「のどの風邪」という言葉を耳にすることは多いと思いますが、医学的にはのどの風邪のことを「咽頭炎」といいます。
のどの痛みの原因として最も多いのが、この咽頭炎です。
咽頭炎の原因にはウイルス性と細菌性があり、原因がどちらかによって治療法が違ってきますが、ウイルス性か細菌性かを自分で判断することはできません。咽頭炎の重症化や合併症を防ぐためにも、咽頭炎の特徴について知ることは大切です。
ここでは、咽頭炎の原因や症状、対処法について詳しく解説します。
咽頭炎とは
咽頭炎とはどのような病気なのでしょうか。まず初めに、咽頭炎の特徴について解説します。
咽頭は、鼻の奥からのどの奥までのことをいいます。この部分に炎症が起きた状態が咽頭炎で、のどの痛みなどの症状が現れます。
特に鼻の奥の部分の上咽頭(じょういんとう)は、息を吸うときの空気の通り道になるため、空気中のホコリやウイルス・細菌が付着しやすい部分となります。
咽頭炎の原因は?
多くの場合はウイルス性で、アデノウイルスやインフルエンザウイルスなどへの感染が原因で発症します。
細菌性の咽頭炎で代表的なのは、A群溶血性レンサ球菌咽頭炎(えーぐんようけつせい れんさきゅうきん いんとうえん)です。溶連菌感染症は子どもの病気と思われがちですが、大人でも発症する病気です。
最初はウイルス感染だけであっても、後から二次感染として細菌感染を起こす場合もあります。
気温の変化が激しい時期や空気が乾燥する冬、睡眠不足や疲れなどで抵抗力が落ちているときなどは、こうしたウイルスや細菌に感染しやすいため注意が必要です。
また近年では、黄砂やPM2.5なども、咽頭炎の発症や悪化要因の1つであると考えられています。
人から人にうつりますか?
ウイルス性であっても細菌性であっても、咳やくしゃみ、接触などによって人から人へうつります。
手洗い・うがい・マスクの着用、タオルや食器を共有しない、などの感染対策が必要です。
咽頭炎の症状
咽頭炎の初期症状は、のどのイガイガ感や乾燥感です。その後、強いのどの痛みに進展していきます。
咽頭炎の主な症状は次のとおりです。
・のどが痛くて食事が飲み込めない
・発熱
・体がだるい
・咳やたんが出る
・首のリンパの腫れ
・耳が痛い(のどの痛みが耳に伝わる)
・乳幼児の場合、大量のよだれ(つばを飲み込むことができないため)
ウイルス感染が原因の場合は、のど以外にも咳や鼻水といった複数の臓器の症状が出ることが多いです。
「咳のときにだけ増強するのどの痛み」「起床時に強く痛むのどの痛み」「食事中に軽快するのどの痛み」などは、ウイルス性を疑う所見です。
一方、細菌感染が原因の場合は、原則として1つの臓器に感染していると考えられるので、症状ものどのみに限局して現れることが多いです。ウイルス性に比べてのどの痛みもかなり強くなることが多く、「水も飲めないくらいののどの痛み」などは、細菌性を疑う所見になります。
咽頭炎の検査と診断
まずはのどの状態を観察し、赤みの程度や、扁桃に白いブツブツが付着していないかなどを確認します。
流行の状況などから、インフルエンザやアデノウイルス、溶連菌などへの感染が疑われる場合は、迅速キットで感染の有無を調べます。
咽頭炎の治療
咽頭炎の治療は、ウイルス性か細菌性かで少し異なります。
それぞれの治療方法や、治療に要する期間について解説します。
ウイルス性の場合
ウイルス性の場合は、治療は原則、症状を和らげる対症療法となります。
患者さんの症状に合わせ、のどの痛みを抑える薬やトローチ剤、解熱剤を使います。
水分補給をしっかり行い、食事はゼリー状のものなど、のどごしの良いものを中心に、食べられるものを摂るようにしてください。
部屋は加湿器などで加湿し、空気を乾燥させないようにしましょう。喫煙や飲酒は控えるようにしてください。
細菌性の場合
細菌性の場合も、ウイルス性と同様に対症療法のみで自然治癒するケースも多くあります。
ただし、症状が強い場合には、細菌に応じた適切な抗菌薬を選択して投与することで、治療期間の短縮や合併症の予防、周囲への感染リスクの低下などの効果が得られます。
どのくらいで治りますか?
ほとんどの場合、発症後3日ほどが症状のピークで、約1週間で治ります。
症状が2週間以上続くような場合は、他の病気の可能性や合併症を引き起こしている可能性があります。
咽頭炎を放っておくとどうなりますか?
咽頭炎は多くの場合、対症療法により自然に治りますが、炎症が咽頭以外に広がると副鼻腔炎(ふくびくうえん)や、長引く咳の原因となる気管支喘息を引き起こしてしまうこともあります。
また、細菌性の場合には、まれではありますが、リウマチ熱、扁桃周囲膿瘍(へんとうしゅういのうよう)のような合併症につながることがあります。
ウイルス性か細菌性かの判別のためにも、受診をして検査を受けることをおすすめします。
こんなときは再度受診を
のどの痛みが強いと水分を飲み込むことも難しく、全身状態が悪くなったり、炎症が広がって別の病気を引き起こしたりしてしまうこともあります。
次のような場合は、再度の受診をおすすめします。
・のどの痛みで水分を摂ることも難しい場合
・発症後3日を過ぎても、症状が悪化していく場合
・口を開けるのもつらくなってきた場合
・のどの痛みがおさまり、解熱しても咳が長引く場合
その他、気になる症状がある場合には、主治医に相談するようにしてください。
肺炎の疑いで来院された方の、当院での診療の流れ
①問診
いつからどのような症状が出ているか、診断・治療に必要な情報を集めるために、医師がいくつか質問します。
(LINEの事前問診にお答えいただくと、よりスムーズな診療を提供できますのでご協力ください)
症状としては、発熱・呼吸困難感(呼吸苦)・咳嗽などが肺炎を疑う兆候です。
②身体診察
喉の所見やリンパが腫れていないかなど、医師が丁寧に診察を行います。
③検査
肺炎を疑った場合は、まずはレントゲンを撮影します。
肺炎が疑われた場合は喀痰検査を行い、原因菌の特定を行う場合もあります。
④処方(重症の場合は専門医療機関へ紹介)
肺炎の原因がコロナなどのウイルスであれば抗ウイルス薬、細菌であれば抗菌薬が有効です。
その他、間質性肺炎と呼ばれるステロイド治療が有効な肺炎もあります。
治療が難しいと判断した場合は、速やかに専門の医療機関に紹介します。