脂質異常症と高血圧はどちらも代表的な生活習慣病です。どちらも発症していると動脈硬化(どうみゃくこうか)が進行しやすくなり、脳卒中(のうそっちゅう)や心筋梗塞(しんきんこうそく)などの合併症を引き起こすリスクが高くなります。
本記事では脂質異常症と高血圧の関係性をはじめとして、動脈硬化の詳細と引き起こされる合併症、動脈硬化の予防方法などを解説します。
脂質異常症(高脂血症)と高血圧の関係性
脂質異常症と高血圧の関係性は下記の通りです。
- どちらも生活習慣病である
- どちらも生活習慣の乱れが主な原因である
- どちらも動脈硬化の原因になる
それぞれの詳細を解説します。
どちらも生活習慣病である
脂質異常症と高血圧は、どちらも多くの人が発症する生活習慣病です。それぞれの病態は下記の通りです。
病名 | 詳細 |
脂質異常症 | 血液の中の脂質が異常値になっている状態。LDL(悪玉)コレステロールとトリグリセライド(中性脂肪)が高く、HDL(善玉)コレステロールが低い状態となっている場合が多い |
高血圧 | 基準値より血圧が高い状態。初期症状はほとんど見られず、知らぬ間に病状が進行してしまう特徴がある |
どちらも多くの場合は生活習慣の乱れが原因で、放置するとさまざまな合併症の原因となります。
どちらも生活習慣の乱れが主な原因である
脂質異常症と高血圧はどちらも生活習慣の乱れが主な原因です。具体的には下記の通りです。
病名 | 原因 |
脂質異常症 | 過食加工食品のとりすぎ甘いものや油物のとりすぎお酒の飲み過ぎ運動不足喫煙肥満 |
高血圧症 | 食塩のとりすぎお酒の飲み過ぎ食生活の乱れ運動不足喫煙肥満ストレス |
上記のように脂質異常症と高血圧の原因は、共通している部分が多いです。また遺伝が原因で脂質異常症や高血圧になりやすい人もいます。
どちらも動脈硬化の原因になる
脂質異常症と高血圧はどちらも動脈硬化を引き起こす原因になります。動脈硬化とは、血管の弾力性が徐々に失われていく状態です。放置していると脳や心臓、腎臓などあらゆる臓器の合併症のリスクを高めてしまいます。
動脈硬化は、心筋梗塞や脳卒中などの日本人の主要な死亡原因である病気を引き起こす原因の一つです。頭痛やめまい、動悸(どうき:胸がドキドキする症状)などの動脈硬化の症状が現れないうちから、脂質異常症と高血圧の治療を進めなければなりません。
脂質異常症と高血圧により発症する動脈硬化
ここでは、脂質異常症と高血圧が原因で発症する動脈硬化のメカニズムや引き起こされる合併症について解説します。
動脈硬化を引き起こすメカニズム
脂質異常症と高血圧が動脈硬化を引き起こす流れは下記の通りです。
- 脂質異常症により血液中のコレステロールが過剰になっている
- コレステロールが血管の内側に沈着しやすくなる
- 高血圧により血管の内側に圧力が加わり傷つきやすくなる
- 血管の傷にコレステロールがさらに沈着しやすくなる
- 血管の傷とコレステロールの沈着により動脈硬化が進行する
上記のように血管への傷やコレステロールの沈着により悪循環を繰り返し、動脈硬化を進行させてしまいます。
また、コレステロールが血管の内側に沈着して生成されるプラーク(脂質の塊)が、破綻して血液に流れ込んでしまうと、血管を詰まらせてしまい重大な合併症を引き起こす可能性もあります。
動脈硬化により引き起こされる合併症
脂質異常症と高血圧を両方発症していると、合併症の発症・進行リスクが高まります。引き起こされる可能性のある主な合併症は下記の通りです。
合併症 | 詳細 |
脳卒中 | 脳の血管が破れるまたは詰まることで脳に重大な障害が起きる病気 |
急性心筋梗塞 | プラークなどにより突然心臓の血管が詰まってしまい危険な状態になる病気 |
大動脈解離(だいどうみゃくかいり) | 人体にとって重要である大きな血管が裂けてしまう病気。血液の流れが滞り危険な状態になる可能性がある |
閉塞性動脈硬化症(へいそくせいどうみゃくこうかしょう) | 脳や心臓、手足などの血管が詰まったり細くなったりする病気。脳梗塞や心筋梗塞の原因になる |
慢性腎臓病(まんせいじんぞうびょう) | 腎臓の機能が低下して、体の老廃物の除去や水分の調整などができなくなる病気 |
脂質異常症と高血圧の予防方法
脂質異常症と高血圧の進行の予防に必要なことは、下記のような生活習慣の改善です。
- 食塩は一日6g未満にする
- 過食をしない
- 適正体重を維持する
- 有酸素運動を毎日30分以上実施する
- 肉類や油物、乳製品、卵類などを避ける
- 魚類や大豆製品、野菜、海藻などをバランスよくとる
- アルコールは男性20〜30ml/日以下、女性10〜20ml/日以下にする
- 喫煙をして受動喫煙も避ける
生活習慣の改善でも脂質異常症や高血圧を改善できない場合は、薬による治療を始めます。生活習慣の改善においても定期的な医師の診察や指導が大切です。かかりつけ医に相談しながら治療を進めてください。