ステロイド薬はさまざまな病気の治療に使われるお薬ですが、ステロイドでの治療によって糖尿病が引き起こされてしまうことがあり、そのような糖尿病のことをステロイド糖尿病といいます。ステロイド糖尿病は初期には症状がなく、空腹時の血糖値は正常であることが多いために気づきにくく、注意が必要です。ステロイド糖尿病による合併症を予防し、ステロイド治療を安心して受けられるよう、ここではその特徴や治療について解説します。
ステロイド糖尿病ってどんな病気?
まず初めにステロイド糖尿病の特徴について解説します。
ステロイド糖尿病とは
ステロイド薬を使ったときに発症する糖尿病をステロイド糖尿病といいます。ステロイドはぜん息や関節リウマチ、腎臓病、肺炎、アレルギーなどさまざまな病気の治療に使われています。飲み薬だけでなく吸入や注射、点滴や外用薬として投与されることもあり、ステロイド治療を受けていることを患者さん自身が気づいていないこともあるため注意が必要です。
ステロイド投与による糖尿病はなぜ起こる?
ステロイドによって肝臓からの糖の放出が進んでしまうことや、血糖を下げるホルモンであるインスリンの分泌が抑えられてしまうことによって高血糖となり、糖尿病が発症します。また、ステロイドを投与することで食欲が増すことも、血糖値が上がるリスクを高めます。
ステロイド糖尿病になりやすいのはどんな人?
次のような人がステロイド糖尿病を発症しやすいといわれています。
・ステロイドの投与量が多い人
・ステロイドの投与期間が長い人
・高齢者
・糖尿病の家族歴がある人
・肥満など、2型糖尿病の発症リスクのある人
こうした方の場合、より注意深く経過観察を行う必要があります。
また、すでに糖尿病のある方がステロイド治療を始めると糖尿病が悪化するため、多くの場合、治療の強化が必要となります。
ステロイド糖尿病が発症しやすい時期は?
発症には、ステロイドがどのくらいの期間投与されていたかが大きく関係してきます。ステロイドを90日投与された方の66%が、300日投与された方の94.2%がステロイド糖尿病を発症したという報告があります。
ステロイド糖尿病の症状は?
2型糖尿病と同じように、ステロイド糖尿病も初期には症状がありません。ステロイド治療を始めたら定期的に検査を行い、早期に発見できるようにすることが大切です。
ステロイド糖尿病の検査
ステロイドによる治療を始めると同時に、次のような検査を定期的に行うようにします。
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空腹時血糖:朝食を抜いた空腹時に測定した血糖値
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随時血糖(ずいじけっとう):食事時間とは無関係に測定した血糖値
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HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー):過去1~2ヶ月の血糖の平均が分かる数値
ステロイド糖尿病は、空腹のときは血糖が低く、食後に血糖が上がりやすいのが特徴です。そのため、空腹時血糖が正常だからといって安心はできません。食後の血糖値やHbA1cの値など、総合的に見て診断する必要があります。
ステロイド糖尿病の治療
ステロイド糖尿病と診断された場合、どのように治療を行っていくのでしょうか。ここではステロイド糖尿病の治療について解説します。
ステロイド糖尿病は治る?
早期であれば、ステロイド薬をやめることによって治ることもあります。しかし、ステロイドが治療に不可欠な病気も多いため、やめることができない場合も多くあります。そのような場合でも、血糖のコントロールがしっかりとできている場合には合併症も起こしにくく、それほど心配はありません。しかし、血糖が高いまま放置されると合併症を起こしてしまう可能性があるため、早期に発見して適切に血糖を管理していくことが重要となります。
ステロイド糖尿病と診断された場合の治療法は?
ステロイド糖尿病には飲み薬の適応がないため、基本的にはインスリン注射を使って治療を行います。もともと2型糖尿病のある患者さんの場合は、飲み薬の適応があるため飲み薬による治療から開始します。飲み薬を使っても血糖のコントロールができない場合にはインスリン注射による治療に切り替えます。ステロイド糖尿病は、空腹時の血糖値は正常で、食後に高くなるのが特徴です。そのため、速攻型のインスリンを食事の前に注射します。
予防はできる?
もともと糖尿病が無い方の場合は、体の中でインスリンを作る力がしっかりとあるため、薬を使って予防するのではなく、まずは食べ過ぎに注意するなどの食事コントロールと適度な運動を心がけることが重要です。適切な食事と運動によって、インスリンが効きやすい体づくりができ、糖尿病の予防につながります。運動は、もともとの病気によってはできない場合もあるため、医師の指導を受けるようにしましょう。
クリニックプラスでのステロイド糖尿病の診療の流れ
①問診
ステロイドの薬を、いつから、どのくらいの量で使用されているかを伺います。既に他院でステロイド糖尿病の治療を開始されている方については、元々治療を受けていた病院から、発症の経緯や、治療の経過について記載された紹介状をもらい、ご持参いただけると診療がスムーズです。
②検査
血液検査を行います。ステロイド糖尿病は食後に血糖が上がりやすいので、空腹時だけでなく、食後の血糖も測定します。
③ステロイド薬の調整及びインスリンの処方(経口糖尿病薬やインスリン注射製剤)
ステロイドを中止できるようであれば、速やかに漸減中止します。ステロイドを中止できないような状態であれば、飲み薬やインスリン注射製剤による治療を行っていきます。インスリン療法を施行中の方は、血糖測定記録表や低血糖症状の有無などを確認しながら、インスリン量の調整を行います。
④専門病院への紹介
当院外来診療のみでは血糖のコントロールが不十分な場合や、インスリン注射の導入が必要な場合には、速やかに提携している専門病院へご紹介させていただきます。また、糖尿病三大合併症が出現した際にも、必要に応じて、更なる専門的な検査を行ってもらうために、しかるべき医療機関をご紹介させていただきます。
ステロイド糖尿病は、インスリン注射や、原因となっているステロイドの管理・調整がとても重要です。クリニックプラスは、日々お忙しい方でも通院しやすいように、事前LINE問診や、事前クレカ決済システムなど、テクノロジーを活用することで待ち時間を少しでも短くする取り組みを行っています。また、平日は夜の8時まで、さらには土日祝日も毎日営業することで、通院しやすい体制を整えています。ステロイド糖尿病でお困りの方は、是非一度ご相談にいらしてください。