもブドウ球菌など様々な菌が原因となり、菌によっては薬に耐性を持つものもいるので、膀胱炎が疑われたらまず尿の培養検査を行い、どういった菌が原因になっているのかと薬に対する感受性を評価することが重要です。

・膀胱炎の症状は?

膀胱炎の症状としては以下のようなものが挙げられます。

◆トイレが近くなる(頻尿)
◆排尿時の痛み
◆尿が出し切れていない感じ(残尿感)
◆膀胱の不快感

一般的に発熱は伴わないことが多いです。

・膀胱炎の治療は?

原因菌に合った抗菌薬の内服が治療法になります。単純性膀胱炎の場合は、3日間も内服すれば良くなることが多いですが、再発を繰り返すような場合は5〜7日間の内服が必要になります。難治性の場合は点滴の抗菌薬を使用することもあります。複雑性膀胱炎の場合は、7〜14日間の抗菌薬内服に加え、尿路や全身の基礎疾患の正確な把握と適切な尿路管理が必要となります。
また、最近では消炎鎮痛薬(NSAIDs)の治療効果の報告や(Andreas K,et al. BMJ.2017;359:j4784./Ingvild Vi,et.al.PLOS Medicine.2018;May15.)、水を沢山飲んで尿と一緒にばい菌を洗い流してあげることで治療効果や再発予防が得られるといった報告もあります(Thomas H,et al. JAMA Intern Med. 2018;178(11):1509-15.)。「耐性化」といってばい菌が薬に耐性を持ってしまい、薬が効かなくなるといった問題も深刻化してきていますので、安易な抗菌薬の内服には注意しなくてはなりません。膀胱炎を疑うような症状が出た際には、まず当クリニックを受診していただき、医師の診察を受け、適切な治療を受けるようにしましょう。

❖前立腺肥大

・前立腺肥大症とは

前立腺肥大症とは、前立腺という膀胱のすぐ下にあり尿の通り道を取り囲んでいる男性特有の生殖器が肥大することで、尿の通り道を塞いだり、膀胱を圧迫する病気です。中高齢の男性に多くみられ、60歳代で約6%、70歳代で約12%の人が前立腺肥大症であると言われています。またこの病気は、命の危険は少ないものの、進行性の病気であり、基本的には発症したらずっと治療になります。

・前立腺肥大症の原因は?

前立腺が肥大する原因ははっきりとはわかっていません。ただ、加齢とともに男性ホルモンの分泌が減り、ホルモンバランスが崩れてしまうことが主な原因と考えられています。他にも肥満や高血圧、高血糖、脂質異常症などの生活習慣病との関連を指摘する意見もあります。

・前立腺肥大症の症状は?

前立腺が肥大することで、尿の通り道が塞がれてしまいます。その結果、尿が出にくくなってしまったり、尿を出し切っていない感覚(残尿感)に陥ったりします。また、膀胱に尿を溜めておくことに障害が生じ、トイレが近くなったりします(頻尿)。また、これらの症状は徐々に進行していきます。最初は、「トイレが近くなった」、「尿の出が悪い」という症状から始まりますが、次第に「お腹に力を入れないと尿が出ない」「尿のキレが悪くダラダラと出てしまう」といった症状に進み、最後には「トイレに行く回数がものすごく多い」「1回の排尿にかかる時間が長い」「尿が全く出ない」といった状態にまでなってしまいます。その他合併症として、血尿や膀胱結石、繰り返す尿路感染症、腎不全などがあり、症状が出てきたら早めに治療を開始することが重要です。

・前立腺肥大症の検査や診断方法は?

まず国際前立腺症状スコア(IPSS)とQOLスコアという質問表を用いて排尿障害の程度を確認する。

「国際前立腺症状スコア(IPSS)とQOLスコア」 前立腺肥大症診療ガイドラインから引用

その後、当クリニックでは以下のような検査を行い、総合的に判断して行きます。

◆尿検査‥尿路感染症や膀胱結石、糖尿病など他の病気が隠れてないかをみます。
◆血液検査(PSA測定)‥PSAとは前立腺癌の診断に有用な検査項目で、前立腺癌が隠れていないかを判断するために行います。その他にも腎機能障害が起きていないかなどをチェックします。
◆前立腺超音波検査‥お腹から超音波をあてて、前立腺の大きさや形態を評価します。

・前立腺肥大症の治療は?

症状が軽い場合は、薬で治療を行います。薬の種類としては、前立腺や尿の通り道の筋肉を緩める作用があり、尿の通りをよくするアルファ1遮断薬や、前立腺の体積を減少させる5アルファ還元酵素阻害薬などがあります。
症状が進行して薬では十分な効果が得られない場合には、手術を検討します。当クリニックでは薬の治療までしか行なっていませんが、手術を検討する必要がある場合には、手術を行うことができる病院を速やかに紹介いたします。

・過活動膀胱/膀胱炎/前立腺肥大症が疑われた方の当院での診療の流れ(診察所要時間目安: 7〜10分)

1. 問診

1日の尿の回数は何回くらいか、残尿感はあるかなど、診断・治療に必要な情報を集めるために、医師がいくつか質問します。(LINEの事前問診にお答えいただきますと、よりスムーズな診療を提供できますので、ご協力ください。)

2. 検査

必要あれば以下のような検査を行います。

◆尿検査 →尿路感染症や膀胱結石、糖尿病など他の病気が隠れてないかをみます。
◆血液検査(PSA測定) →PSAとは前立腺癌の診断に有用な検査項目で、前立腺癌が隠れていないかを判断するために行います。その他にも腎機能障害が起きていないかなどをチェックします。
◆超音波検査 →前立腺肥大症が疑われる場合には、お腹から超音波をあてて、前立腺の大きさや形態を評価することもあります。

3. 処方あるいは専門医療機関へ紹介

当院で行える治療は飲み薬の治療になります。それぞれの病気にあったお薬を処方いたします。薬以外の治療が必要と判断した場合や、診断が困難な場合などは、速やかに専門の医療機関をご紹介させていただくこともありますのであらかじめご了承ください。

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