脂質異常症とは、血液中の脂質の量が基準値から外れた状態になる疾患です。脂質異常症治療薬の種類は大きく分けて3つあります。ここでは、脂質異常症の薬の種類や違い、副作用などについて解説します。
脂質異常症とは?
脂質異常症とは、血中脂質の量が基準値の範囲から外れてしまった状態になる疾患です。脂質異常症は、多くの場合は生活習慣の乱れが原因で発症しますが、遺伝によって発症する場合もあります。放置すると動脈硬化が進行し、脳梗塞や脳出血、心筋梗塞、狭心症などの命にかかわる疾患につながる可能性があるので、健康診断などで脂質異常症を指摘されたら、なるべく早めに医療機関を受診するようにしましょう。
脂質異常症の治療法
生活習慣の改善を試みても、血液中の脂質の量が基準値の範囲内とならない場合には、薬物療法を開始します。
脂質異常症の薬一覧
脂質異常症の治療に使う薬は以下の表に示すとおりです。
【脂質異常症治療薬の一覧】
なお単剤で十分な効果が得られない時には、増量よりも作用の仕方の違う他薬を併用した方が良いとされています。
また脂質異常症治療薬の第一選択薬ではありませんが、注射薬製剤(レパーサなど)もあります。注射薬が適応なのは、スタチン系製剤を最大用量使用しても効果不十分、もしくは服用できない場合、かつ心血管イベントリスクが高い家族性高コレステロール血症または高コレステロール血症の方です。
脂質異常症でも、異なる薬効を持つ成分を一つの錠剤にした、配合剤が販売されています。服薬の継続に役立つので、必要に応じて使うこともあります。
1.コレステロール値を低下させる薬
コレステロール値を低下させる薬は作用するポイントによって、さらに3つのタイプに分けられます。
スタチン系製剤は肝臓でコレステロールをつくる「HMG-CoA還元酵素」を阻害するので、HMG-CoA還元酵素阻害剤とも呼ばれています。脂質異常症に対して、一番初めに出されることも多い薬です。
レジン製剤(陰イオン交換樹脂)はコレステロール排泄を促進する薬です。スタチン系製剤とは異なる働き方をするので、併用されるケースもあります。
小腸で食事に含まれるコレステロールの吸収を阻害する「小腸コレステロールトランスポーター阻害剤」はスタチン系製剤と一緒に飲むとより良い効果を期待できます。
2.中性脂肪値を低下させる薬
中性脂肪値を低下させる薬も3タイプあります。フィブラート系製剤は、中性脂肪の生合成を阻害する薬です。ワーファリンや糖尿病薬、スタチン系製剤と一緒に飲む時は注意してください。
EPA製剤は中性脂肪の生合成を抑制する薬です。胃内容物があった方がよく吸収されるので、「食直後」に服用します。EPA製剤では国内大規模臨床(予防)試験で、冠動脈疾患に対する予防効果が証明されました。オメガ-3脂肪酸は肝臓からの中性脂肪の分泌を抑制、さらに血中からの消失を促進する薬です。出血を伴う疾患の人は服用できません。こちらは海外の大規模臨床試験で冠動脈疾患予防効果が示されています。
3.コレステロール値と中性脂肪値を低下させる薬
この種類の薬は、肝臓でのHDLコレステロールを増やし、中性脂肪やリポタンパク質の生合成を抑えてLDLコレステロール値を低下させる働きを持っています。
脂質異常症治療薬の副作用
脂質異常症の治療薬の副作用の一つに横紋筋融解症があります。
横紋筋融解症とは、骨格筋の細胞が融けて、壊死することにより、筋肉の痛みや力が抜けるなどの症状があらわれる病気です。血液中に流れ出た、大量の筋肉成分ミオグロビンにより、腎臓がダメージを受け急性腎不全を引き起こしたり、まれに呼吸筋が障害されたりして呼吸困難になる場合もあります。
しかし、スタチン使用者で副作用の横紋筋融解症が発症するのはまれであり、処方せん100万件あたり1件よりはるかに低いと報告されています。
Cerivastatin and Reports of Fatal Rhabdomyolysis
ただし、横紋筋融解症が副作用として発症する可能性はゼロとは言えないため、服用後太ももなどの筋肉の痛みや、飲む前より筋肉の疲労感を感じやすいなどの症状を認める場合には、速やかに処方された医療機関を受診するようにしましょう。
脂質異常症の薬で不安や困ったことがあれば医師に相談を!
脂質異常症は放置すると、動脈硬化が進行し、脳梗塞や心筋梗塞といった重篤な疾患を引き起こす可能性のある疾患です。健康診断などで脂質異常症を指摘されたら必ず医療機関を受診し、必要であれば薬による治療を開始しましょう。薬を服用しながら血中脂質の値に注意し、下がってくれば薬を途中でやめることも可能です。脂質異常症の薬で不安や疑問、困ったことがある時は、クリニックプラスまでお気軽にご相談ください。